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第十話 王宮へ
王宮へ戻る馬車の中は静かだった。
カイルは向かいの席に座り、腕の中の少女を見下ろしている。
リディアはまだ完全には意識を取り戻していない。
馬車の揺れに合わせて、銀の髪が静かに揺れていた。
しばらくして、リディアの瞼がわずかに動く。
「……ここは」
かすれた声だった。
カイルは短く答える。
「王宮へ戻る途中です」
リディアは少し考えるように目を閉じた。
そして小さく息を吐く。
「……そうですか」
それ以上は何も言わなかった。
その頃。
ダグラス侯爵家別邸では、騎士たちが室内を調べていた。
「こちらにも一人います!」
別室の扉が開く。
そこには一人の令嬢が座り込んでいた。
ミレーヌ・フォン・カストラ。
顔色は青く、体は震えている。
騎士が近づく。
「動くな」
ミレーヌはゆっくり顔を上げた。
そして――
窓の外を見た。
そこには、先ほど去っていった馬車の跡が残っている。
(終わった……)
その言葉が、頭の中に浮かんだ。
王宮ではすでに騒ぎになっていた。
王女アリアナが立ち上がる。
「ダグラス侯爵家……」
静かな声だった。
だが、その瞳には怒りが宿っている。
「宰相を呼びなさい」
侍女が頭を下げ、急いで部屋を出ていった。




