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婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第五章 侯爵令嬢の接触

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第一話 侯爵家の思惑

舞踏会の夜。


ダグラス侯爵邸の応接室には、まだ灯りが残っていた。


豪華なソファに腰掛けながら、ルーカス・フォン・ダグラスはグラスを軽く揺らしている。


向かいに座るイザベラ・フォン・ダグラスは、不機嫌そうに扇を閉じた。


「気に入りませんわ」


苛立った声だった。


ルーカスは面白そうに笑う。


「まだ言っているのか」


イザベラは眉をひそめた。


「当然です」


「ただの侍女のくせに」


「皇太子殿下に、王弟殿下」


「挙げ句の果てには、ヴァルディーク公爵家の嫡男まで」


悔しそうに言う。


「どうしてあんな女が、あそこまで――」


ルーカスはゆっくりとグラスを回す。


「確かに」


小さく呟く。


「随分と守られている」


そして、ふっと笑った。


「だが――」


「だからこそ面白い」


イザベラが怪訝そうに見る。


「お兄様?」


ルーカスはソファの背にもたれた。


「皇太子に守られ」


「王弟に目をかけられ」


「ヴァルディーク公爵家の嫡男が傍にいる」


一拍置き、静かに言う。


「それでも、ただの侍女だ」


その瞳に、獲物を見るような光が宿る。


「……手に入ったら」


ゆっくりと口元が歪む。


「さぞ面白い」


イザベラの目が光った。


「でしたら」


小さく身を乗り出す。


「方法がありますわ」


ルーカスが眉を上げる。


「ほう?」


イザベラはゆっくりと笑った。


「ミレーヌ・フォン・カストラ」


その名前に、ルーカスは少し考えるように目を細めた。


「男爵令嬢か」


イザベラは頷く。


「ええ」


「アルヴェルン伯爵令嬢と、昔からの知り合いですわ」


そして静かに続ける。


「呼び出すくらいなら、出来るはずです」


ルーカスは小さく笑った。


「なるほど」


グラスを置き、ゆっくりと言う。


「確かに」


「昔の知り合いなら、警戒も薄い」


イザベラは満足そうに微笑む。


「少し、お話をしていただくだけですわ」


その言葉に、ルーカスの口元がわずかに歪んだ。


「……そうだな」


静かな声で呟く。


「まずは、呼び出してもらおう」


ダグラス侯爵邸の灯りは、まだ消えない。


その夜――


静かに、一つの企みが動き始めていた。

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