変化
その事件は私が誰にも言わないでとお願いしたことにより無かったことになった。
けれど父とアイバン伯爵様が私のために彼の家を没落に追い込んだ。
そして私はというと、あれから学園に通えなくなった。
___そう、男がダメになったのだ。
ひとりでは怖くて眠れなくなった。
ひとりでは外を歩けなくなった。
___部屋から出られなくなった。
「アイリン様、ライラ様からお手紙です」
数日間部屋に篭もりっぱなし。そんなある日部屋の外から声がかけられた。
あの日から私の部屋の扉の前にはメイドが必ずついてくれている。
「ライラ?」
私は部屋の扉をゆっくり開けて、手紙を受け取ってから部屋の扉を閉めた。
手紙を開けるとライラから心配しているという手紙だった。
ライラに会いたくなった。
ライラと話したくなった。
私は部屋から飛び出した。
ライラの屋敷に着く頃には恐怖で尋常じゃないほど汗をかいていて、全身が震えていた。
それでも一目散にライラの部屋に飛び込んだ。
ライラは一瞬驚いた顔をしたものの笑顔で私を迎えてくれた。
「あなたすごい汗だわ....医者を...」
そう言うライラの手を握って首を振った。
「体調が、悪いわけじゃないの....」
あの日のことを私は正直に話した。
「...そう...そんなことが...」
ライラは一緒に泣いてくれた。
「兄様達も...怖いの...?」
あの日から会っていないから分からないけれど、今まで大丈夫だった執事達でさえ駄目だったのだ。きっと彼らも駄目だろう、と伝えた。
噂をしたら、とでもいうのかタイミングよくハルバートがライラの部屋に入ってきてしまった。
「兄様...!早く出ていってください...!!」
「す、すまない!!」
そうライラに言われ慌ててハルバートは部屋を出た。
「ごめん!!鍵かけるのを忘れてたわ!鍵をかけましょ」
と私にライラは伝えるけれど、私はずっと自分の手を見ていた。
それからゆっくりライラに伝える。
「...怖く...ないわ」
そう伝えるとライラは目を見開いた。
「ゆっくりよ!!ゆっくり入ってきてね!?」
ライラは扉の先にいるハルバートに告げる。
ライラの言う通りハルバートは私の顔色を伺いながらゆっくり入ってきた。
「....大丈夫?」
ライラが不安げに聞くけれど、本当に大丈夫なのだ。
嫌な汗もかかなければ体が震えることもない。
一歩一歩ハルバートに近づき、彼の手に触れた。
ハルバートは一瞬ビクッと驚きを見せたものの、ゆっくりハルバートも私の手を握り返した。
「怖く...ない....触れられる...」
涙がまた出てきて、戸惑いがちにハルバートは私の背中を摩ってくれた。
私につられてライラも泣いて、二人で瞳を赤くして笑いあった。
けれど嬉しさは一瞬だった。




