表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第六章 社交界の嵐

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/107

第一話 伯爵の来訪

王宮の廊下は、いつになく慌ただしかった。


侍女たちが小声で行き交い、騎士たちが静かに配置についている。


その中心にあるのは、王女アリアナの居室だった。


扉の外にはカイルが立っている。


腕を組み、静かに廊下を見つめていた。


その時、足音が近づいてくる。


振り向くと、騎士に案内されて二人の男が歩いてきた。


一人は、落ち着いた雰囲気の紳士。


金髪に青い瞳。


アルヴェルン伯爵。


そして、その隣には若い少年がいた。


金髪に青い瞳。


まだ少年の面影を残しているが、その目は真っ直ぐだった。


レオン・フォン・アルヴェルン。


伯爵家の嫡男であり、騎士見習いである。


レオンはカイルを見るなり、足を止めた。


「姉上は」


真っ直ぐな声だった。


カイルは短く答える。


「中に」


レオンの拳がわずかに握られる。


伯爵はその肩に手を置いた。


「落ち着きなさい」


静かな声だった。


「まず状況を聞く」


レオンは深く息を吐き、小さく頷いた。


その時、扉が開く。


侍女が頭を下げた。


「アルヴェルン伯爵様」


「王女殿下がお待ちです」


伯爵は一礼し、室内へ入る。


レオンも続いた。


カイルはその背中を静かに見送る。


王女の居室。


その奥のソファに、リディアは座っていた。


銀の髪が静かに揺れる。


少し顔色は悪いが、意識ははっきりしていた。


扉が開いた瞬間――


レオンが息を飲んだ。


「姉上」


その声に、リディアが顔を上げる。


そして、優しく微笑んだ。


「レオン」


その一言で、レオンの肩から力が抜けた。


だがその目には、まだ怒りが残っている。


「……誰がやった」


低く呟く。


その言葉に、部屋の空気が静かに張りつめた。



その頃。


王宮の別の廊下では、侍女たちが小声で囁き合っていた。


「聞いた?」


「昨夜のこと」


「王女殿下の侍女が攫われたって」


「ええ……それで」


声をさらに落とす。


「ヴァルディーク公爵家の嫡男が助け出したそうよ」


「しかも――」


侍女の一人が、少し身を乗り出した。


「抱き上げて、王宮まで戻ったって」


小さなどよめきが起こる。


「本当?」


「騎士が見ていたらしいわ」


「それって……」


言葉を濁す。


だが、意味は誰もが理解していた。


貴族社会では、未婚の男女が人前で身体を支えるような行為は珍しい。


ましてや――


公爵家の嫡男。


侍女の一人が小さく呟いた。


「……ただの侍女じゃないのかもしれないわね」


その噂は、ゆっくりと王宮の中を広がっていった。


そしてやがて――


社交界へと流れていくことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ