17/107
第一話 社交界の噂
王宮の噂というものは、広がるのが早い。
特にそれが王族に関する話であれば、なおさらだった。
「第二王女殿下の体調が良くなっているそうよ」
王都の貴族街にあるサロンでは、そんな話題が囁かれていた。
「最近は食事も召し上がっているとか」
「ええ、聞いたわ」
「どうやら新しく来た侍女の料理らしいの」
その言葉に、一人の令嬢がゆっくりと顔を上げた。
赤い髪。
琥珀色の瞳。
イザベラ・フォン・ダグラス。
侯爵家の令嬢だった。
「……侍女の料理?」
彼女は優雅に紅茶のカップを持ち上げる。
「王宮というのは、面白いところですわね」
微笑みながら言う。
だが、その瞳にはわずかな興味の色が浮かんでいた。
「侍女が王女殿下の体調を変えるなんて」
カップをそっとソーサーへ戻す。
「少し――会ってみたくなりますわね」




