03.ライトサン、青い星へ行く①
ライトサンがボール星を出発してから、数日が経った。
何故、ライトサンがこの星を出ることになったかというと、ララから使命を託されたからだ。
伝説の『青い星』に行き、ある人宛てにメッセージを伝えて欲しいと。
異世界の青い星に行く唯一の方法は、この光の世界と、向こうの世界の狭間に存在する扉を開けるしかない。
今頃、ライトサンはその扉を必死で探しているはずだった。
一方、ララの意識もライトサンの感情を求めて宇宙を駆け巡っていた。
ただ、この宇宙は広すぎる。
ララの特殊能力(魔法)がすごいとはいえ、ライトサンの感情を探しだすには時間がかかるだろう。
実を言うと、ワタシもライトサンを探し始めていたのだ。
「あ、いた……」
と、ワタシの独り言。
やはり、先にライトサンを探し出したのはワタシの方だった。
いくら下の下とは言っても、一応は神だからな。
決して自慢ではないよ。
自慢ではね……。
ところが、ライトサンの様子がおかしい。
周りを見回し、唖然としている感じだ。
『ここは、どこ? ぼくはどっちに行ったらいいの……? あぁぁぁ、わかんないよぉぉぉ……』
と嘆いているように見える。
『一体、なにがあったのか?』
気になったワタシは早速、ライトサンの記憶を覗くことにした。
『青い星の伝説』の守護神であるワタシは、この伝説に関するすべてを知ることができるのだ。
まずは、ライトサンがボール星を飛び立った直後から。
☆ ☆ ☆ ☆
数日前、大きな光る球体から追われたライトサンは、逃げるしかなかった。
絶体絶命のピンチかと思われたが、逃げたり隠れたりするのは、案外小さい方が有利なのかもしれない。
ライトサンの場合がそうだった。
どこかの星の中に入ってしまえば、隠れる場所はいくらでもあった。
相手が他の星の捜索に励んでいるうちに逃げ出せばいいのだ。
そこで、ライトサンの小柄な体が役に立ったというわけだ。
ただ、幸運が隙を生むこともよくある話。
神であるワタシでさえ何度も経験したのだから、少女から創られたばかりの幼いライトサンなら尚更だろう。
まるで、初めてのおつかいのようだった。
親から頼まれた買い物があるというのに、珍しい物や音に出会い、つい興味をそそられてしまう。
その度に、立ち止まったり、大きくコースを逸れたりもした。
それでも、ララからの頼まれ事を思い出し、一旦はコースに戻るのだが、また同じことの繰り返しだった。
最初は幼くて可愛いいと微笑んでいたワタシだが、その内笑顔が消えた。
後半はブラックホールに引き込まれそうになったり、大きな星の爆発に巻き込まれそうになったりと、ハプニングの連続だった。
それでも、なんとか無事乗り切ることができたのは、幸運の二文字に他ならないだろう。
☆ ☆ ☆ ☆
ということで、ライトサンは現在に至る。
まぁ、こんなところだ。
現在のライトサンについてもう一度説明しておくと……。
様子がおかしい。
周りを見回し、唖然としている感じだ。
『ここは、どこ? ぼくはどっちに行ったらいいの……? あぁぁぁ、わかんないよぉぉぉ……』
と嘆いている。
それも当然だろう。
初めてのことをたくさん経験した。
それは楽しいことばかりではない。
危険なことも辛いこともあった。
そして、今のライトサンは、目的の扉どころではない。
自分のいる場所がどこなのかさえわからない状態なのだ。
その上、心身ともに疲れきったライトサンはホームシックにも襲われ、すっかり途方に暮れていた。
そのときだった。
「あ、ライトサン!」
ララの心の声が、ワタシの意識の中に飛び込んできた。
どうやら、ライトサンの抑えきれない感情が爆発したお陰で、ララも気づいたのだろう。
「ライトサン、大丈夫?」
と、ララは思わず声に出してしまったあと、無駄だと気づいたのだろう。
自分の手で、頭をコツンと叩いた。
今の状態のララは、ライトサンと交信できないのだ。
一方的に、ライトサンの感情を感じ、見守るしかない。
それでも、不思議なことが起こることもある。
心が繋がっていれば……。
突然、ライトサンはララの最後の姿を思い出した。
大人たちに取り押さえられた状態で、見上げていたっけ。
その薄いオレンジ色の瞳もはっきりと。
希望に満ちた瞳だった。
『そうだ。ララから頼まれた使命がある』
そう思い出したライトサンは、2つの世界の狭間に存在する扉を探して飛び始めた。
どんなことがあっても、ララの希望と願いを叶えてやりたい、と。
そう決意して。
「ありがとう。ライトサン」
ライトサンの気持ちを知って、ララは胸に熱いものを感じた。
幸運を引き寄せるパワーは、人の強い意思なのかも知れない。
無事、ライトサンはこの世界と異世界の狭間に存在する空間に辿り着いた。
しかし、ワタシは思った。
「なんか変だなぁ……」
何が変なのか、わからないまま、じっと見ていると……。
「あっ……」
やっと気づいた。
「空間が微かに歪んでいる……?
まさかなぁ......!
でも……」
じっと睨みつけていると、どんどん歪みがひどくなってきた。
ライトサンも気づいたようだ。
用心しながら、歪みに近づいていく。
すると、今までなにも見えなかったのに、突然壁が現れた。
上下左右に限りが見えない程大きな壁だ。
いや、待てよ…。
壁じゃない。
扉……か……?
そうだ、間違いない。
ボール星と青い星……それぞれの世界の狭間に存在する扉だ。
ワタシも実際に見るのは初めてだが、何故か確信した。
「これがこの世と異世界とを仕切っている扉なのか……」
ワタシの意識は、驚きを隠せず、遥か高い扉を見上げた。
ライトサンも気づいたのだろう。
その巨大さに、思わず後ずさった。
そのときだった。
ワタシは自分の目を疑った。
なんと、ボール星のご先祖様たちが現れたではないか。
昔、青い星に行ったというララのご先祖様たちが、この世界と異世界の狭間にある扉を開けようとしている。
とっくに死んでいるのに……?
そうか、とワタシは悟った。
何千年か何万年に一度起こるという奇跡は、死者(ご先祖様たち)の仕業だったのか。
彼らのお陰で、扉が少し動いた。
よく見ると、10センチメートルほど開いている。
あ、ライトサンが扉の隙間に入ろうとしている。
が、体が挟まってしまったようだ。
「ウグ~、ウグ~……」
と、ライトサンの表情も歪んでいる。
同じように、死者であるご先祖様たちも、扉を開けようと、
「う~、う~」
顔を真っ赤にしながら頑張っている。
「ライトサンもご先祖様たちも頑張れぇぇぇ」
ララの声援も聞こえた。
その後、大きな扉が雄叫びのような音を立てたのは直ぐのことだった。
しかし、あまりにも大きすぎるから、動いたかどうかはわからない。
ライトサンが少し身をよじり始めた。
右に、左に……。
そして、あっ……。
遂に、ライトサンの姿が消えた。
扉の向こうの世界へ、ボール星からすると異世界に飛び出したのだろう。
「やったね、ライトサン」
と、喜ぶララの声。
ご先祖様たちも疲れ切っているが、嬉しそうだ。
しかし、喜んでばかりはいられない。
このボール星から出るだけでも、これだけ大変だったのだ。
異世界の宇宙を旅し、青い星に着くまでにどんなことが起こるのか、不安の材料は尽きそうにない。




