第4章:神話の書き換えと起源の双樹 / 第1節:扉の奥の「目」を砕け
キーニャにしか見えないモノと初始の謎…そして、あの泉へ向かう前にキーニャの覚醒を試みたシル。キーニャは元源への接続とともに神話語を取得し、目の下へ向かう。
第1節:扉の奥の「目」を砕け
キーニャはか細い声で答える。ニャンコも心配そうにキーニャを見つめ、それからシルに視線を向けた。
「シル、お前の言い分はわかる。お前の『大元』とのリンクもな。だが、キーニャはまだ何も知らん状態じゃ……もしものことがあれば……」
シルはニャンコの頭を撫でた。
「ニャンコの言いたいことはわかるわ。キーニャの不安もね。だけど、キーニャが繋がっている大元を馬鹿にしないで。大元の大元――『元源』と繋がっているのよ? 私も初めて見るけどね♪」
『げっ……元源!?』
「げっ、元源!? ……『はじまりの源』……だと……」
「そうよ♪ それに耐えているキーニャをどう思う?」
シルは胸を張り、キーニャの肩に腕を回した。
「いい、キーニャ? 今から向かうのは、あの泉の下よ。キルミがご先祖様の……いいえ、聖魔獣に『ボカシ』を入れてくれているわ。あそこへ着いたら、聖魔獣に向けて五元素の塊を投げて。それだけで発動するはずだから」
「五元素……魔法の基礎を、ぶつけるの?」
「そう。私たちには聖魔獣の存在を『書き換える力』がある。でも、それだけじゃダメ。まずはその奥にある『扉』へ行かないと」
『ちょっと、キーニャにもあんたと同じ力があるっていうの!?』
「元源と繋がるってそういうことよ。万物の始まりへの接続。中継している私の方がキツいかと思ったけど、案外余裕があるくらいだわ」
キーニャは心配そうな眼差しをシルに向けている。
「本当に大丈夫だから♪ いい? 私たちの第一優先は、扉の先にある『目』。おそらくそこで、キーニャのご先祖様を解放できるはずよ」
『待って、シル。聖魔獣の視界に入らぬ限りは安全よ?なぜわざわざ攻撃を仕掛ける?』
「だって、どこに出るかわからないでしょ? 聖魔獣の目の前だったら最悪じゃない。いくわよ、キーニャ」
シルが空間に手をかざすと、そこに亀裂が走る。
「ま、待てシル! キーニャ、よいか。シルはああ言っておるが、各々の精霊への敬意を忘れるな。お主にとってはすべてが初めての接触じゃ。そうせねば、力は貸してくれんぞ!」
ニャンコが早口でまくしたてると、キーニャは強く首を縦に振った。
唯一の明かりは、天から注ぐ陽光のみ。静寂を割く微かな音に異形が振り向いた刹那、光弾がその身を包み込み、二つの影が奥へと駆け抜けた。
「あれでいいんだよね?」
「オーケー、オーケー♪」
二つの影が扉の前で止まる。少女が手をかざすと、重低音を響かせて扉が開き、人が通れるほどの隙間が生じた。二人が中に入り、再び手をかざすと扉は密閉される。もう一人の少女、キーニャが矢継ぎ早に呪文を唱えた。
「これで大丈夫なはずだよ、シルちゃん」
「さすがキーニャね。ニャンコに教わったことを即座にこなすなんて。あの子がいたら喜んでいるわよ」
シルの視線の先、部屋の中央には白黒の文様が刻一刻と変化する「目」の形をした丸石が浮遊し、二人を凝視していた。
「こちらが本命。ご先祖様も大切だけど、まずは巨大な魔法印を解くことが先決よ」
「本当にいいの? 聖魔獣を先に抑える方が安全だと思うんだけど……」
キーニャは怯えながら、浮遊する石と閉ざされた扉を交互に見つめる。シルはその視線を正面から受け止めた。
「今は『外』にいるのよ、キーニャ。わかるでしょう?」
「外?」
「そう。つまりあなたの行動のすべてが魔石碑に刻まれている。この空間がどこにあるかは分からなくても、魔石碑が残れば『後世』に伝わるわ。解読された神話語とともにね」
シルが中央の「目」へと歩み寄る。「目」は静かに彼女を捉え続け、シルは左手をかざした。
「封印を維持してきた伝達者たち、役割はここまでよ。あとは私たちに任せなさい」
シルは深く息を吸い込み、精神を研ぎ澄ませて口を開く。
「――――――――――――!!!」
「目」が静かに閉じ、石の表面に亀裂が走る。シルは背を向け、歩き出した。
「シルちゃん……」
「いい、キーニャ。石が砕け散る前に、この山に印を張って」
「印を?」
「聖魔獣が完全に目覚めるわ。被害を最小限に食い止めたいの。あなたの思い描く印で、この山を囲って!」
彼女たちの戦いは一瞬で終わり、世界は別の方向へ向かっている…彼女たちが望む未来へ変わっていくのだろうか?




