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第七話 終わりと始まり

劇場を出ると、夜の帳がゆっくりと剥がれ、空が淡い群青色に染まり始めていた。


遠くからは、新聞売りの少年たちが鳴らす鈴の音と、

「号外!

首相と軍部の癒着発覚!

総裁暗殺の真実!」

という威勢のいい声が響いてくる。


私たちは、あえて馬車を使わず、夜明け前の街を歩いた。


「……マイクロフィルムなんて、いつの間に撮ったんだ?」


隣を歩く彼女に尋ねると、彼女は前方を見つめたまま、事もなげに言った。


「所長が現場で石畳を這いずり回っている間です。

あの程度の枚数、私の記憶と速写技術をもってすれば、フィルムを使うまでもありませんでしたが」


「……怖いな、君は」


私は苦笑し、ポケットの中で銀の鍵を弄んだ。


事務所に戻ると、朝の光が窓から差し込み、昨日の重苦しい沈黙を追い払っていた。


机の上には、まだ首相が置いていった高級葉巻の灰が残っている。


私はそれを窓の外へと払い落とし、代わりに安物の煙草に火をつけた。


「さて、1万メールの報酬は……。

まぁ、国がひっくり返ったんだ、あてにはできんな」


「いいえ、所長。総裁の遺志により、彼個人の資産から正当な報酬が支払われるよう、すでに手配済みです。

クリーニング代を含めて、ね」


彼女はデスクにコーヒーを置き、いつもの手帳を開いた。


「それで、今日の予定は?」


「はい。午前8時30分からの依頼は、先ほど電話でキャンセルされました。

代わりに……」


彼女が少しだけ口角を上げたように見えた。


「新しい銀行総裁の代行を務める人物から、内部調査の依頼が一件入っています。

かなり骨の折れる仕事になりそうですよ」


「……へいへい。有名税ってのは、どうやら利息までつくらしいな」


私は深く椅子にもたれかかり、紫煙を吐き出した。


窓の外では、新しい時代を告げる陽光が街を白く照らしている。


この国の血流は、まだ止まっちゃいない。

そして、俺たちの仕事も、まだ終わることはなさそうだ。

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