婚約
あれから3年の月日が経った。
変わらず姿を見るだけで震える。
けれど触れなければ過呼吸や汗は無くなり、本当に少し体が震えるくらいにはなった。
けれど触れられれば嫌な汗をかき、過呼吸に陥る。
それでも日常生活を送れるくらいには回復した。
そんな中、父から持ち出された私の婚約話。
「父様...今なんて...」
「....お前とハルバート様の婚約を考えている。アイバンからも是非と言われた。」
「な、なんでハルバートなのですか...?」
「お前はハルバート様にだけは触れられても発作が起きないからだ。夫婦になるなら触れられないなど話になるまい。」
「い、今治している最中です...!このまま良くなればいつかはきっと...っ!」
「...いつかとはいつになる事だ...その頃には婚期を逃し、いい縁談がなくなる。...自分の娘にいい嫁ぎ先をと思うのが普通だろう...。」
「....お父様...」
ぎゅっとドレスのスカートを握りしめる。
「ギ、ギルバートとこのまま続けていればあと1年で良くなってみせます...!」
「...ギルバート様は半年後に隣国へ渡航するそうだ。」
だからお前の面倒は見て貰えなくなるだろう...。そう父様は言った。
「...え」
知らない。ギルバートが隣国?どうして...?
「何でも隣国にある剣術を学びに行きたいだとかで」
淡々と話す父様を置いて私はかけ出す。
後ろから「アイリン!?」と叫ぶ父様の声が聞こえたもののそれを無視して馬車で急いでアイバン家に向かった。
そして着くやいなやギルバートに問いつめた。
「な、なんで隣国に行くの...!?」
ぎゅっとギルバートに触れている手が震えている。額にも汗が浮かんでいる。
その姿をギルバートはじっと見つめると、すっと視線を外して告げた。
「...隣国の剣術に興味があって。隣国で学びたいことができたんだ。」
「....嘘つき...治るまで付き合ってくれるって言ったのに....うそつき...!!」
そう言ってドンドンとギルバートの胸を叩いた。
「....ハルバートと婚約するんだろう?なら今の状態でも十分なんじゃないか?...もう俺は必要ないだろ」
「何よ!!婚約したら克服に付き合ってくれないって言うの!?じゃあ貴方が私と婚約してよ!!父様は私に良い嫁ぎ先が無くなるからって言ってハルバートと婚約させようとしてるだけなんだから!!貴方が私と婚約したなら克服に付き合ってくれるの!?付き合うって言ったんだから最後までちゃんと付き合ってよ...!!」
咄嗟に出てしまった最低な言葉達。
ギルバートへお願いしただけなのにこんな形で縛ろうとしている。
醜い心から咄嗟に出てしまった言葉だった。
「...分かった。婚約...俺としよう。...そしたらちゃんと克服するまで付き合うよ...」
ギュッとギルバートが私の手に触れる。
それを顔面蒼白になりながら私は頷いた。
"最悪だ"と心の中で呟いて。




