二人の、愛
ドイツ入国まで、五時間。
それでもかなりの速度でドイツまで飛行する。
博士は『娘』を管理する操舵室に籠り、進路経路を調節しながら何か他の作業もするということなので、ミリとキロは休憩室の簡易ベッドに横になっていた。
休憩室ははっきり言って狭い。
ミリとキロ、二人でやっと横になれる程度の広さしかない。
一足先に休んでいたミリは、目を覚ます。
と、キロが隣で、同じように横になりながら天井を見つめていた。
「眠れないの?」
ミリの問いに、『思い出してたの』とキロははにかむ。
「シャクがね、ピクニックに行きましょうって言うんだ。
あ、シャクは知ってるよね。
姉さんが会った、あの眼鏡の女の子。
シャクはね、
僕を日本に迷い込んで厄介な組織に巻き込まれたところから、連れ出してくれたんだ」
シャクの話を嬉しそうにするキロ。
シャクは『僕の能力の影響を受けない不思議な女の子』だという。
そして、キロの能力に興味を持たない。
キロはその特異な遺伝子能力のおかげで、あらゆる機関組織、各国から『武器』としての使用を切望されていた。
どこの地を歩いても、彼に破壊を望まれる。
そんな中で、シャクと出会ったのだ。
事の経緯をやっと理解したミリは、二人の出会いをとても羨ましく思った。
「だからシャクがね、ピクニックに行きましょうって言ってくれた時に、僕はとても嬉しかったんだ。
シャクが不思議な遺伝子を持っているとか、僕が特別特化遺伝子とか、そういうの全部関係なくて、
お互いを好きだっていえることが嬉しかった」
だから、とキロは力強く天井を見つめる。
「僕の力を、今度は自分の意志で、
シャクを救う為に使いたいと思っているんだ」
ミリは感じていた。
隣にいる青年が、もう子供ではないことを。
そして同時に、ミリは気づいた。
自分が不安に思っていた原因が、
センチがありのままの自分を、本当に好きでいてくれるかどうか、という不安だと言うことに。
さんざん好きだと言うセンチの好意から、逃げていたのは自分だ。
自信があってもなくても、まずはセンチを救い出そう。
…考えて悩むのは、それからにしよう。
ドイツ入国まで五時間。
二人の決心が強くなるには十分な時間だった。
朝日がすっかり昇り切った頃、ステルス機能を使ったまま、秘密裏に軍用機は着陸。
『娘』のステルス機能はレーダーからの消失だけでなく、
透明人間になったかのように視覚からも消失する機能が付いている。
だから人里離れた森の中にそっと着陸しても、気づいたのは小鳥たちだけだった。
しかし、いくら機体にステルス機能が働いているとしても、
機体から降りてしまえばその姿はあらわになる。
衛星は継続ジャックしたままなので、そこからの発見はないが、人里に出ればそこから情報は流れるだろう。
その不安を口にするミリに、博士は変わらず電子手帳のキーを叩く。
「大丈夫じゃよ、わしには『兄弟』がたくさんいるからの」




