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LOVE.10 スマイル・アゲイン

 シュタイン邸。食卓。

 最近、アインが笑わなくなった。


「待て。お前たちを愛しているんだ…ですか」

「放心状態だったわ」

 愛娘まなむすめたちは、笑顔でアイスクリームを食べている。


「ブルーベリーアイスも美味しいでしょう」

 妻ツヴァイもにこやかである。


「はい。オバサマ。美味しいです」

「オバサマ。最高に美味しいわ」


「そうよねえ。ほほほ」

 笑うツヴァイの隣の席では、アインが、納得いかない顔でコッペパンを、ちょっとずつ食べている。

「アインさまん。ご機嫌ななめですん」

 シュタイン家専属アンドロイドのマロン1号が、心配して声をかける。

「…納得いかん」

「何がですん」

「フランソワ!スペイシー!俺をだましたな!」

 アインは、愛娘二人をにらみつける。


 本当にいなくなると思った。

 絶対、離れたくなかった。

 どうしても、離れたくなかった。


 愛して…いたのだ。



 LOVE.10 スマイル・アゲイン



 安室博士は、タイムマシン法違反により逮捕された。

 何でも、すでに、自らの作成したアンドロイドを、数体タイムマシンで、過去に飛ばしていたらしい。

 その際、安室博士自身の意識も歪み、人物として、おかしくなってしまっているそうだ。

 元々は、もっと思慮深く、良い人らしい。


 信じられるか。

 男が、泣くところだったんだぞ。

 刑務所で反省してろ。


 アインは、安室博士を許すつもりは無い。


 そもそも、懐中時計型タイムマシンは、二人の言葉に反応して勝手に動いた。

 愛娘二人のタイムマシン所持も、安室博士が悪いということで、無実だ。


 アインを、ツヴァイを、親として、愛しているから。

 過去に戻るつもりなど、無い。


「両想いじゃないの。良かったわね。アイン」

「お、俺を、あ、愛しているのか?」

 照れながら、何とか言葉をひねり出す。


「オジサマを愛してますよ」

「オジサマを愛してるわよ」

 フランソワとスペイシーは、簡単に返す。


 簡単に言うもんだ。

 娘というのは、大人だ。


「オジサマ。そんなに照れて、どうやって結婚したんですか?」

「そうよ。オバサマ、教えて」

 二人が、アインとツヴァイの結婚話に興味を持つ。


「それよ。ねえ」

 ツヴァイは、アインとは、幼なじみ。同級生。

 しかし、奥手なアイン。

 お見合い形式を取って、何とかゴールインしたらしい。


「オジサマ。笑ってくださいよ」

「オジサマの笑顔が見たいわ」


「笑えるもんか」

 アインは、思う。

 二人の愛娘たちは、ご主人様のオダさまが好き。

 戦闘用ロボットのファンダム様が好き。

「俺のこと、愛してるなんて嘘だろうよ」

 泣けてくる。

 犯罪者に、魅力で勝てないなんて。


「オジサマ…」

「バカよ…」

 フランソワとスペイシーが、アインの手を引く。

 フランソワが、右手をつつみ。

 スペイシーが、左手をつつむ。

 愛が、通じ合っている。そう教える。


 人間。

 アンドロイド。


 頭脳。

 人工知能。


 通じ合っている。

 愛し合っている。


 それは、奇跡だ。ミラクルだ。


「俺のこと、好きになってくれるのか?」


「あなたは、奇跡を起こしました」

「そう。奇跡なのよ」


「愛して…くれるか?」

 アインの眼差しの向こうで、フランソワとスペイシーの二人が微笑んだ。

「そうか…」

 うれしくなったアインも微笑み返す。


 未来。

 人間が働かなくなり、アンドロイドが代わりに働く時代。

 働かなくなったアンドロイドの姉妹は、心優しい人間の博士の夫婦に出会った。

 そして、愛娘たちとなり、交流を持った。

 それは、アンドロイドに愛情を目覚めさせた。

 奇跡だと思う。

 まさしく、心優しい人間は、ファンタジスタだ。

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