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1 「遠い記憶」



「一花(いちか)〜? どこにいるの〜?」


遠くから、母親の朝霧 澪(あさぎり みお)が娘を捜し優しくのんびりとした声が響く。


けれど、五歳の一花はその声に答えることも忘れ、公園の隅にある鬱蒼とした草むらの中にしゃがみこんでいた。

綺麗なまつ毛がきちんと整列した、幼いつぶらな瞳。

その視線はじっと一点に注がれている。


視線の先にいたのは、ボロボロになって地面に横たわる、一羽の青紫色の蝶々だった。


片方の羽は無残に引き裂かれ、鱗粉も剥げ落ちて、今にも消えてしまいそうなほどに弱り切っている。


一花は息をひそめ、そっとその姿を見つめながら、小さな声をかけた。


「……どうしたの? 怪我しちゃったのかな……?」


触れたら壊れてしまいそうで、小さな指先を伸ばすことすらためらわれる。


すると、その蝶々は一花の言葉に応えるかのように、ゆっくりと、もぞもぞと身体を動かし始めた。



―――生きていた。



一花はくりっとした純粋な目を見開いて、驚きと心配のあまり、思わず声を張り上げる。




「え、動いちゃだめだよ!」




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