第四話 崩れる証言
王宮の小さな応接室。
重い沈黙が流れていた。
中央の椅子に座らされているのは、ミレーヌ・フォン・カストラ。
男爵令嬢だった。
両手を膝の上に置き、指先が震えている。
その前に立っているのは――
第二王女アリアナ。
その隣には宰相ヴァルディーク公爵。
そして、アルヴェルン伯爵とレオン。
部屋の空気は重く、冷たかった。
アリアナが静かに口を開く。
「カストラ嬢」
穏やかな声だった。
だが、その瞳は冷たい。
「もう一度聞きます」
「あなたは、なぜリディアを王宮の外へ連れ出したのですか」
ミレーヌの肩がびくりと揺れた。
「わ、私は……」
視線が揺れる。
「ただ、話を……」
その言葉を、アリアナが静かに遮った。
「嘘は結構です」
声は穏やかなままだった。
だが、空気が一瞬で凍る。
ミレーヌの顔が青くなる。
宰相が静かに言う。
「王宮の外門付近で、拘束魔法が使われた」
「さらに、馬車の男はすでに捕らえている」
ミレーヌの呼吸が乱れた。
「そ、その……」
レオンが一歩前に出る。
青い瞳が鋭く光る。
「姉上を売ったのか」
低い声だった。
ミレーヌの目に涙が浮かぶ。
「ち、違います……!」
叫ぶように言った。
「私はただ……」
言葉が続かない。
アリアナが静かに言う。
「誰に言われたのですか」
沈黙。
ミレーヌの唇が震える。
「……」
宰相が淡々と言う。
「カストラ男爵家」
「誘拐共犯となれば、家ごと処罰される」
その言葉は、静かだった。
だが、十分だった。
ミレーヌの顔が真っ白になる。
「ち、違うんです……!」
涙がこぼれた。
「わ、私は……!」
ついに叫ぶ。
「ダグラス令嬢に言われたんです!」
部屋の空気が止まる。
「イザベラ様が……」
震える声で続ける。
「リディア様を呼び出してくれたら……」
「ルーカス様に紹介してくださるって……」
ミレーヌは泣き崩れた。
「わ、私は……」
「そんなことになるなんて思ってなくて……」
アリアナの瞳が冷たく細められる。
宰相がゆっくりと息を吐いた。
「……ダグラス侯爵家か」
その一言で。
部屋の空気が、さらに重く沈んだ。




