02.青い星の愛の伝説 part2
前にも説明したように、このボール星には『青い星の伝説』という言い伝えが残っている。
ところが、このタイトルに異議を唱える者が現れた。
「絶対、“愛の”を付け加えた方が素敵よ。入れないなんて許せないわ」
オレンジ色に光り輝く美少女、ララの言い分だ。
しかし、ワタシとしては黙っていられない。
「イヤイヤイヤ、長い間言い伝えられてきた伝説のタイトルを勝手に変えられては困る」
きっぱりと言ってやった。
しかし……。
「伝説はその時代その時代で、必要に応じて少しずつ変わっていくものでしょ!? そうでなきゃ、長く続かないわよ。それとも、あなたの時代で終わってもいいの?」
「イヤイヤイヤ、それは絶対に困る……」
という訳で、結局ララに押し切られるかたちで、タイトルが『青い星の愛の伝説』に変わってしまった。
ところで、ワタシは誰か? と気になっている方もいるだろうから、ここで自己紹介を……。
ワタシはこのボール星に住む神の一人である。
この星では、光星人と神が共存しているわけだ。
神にはそれぞれの責務が与えられ、ワタシは『青い星の伝説』の守護神である。
神の世界にも、守るものの重要さにより序列が生まれ、ワタシは下の下だった。
ま、伝説がなくなっても直接的には困らないからなぁ。
つまり、偉そうなことは言えない立場だが、この『青い星の伝説』についてだけは実権を握っている、つもりだったのだが……。
「この『青い星の愛の伝説』には、part2もあるのよ」
と、ララがまた、勝手に続編まで創ってしまったらしい。
「それでは伝説というより、安っぽいノンフィクションドラマになってしまうではないか。絶対に認められない」
今度こそはと、を否定した。
しかし……。
「神様、知ってる? 最近では、ボール星人の中にも『青い星の伝説』をただの迷信だっていう人が多いのよ。伝説も進化しないと、忘れられてしまうでしょ!?」
と、ララから厳しい指摘。
結局、『青い星の愛の伝説part2』については、とりあえず“ララの語り”を聞いてから判断することになった。
☆ ☆ ☆ ☆
★ ★ ★ ★
「では、わたしから発表させてもらいます。
『青い星の愛の伝説 part2』
泣く泣く、青い星からふるさとのボール星に帰り着いたご先祖様たちを待っていたのは、「おかえりなさい」という労いの言葉ではなかった。
よりによって、犯罪疑惑だったのよ。
ひどいと思うでしょ!?
でも、仕方ないのよね。
この星では、ボール星の血を他の星に残したり、他の星の血を持ち込んだりしてはいけないと法律で決められていたから。
でも、それはご先祖様たちも、いやというほどわかっていたはずなんだけど……!?
なのにどうして、青い星にボール星の血を残したり、その星の血統を持ち帰ったのか?
それは、ご先祖様たちが何故異世界にこだわったのか? にも関わってくる。
『ズバリ、ご先祖様たちの軽い勘違いだったってわけ』
法律なんて、その星の中だけで通用するものだと思っていたのね。
つまり、異世界には適用されないから大丈夫だと安心していたらしいのよ。
お気楽にも程があるでしょ、て話よね。
結局、青い星から帰ってきたご先祖様たちは、裁判で有罪となり、隔離されることになった。
その隔離という罰は未来永劫、彼等の子孫にも与えられるとされた。
そして、新たな法律が定められた。
『この星の何人も、“青い星”に行ったり、連絡を取ったりすることを固く禁ず』と。
でも、流石、わたしたちのご先祖様たち。
まったくめげなかったの。
2度とあの美しい星に行けないなら、この星を青い星にすればいい、と考えたんだって。
その結果……。
ご先祖様たちは隔離された場所で、青い星から持ち帰った色々な物(土、水、木の苗、植物の種など)で、この星の一部分ではあるけど、美しい自然界を作り上げることに成功した。
そして、待ちに待った、このボール星と青い星とのハーフの赤ちゃんたちが生まれた。
その子供たちには、クリスタルのフィギュアのように薄い枠がついていた。
元々、この星の住人は完全な光星人だから、姿形を示す薄い枠はない。
ただ、丸く光っているだけ。
しかも、そのハーフの子供たちの輪郭は青い星の人間にそっくりだった。
『そのハーフの子孫がわたしたちってわけ。』
今では逆に、隔離されてよかったと、わたしは思っている。
だって、明らかに見分けがつくだけに、隔離されなければ、わたしたちは犯罪者の子孫として被害を被ったかもしれないから。
それに、美しい自然にも暮らしにも満足しているし、ご先祖様に感謝しているくらいよ。
だから、わたしは胸を張ってこう言いたい。
『青い星の血も引き継いだボール星人の子孫たちは今、この星で幸福に暮らしている』と。
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☆ ☆ ☆ ☆
語り終わったララは、自信たっぷりに言いきった。
「青い星の愛の伝説も、このpart2も迷信なんて言わせない。絶対。だって、わたしたちの生存こそが証拠だもん」
「それさえ、突然変異だと言うボール星人もいるけどな……」
一瞬、ワタシはそう言おうとして止めた。
疑いだしたら、きりがないと思ったからだ。
ララは話し続ける。
「わたしは青い星に憧れているの。というより、ご先祖様たちに嫉妬しているわけ。わたしだって青い星の人に会いたい。恋だってしたい。それって素敵だと思わない!? だから、わたしは幼い頃から願い続けたの。神様、どうか、青い星に行けますように、て」
ワタシは『青い星の伝説』の神だ。
この伝説に関することなら何でもわかっている。
つまり、ララが何度もメッセージの光の玉を作り、青い星に送ったことも知っているのだ。
光の玉は光星人の特殊能力(魔法)で、テレパシーの送受信機のようなものである。
ところが、青い星からはなんの返事もなく、ララは諦めかけていた。
が、突然だった。
ララの願いがただの夢物語ではなくなったのは……。
やっと、青い星から返信が届いたのだ。
異世界からのメッセージだけに途切れ途切れではあったが、確かに『青い星』からの返信だった。
『わたしはマリアといいます。是非、わたしたちの星に来て欲しい。待っているから。わたしにできることがあったら、何でも言って』
「嘘ッ、なにこれ、本物ぉ!?」
いい加減なもので、ララは青い星の愛の伝説を信じきっていると断言したくせに、実際に返信がきたら驚いてしまった。
それでも直ぐに、あ、と思い出した。
以前読んだ古い書物の内容を……。
『数千年か数万年に1度、この世界と異世界との間に存在する空間の扉が開く期間がある』
と。
ララはそのときの感想も思い出した。
『きっと、ご先祖様たちもそのときに青い星に行ったんだ』
ちょうど、その扉が今また、開き始めているという。
「このチャンスを逃したら、今度いつ行けるかわからない」
早速、ララは新しい光りの玉・ライトサンを作り、メッセンジャーとして青い星に送りだした。
ちょうどそこにやってきたのが、頭の固い大人たち。
「ララ、何をしているんだ?」
そう叱責したのは、ララの父親だった。
「青い星の人たちと話したいの」
ララは自分の夢を熱く叫んだ。
しかし、大人には理解できないのだろう。
「それは法律で禁止されているだろ」
「だって、青い星はわたしたちの第2のふるさとなのよ。どうしてダメなのよ?」
「これ以上問題を起こすと、俺たちはこの星を追放されるかも知れない」
「わたしはどうしても行きたいの」
「バカなこと言うんじゃない。他の誰かに聞かれたらどうするんだ」
ララの父親が手を掲げ、呪文を唱えると、掌の上でサッカーボールくらいの光の玉が生まれた。
色は群青。
父親が、「行け」と命令すると、群青色の光の玉はライトサンを追って飛び立ったのだった。
結局家に連れ戻されたララは、自分の部屋に入った。
自然を感じる木造建築だ。
木の優しさに癒やされながら、ララはしみじみ思った。
「こんな素敵な家に住めて、わたしは幸せ者だ。でも、せっかくなら本物を見てみたいし、住んでみたい。今度が最後のチャンスになるかもしれない」
机の前の椅子に座ったララは目を閉じ、意識を集中した。
ライトサンの後を追うためだ。
離れていても、ララにはライトサンの気持ちを感じることができるのだ。
但し、かなりの集中力が必要だが……。
「ライトサン、あなただけが頼りなの。マリアさんに会って話してきてね。お願いよ」
ララはライトサンの無事を祈らずにいられなかった。
そのとき、ワタシは決心した。
これからは、ボール星と青い星、両星の血を受け継ぐララを、『青い星の愛の伝説part2』の主人公として見守っていこうと……。




