隣国
「なにもお前までついて行くことないだろうに」
「大丈夫よ、私もついて行きたいの。このままずっと屋敷に閉じこもっているわけにもいかないわ」
ずっとあの日から屋敷の中で過ごしてきた。
行く場所と言ったらアイバン伯爵家のみだった。
「大丈夫です。アイリンは俺が守ります。」
そう言ったギルバートの言葉に私は嬉しくなり、彼に触れたくなった。けれど伸ばした手は彼に触れる前に止まった。
手が震えたことに気づいたからだ。
私は伸ばした手を下ろし、父様に微笑んだ。
「たった半年よ。お身体には気をつけてね。行ってきます父様」
そう言って私たちは隣国へ向かった。
隣国に着いて私はすぐにライラとハルバートと父様に手紙を書いた。
花に囲まれたとても美しい国だと。
そしてギルバートは隣国の剣術を学ぶために交換留学生としてサリュト学園に半年の間だけ編入した。
その間は私はギルバートと暮らす屋敷の中にいることになった。
「ギルバートの剣術いつか見られたらいいな」
きっとかっこいいんだろうな、なんて1人で妄想しているとギルバートが帰ってきた。
「おかえり、ギルバート」
そう言うと何故かギルバートは一瞬固まり、「おおう?」と意味深な返事をした。
どうかしたのか聞いたけれどなんでもないという。
よく分からないけれど稽古が疲れたのかもしれない。初日で知らない人しかいない輪の中に入ったのだ、疲れるだろうとひとりで納得し、頷いた。




