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婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第六章 社交界の嵐

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第三話 侯爵の思惑

王都の中心から少し離れた場所。


ダグラス侯爵家の別邸では、重い沈黙が流れていた。


豪奢な書斎。


厚いカーテンが閉じられ、昼の光がほとんど入らない。


机の前に立つ男が、ゆっくりとグラスを傾けていた。


ダグラス侯爵である。


その目は、冷たく細められていた。


「……失敗か」


低い声だった。


机の上には報告書が置かれている。


誘拐。


王宮。


救出。


その文字を、侯爵は静かに見下ろしていた。


「愚かなことだ」


小さく呟く。


「もう少し慎重に動けばよかったものを」


だが、怒っている様子はなかった。


むしろ――


冷静だった。


侯爵は窓の外へ視線を向ける。


「アルヴェルン伯爵家」


その名を、ゆっくりと口にした。


「希少な魔法の家系」


植物魔法。


それは自然を操る魔法。


作物。


薬草。


食材。


王国の繁栄に深く関わる力だった。


侯爵は小さく笑う。


「同属性のグランベルク家の小倅は」


「一族繁栄を棒に振った」


アルフレッドのことだった。


「カストラの小娘など選びおって」


弱い水魔法。


伯爵家同士の婚姻としては、あまりに価値が低い。


侯爵の目が細くなる。


「だが――」


ゆっくりと呟く。


「我が一族は違う」


ダグラス侯爵家の魔法は土。


土地。


資源。


建築。


王国の基盤を支える力だった。


「土と植物」


侯爵は指で机を軽く叩く。


「これほど相性の良い魔法はない」


もし手に入れば。


一族の繁栄は確実だった。


侯爵の口元が歪む。


「しかも」


小さく笑う。


「あの娘は妙な知識を持っている」


王女の食事。


体調管理。


薬草の扱い。


普通の令嬢が知るはずのない知識だった。


「面白い娘だ」


そして、静かに呟く。


「息子のものになれば」


「全て我が一族のものだ」


その時だった。


扉がノックされる。


「入れ」


執事が静かに入ってきた。


「旦那様」


「ルーカス様がお見えです」


侯爵は椅子に座る。


「通せ」


しばらくして、ルーカスが部屋に入ってきた。


相変わらず、軽い笑みを浮かべている。


「父上」


侯爵はゆっくりと息子を見る。


「失敗したな」


ルーカスは肩をすくめた。


「そうですね」


だが、その表情に焦りはない。


むしろ楽しそうだった。


侯爵は低く言う。


「王宮が動く」


「しばらく大人しくしておけ」


ルーカスは笑う。


「それは残念だ」


そして、小さく呟く。


「せっかく面白くなりそうだったのに」


侯爵の目が細くなる。


「まだ終わっていない」


静かな声だった。


「機会はいくらでもある」


ルーカスはゆっくりと笑った。


「そうですね」


その瞳には、まだ狩人のような光が宿っていた。

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