第二話 侯爵令嬢
アリアナ王女の部屋に、一人の令嬢が訪れていた。
赤い髪を優雅に結い上げた、美しい少女。
イザベラ・フォン・ダグラス――侯爵家の令嬢である。
「お久しぶりです、アリアナ殿下」
優雅に一礼するイザベラに、王女は穏やかに微笑んだ。
「イザベラ。今日はどうしたの?」
「殿下の体調が良くなられたと聞きまして」
柔らかな声で答えながら、イザベラは部屋をゆっくり見渡す。
そして――
その視線が一人の侍女に止まった。
銀の髪の侍女。
リディア。
「……あなたが?」
小さく呟く。
「殿下のお食事を整えている侍女というのは」
リディアは静かに一礼した。
「リディア・フォン・アルヴェルンと申します」
「まあ」
イザベラは興味深そうに微笑む。
「王女殿下の体調を変えた料理だなんて」
「ぜひ一度、味わってみたいものですわ」
王女は楽しそうに言う。
「リディアの料理はとても優しい味なの」
「体も温まるのよ」
「そうなのですか」
イザベラはゆっくりと頷いた。
だが、その瞳には別の光が浮かんでいた。
(体を整える料理……)
(美容にも使えそうですわね)
ティーカップを持ち上げ、優雅に微笑む。
「リディア」
「今度、私のためにも作ってくださらない?」
その声は穏やかだったが――
どこか命令のようでもあった。




