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第七話 残されたもの
王宮の外門。
石畳の上を、カイルは静かに歩いていた。
その後ろには王宮騎士が数名続いている。
外門の衛兵が緊張した様子で頭を下げた。
「確かに、二人の令嬢が外へ出られました」
「一人はアルヴェルン伯爵令嬢」
「もう一人はカストラ男爵令嬢です」
カイルは何も言わない。
ただ視線を地面へ落とした。
石畳。
馬車の轍。
そして――
何かが落ちている。
カイルはゆっくりと膝を折った。
拾い上げる。
白い真珠。
パールの髪飾りだった。
カイルの目がわずかに細くなる。
「……リディア」
低く呟いた。
それは、無意識の声だった。
騎士の一人が戸惑ったように声をかける。
「カイル様?」
カイルは立ち上がる。
その手には髪飾りが握られていた。
「馬車は?」
衛兵が答える。
「商人の馬車のようでした」
「ですが紋章はありません」
カイルは一瞬だけ考える。
そして静かに言った。
「追跡する」
その瞬間――
空気が震えた。
石畳の轍が、白く染まる。
氷。
カイルの魔力が地面を伝っていく。
凍った轍が、王都の通りへと続いていた。
騎士たちが息を呑む。
カイルは歩き出した。
その目は、まっすぐ前を見ている。
「まだ遠くへは行っていない」
低い声だった。
「必ず見つける」




