LOVE.9 グッド・バイ
シュタイン邸。
自宅。研究室。
「ご主人様のドクトル・織田は、刑務所にいるんだな」
「はい。そうです」
「ええ。そうよ」
アインの問いに、フランソワとスペイシーが答える。
二人の愛娘のご主人様は、犯罪者。
危険思想を持った。悪意があった人物に注文された。
反乱アンドロイドという暴挙に出て、冷凍刑の可能性があった二人。
アインは、はじめは、人質として、彼女たちに拘束されたが、今は完全に許している
管理された未来社会。
間違えたことなど起こらない。
処分されるアンドロイドなんていない。
なあ、そうだろう。
LOVE.9 グッド・バイ
犯罪。争い。間違い。
負のフレーズ。
その全てが、この未来には、無い。
アインは、そう思っている。
「ファンダム様には、会わせてくれないのですか」
「約束してくれたのに」
「ファンダムを好きになるのを止めろ。俺の親としての意見だ。頼む。聞いてくれ」
二人の愛娘に、アインは、頭を下げた。
ファンダム様をよく知らなかった。
戦闘用ロボットを好きになっては駄目だ。
「嫌です。好きなんです」
「そうよ。大好きなのよ」
フランソワとスペイシーは、首を振り続けた。
不良が、カッコよく見えるってことか。
「ごめんな。わかって無かったよ。ご主人様のことも好き…なのか?」
最悪の答えが返ってくる。
「オダさまを好きです」
「オダさまを好きよ」
危険思想のドクトル・織田を好き。
戦闘用ロボットのファンダムを好き。
これは、考え方の違いが生んだのか。
通信をまだ切っていない安室博士。
コイツも頭がおかしい。
危険思想のドクトル・織田の配偶者だ。
フランソワとスペイシーの反乱という暴挙も止めてあげなかったのか。
「…やっぱり、この時代では無理なんですね」
「…過去に戻って、ファンダム様に会うわ」
メイド服姿の二人のアンドロイドは、右手に光る懐中時計を持っている。
電流の力で、過去へ行ける小型タイムマシンだ。
タイムマシンは、歴史改変の危機があるため、一般の使用は、固く禁じられている。
「タイムマシン…?」
「そうです」
「そうよ」
二人の愛娘は、どうしても、ファンダム様に会いたい時は、過去に戻れるように、懐中時計型タイムマシンを携帯させてもらっていた。
安室博士に持たされていたらしい。
「使っていいんですよ」
安室博士は、優しく声をかける。
「はあ?この女、何言ってるんだよ!」
「貴方たちの自由に使いなさい」
「おい!」
「幸せになるんですよ」
「はあ?」
安室博士に、嫌悪感しか無い。
アインは、二人の愛娘にしがみついた。
「なあ、冗談だろ。何だ。あの女」
「安室博士は、ワタシたち姉妹の育て親です」
「あなたより、先だったわ」
懐中時計型タイムマシンが、まぶしく光る。
「さようならです」
「さようならよ」
「待ってくれ!俺は、お前たちを愛しているんだ!」
ガシャンっ…。
大きな音を立てて、懐中時計型タイムマシンが、研究室の床に叩きつけられた。
「いりません。こんなもの」
「ワタシたちには、オジサマとオバサマがいるわ」
フランソワとスペイシーは、放心状態のアインを二人そろって抱きしめる。
自分たちを、愛娘と呼んでくれる人を選んだ。
だって、二人も、アインを愛しているから。
妻ツヴァイは、それを、遠くで見守っていた。




