第3章:神への反逆と受け継がれし「言葉」 / 第1節:お婆ちゃんが遺した「神話語」
突然現れた魔石碑の管理人キルミ。
そして、ニャンコが元魔石碑の管理者であった事が明かされるが、事態は違う方向へ?
第1節:お婆ちゃんが遺した「神話語」
「そうね」
キルミは立ち上がり、今度はシルの額に自分の額を寄せた。
「ちょっとでいいわ。『覚えた』時のことを思い出しなさい」
しかしシルは、キルミの手を軽く払いのけた。そして机に腰を下ろして言い放つ。
「別にそんなことしなくても、聞きたいならそう言えばいいじゃない。それに、今のは管理者としての権限じゃなくて、あんた自身の力でしょ?」
シルが左手に右手を添えて小さく呟くと、左手が淡く光り、何かの印が浮かび上がった。
「その力、私には無効よ。ちゃんと、そう『された』んだから。……私は嫌だったんだけど、強制的に刻まれちゃったのよね」
シルが眺める左手には、不気味な『目』の印が刻まれていた。
「……シル。あなたは覚えたどころか、教育されたのね」
「そうよ。もう、思い出すだけでも嫌だわ、あのババァ……。何が『必要になる』よ。私がどれだけ遊びたかったと思ってるの」
シルはふてくされたように口を尖らせる。
「私に神話語を強制的に叩き込んだのは祖母よ。『私の代で流れが変わる』なんて変なこと言ってたけど……ちょっと変わりすぎよね」
シルは再び左手にあった印を見えないよう消すと、奥まで続く本棚を眺めながら言った。
「けど、悪くないわね。……まぁ、『白』魔法使いとしてはあるまじきことだけど。『神』へ拳を突きつけることができるなんてね」
「神への反逆……凄く馬鹿なことをやろうとしている自覚はあるのかしら?」
「理解してるつもりよ。けど、神様だってただ傍観してるだけじゃつまらないでしょ? 時には刺激を与えないと。だから、わざわざ人の世界に神話を残したんでしょうしね」
シルは神話書に手を置き語る。キーニャはおどおどしながら、シルを見つめていた。
「け、けど……シルちゃん」
「大丈夫よ、キーニャ。刺激を与えるんだから。神様もお喜びになるはずよ」
「ニャニールン……あんたって、馬鹿かあほか分からない人と仲良くなりすぎよ……」
「知るか……あっちから寄ってきたんじゃ。キルミもその一人になるぞ? それに、キルミも楽しんでいるんじゃろ? これが筋書き通りに進んでいくかどうかを……」
「何を言ってるのかしら、ニャニールン。筋書きって、私が何か企んでいると思っているの?」
キルミはシルとキーニャの話を耳にしつつ、軽くニャニールンを見る。
「そこまでは思っておらぬが、お前もただの監視には飽きてきたから、こちら側に来たんじゃろ? ワシと同じようにな……それに、どうやら同じ神話語を理解している者同士のようじゃしな」
キルミはニャニールンの問いには答えず、シルの前に歩み寄った。
「――で、どうするつもりなの? その神話に答えは書いてあったのかしら?」
キルミはシルが手を乗せている神話書を覗き込み、尋ねる。シルは神話書に目を落とした後、キルミを見上げた。
「そうね、これには何も答えは書いていなかったわ。だけど、ヒントは書いてくれていたみたい。ホント、優しい神様よね。『――』」
シルの呟きに応じるように、図書室の奥から一冊の本が彼女の手元へ飛んできた。シルはその本を掴むと、椅子に腰かける。
「えっ? な、何をしたのシルちゃん……それに、その本は何?」
「さぁ? 私も知らないわよ。神話書にそうしろと書いてあっただけだしね」
キルミはシルの傍らに立ち、その本を盗み見る。
「へぇ、面白いことが書いてあるじゃない……シル、あんたにできるの?」
キルミはこれからの展開を予測したのか、楽しげな表情でシルを煽るように言った。シルは何も答えず、ページを最後までめくりきると、静かに本を閉じた。
「そうねぇ……難しくはないわ。けど、これって本当のことだと思う? キルミは……」
シルは意見を求めるようにキルミを見た。
「私はどっちでもいい、が本音よ。あなたたちが生きようが死のうが関係ない。その過程をキーニャを通じて記していくだけ。だけど、この中身は嘘でしょうね」
ニャニールンはキルミの発言に驚き、神話書を指しながら口を開く。
「嘘じゃと? 先ほどはシルを『できるのか?』と煽っていたではないか」
シルはニャニールンの頭に手を乗せ、撫でながら話し始めた。
「そうよねぇ。私もそう感じたわ。何も書いてないもの……馬鹿々々しいことばかり。確かに最初の方は、いかにもって感じだったわ。神を討伐する方法……だけど、後のページに行くほど呆れた内容しか書かれていない。子供の日記レベルよ……はぁ」
シルの左手に隠されていた『目』この目はシルの叔母によるものだという。
そのうえ、シルの破天荒すぎる歴史の作り変え?どのように話は展開??




