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婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第四章 広がる評判

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第十五話 かつての婚約者

音楽が終わり、ダンスの輪がゆっくりとほどけていく。


カイルはリディアの手を離し、静かに一礼した。


「ありがとうございました」


リディアも優雅に礼を返す。


「こちらこそ」


その時だった。


人々の間を縫うようにして、一人の青年が近づいてくる。


栗色の髪。


整った顔立ち。


アルフレッド・フォン・グランベルクだった。


その後ろには、ミレーヌ・フォン・カストラが寄り添うように立っている。


アルフレッドは数歩手前で足を止めた。


そして、信じられないものを見るようにリディアを見つめる。


「……リディア?」


その声には、戸惑いが混じっていた。


リディアは落ち着いた表情のまま、静かに一礼する。


「お久しぶりでございます、グランベルク様」


その丁寧な言葉に、アルフレッドの表情がわずかに揺れる。


「君は……」


言葉を探すように視線を彷徨わせる。


「どうしてここに――」


その時だった。


一歩、前に出た人物がいた。


カイルだった。


黒い瞳が静かにアルフレッドへ向けられる。


「グランベルク卿」


落ち着いた声だった。


だが、その場の空気がわずかに変わる。


アルフレッドは初めてカイルを見た。


そして、その名に気付いた。


「……ヴァルディーク様」


公爵家の嫡男。


社交界でも名の知られた人物。


カイルは穏やかに微笑む。


「彼女に何か?」


その言葉は柔らかい。


だが、はっきりとした牽制だった。


アルフレッドは一瞬だけ言葉を詰まらせる。


その横で、ミレーヌが小さく息を呑んだ。


リディアが公爵家の嫡男と並んで立っている。


それがどういう意味か、社交界の人間なら誰でも分かる。


アルフレッドは視線を落とし、言った。


「……いえ」


「少し、驚いただけです」


だが、その視線はもう一度リディアへ向く。


かつて婚約していた令嬢。


そして今――


自分より遥かに高い地位の男と並んでいる。


アルフレッドの胸の奥に、言葉にならない感情が広がっていた。

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