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ライトサン、青い星へ行く②

 遂に、ライトサンの初めてのおつかいは、第二章に突入した。

 無事、ボール星のある宇宙から、青い星がある世界に行くことができたのだ。

 そこはララの説明どおり平和な世界だった。

 

 思わず、


「なんだ。心配して損した」


 と呟いて、ララのムッとした表情が頭に浮かんだ。

 ワタシとララは一緒にいるわけではないが、例えるならば、テレビ電話のような特殊能力(魔法)をオンにしていたのだ。


『魔法も善し悪しだ』


 ま、それはともかく……。

 ライトサンも順調に進み、やがて、目的の星が見えてきた。

 伝説のとおり、青と白がコントラストしている美しい星だ。

 ライトサンは疲れているが、ララから聞いていた第一関門の大気圏に突入する。

 頭の中でララの喜ぶ笑顔を浮かべながら。

 想像していた以上に熱いし、圧力を感じるが、ライトサンにとって耐えられないほどではなかった。

 やがて、大気圏を抜け、その星が球体ではなくなり、平地かと思えて直ぐだった。

 ライトサンは恐怖を覚えた。

 何かわからないが、白くて大きな石のようなものが、下から自分に向かって飛んできたからだ。


「攻撃されているのかな?

 でも、どうして?」


 と、ライトサンは不思議でならない。

 それでも、白くて大きな石を避けながら下りていくと、ライトサンはやっと気づいた。

 それは高い高い塔だった。


「飛んでくるんじゃなくて、止まっていただけなんだ」

 

 つまり、ライトサンが急降下しているから、相手が下から向かってくるように思えただけか。


 ホッとしたライトサンは、その白くて大きな塔のようなものを横に見ながら、落下していく。

 すると、その大きな塔は、はるか下から伸びていることに気づいた。

 しかも、所々光っている。


「あ…多くの人がいる……」


 初めての景色に、ライトサンは首をひねった。

 ララから聞いていた、美しい自然界とはかけ離れていたからだ。

 どちらかというと、岩石の星であるボール星に似ていた。


「星を間違えたのかな……?」


 とライトサンは不安そうだ。

 しかも、ボール星を出る前、ララから、


「青い星に着いたら、ある人が迎えにきてくれるから、ワタシのメッセージを伝えて」


 と言われていたのに、誰からもコンタクトがない。

 見知らぬ星で、会うはずの人もいなくて、不安でしょうがないのだろう。

 ライトサンの光がどんどん薄くなっていく。

 遂に、不安で泣きだしてしまった。


 そのとき、ワタシには、ララの心の呟きが聞こえてきた。


「ライトサン、ごめんね。ワタシにもわからないの。マリアさんが迎えにきてくれているはずなんだけど、もう少し捜してみて。お願い」


 両親の監視のもと、ララはボール星の自宅から出られない状態だった。

 だから、幼いライトサンにはかわいそうと思いながらも、


「青い星に行き、マリアさんにわたしの願いを伝えて」


 と頼んだのだ。

 案の定、ライトサンの初めてのおつかいは荷が重すぎたと、ララも反省せざるを得ないのだろう。

 こんな最悪な状況など、ララには考えられなかったのだろう。

 マリアさんの方から、


『是非、わたしたちの青い星に来て欲しい。待っているから。わたしにできることがあったら、何でも言って』


 とテレパシーをくれたのに……。

 日時だって、間違いなく教えたのに、どうして……?』


 想定外のことに、ララはどうしていいのかわからなくなった。

 だから、心の中で、ライトサンに謝るしかないのだろう。


 しかし、ワタシに聞こえたララの謝罪も、ライトサンには届かないのだ。

 ワタシは自分に発破をかけたい。

 ここは、ワタシがしっかりしなければならない。

 『青い星の伝説』の守護神なのだから、と。

 よし、と自分に気合いを入れた直後のことだった。

 予期せぬ事態が待っていた。

 突然、見えているものがぼやけ始めたのだ。

 周りの風景もライトサンのも……。

 こんな大事なときに限って、どうしたんだ? と考えた途端、ワタシは気づいた。

 初めてこの星にやってきたボール星のご先祖様たちのことを。

 あのときも、この星に長くはいられなかった。

 ワタシの場合はただの人ではなく神だとしても、意識だけを飛ばしているのだから、これが限界なのか。

 しかし、ライトサンが心配なのにどうしたらいいんだ、と思っていると、突然、誰かの声が聞こえた。


「大丈夫ですか?」


 姿形はぼやけてよくわからない。

 しかし、どこか普通の人とは違う気がした。

 どう表現すればいいのかわからないが、ワタシに似ていると思った。

 雰囲気が、というか、臭いのようなものが……。

 よくわからないが……。


「あッ」


 やっと、ピンときたワタシは、思わず声を上げてしまった。


「もしかしたら、あなたもこの星の伝説を司る守護神ではありませんか?」


 ワタシ自身、何故かわからないが、そう思えてならなかった。


 しかし、彼の答えは無情だった。

 

「いいえ、違います」


「ん~……」


 証拠もないのに、納得いかないワタシは、思わず(うな)ってしまった。

 それでも、無理やり、


「そんなに都合よくいかないか」


 と、自分に言い聞かせようとしているときだった。


(われ)元神(もとかみ)です」


 ……ん?


「モトカミ……?」


 独り言なのか?

 質問しているのか?

 ワタシ自身わからなかった。

 そんなワタシの気持ちを察したのか、彼が話し始めた。


「確かにこの星でも、遠い昔に伝説が創られました。異世界から(ひかり)星人がこの星に来て、多くの愛が生まれたという話です。しかし、この星では随分前に誰も信じなくなり、吾は引退せざるを得なくなりました。あなたは現役のままのようで羨ましいですよ。今の吾はかろうじて信じてもらえる僅かな人のおかげで、と言っても1.5人しかいませんが、なんとか死なずにいられる状態です。ま、風みたいなものです」


 1.5人……?

 どういうことだ……?

 ま、今は考えないことにしよう。


「神でなくても構いません。このライトさんという小さな光を見守っていただけないでしょうか」

「吾には何もできません」

「何もしなくていいんです。ただ見守って頂ければそれでいいんです。あなたから情報が入ればワタシの方で何とかします。 この光の玉を作ったものが、近いうちにこの星に来るはずです。そのときに、この子がどこにいるか教えて欲しいんです」

「……」

「お願いします」

「……」


 思いもしない展開になってしまった。

 果たして、ライトさんの気持ちはいつまで耐えることができるのだろうか?


 そう心配していると、突然ワタシの意識が消えた。

 本当に「プツン」と音が聞こえたのは、なんだったのだろうか?


☆ ☆ ☆ ☆


 再び意識が戻ったとき、ワタシはボール星の実家で横になっていた。

 実家と言っても、普通に見れば、ただの岩の上にしか見えないだろうが……。

 目が覚めた途端、突然体に電流みたいなものが走り、ワタシはハッと飛び起きた。

 青い星での出来事を思い出したからだ。

 最後に会った青い星の元神(もとかみ)は現実だったのか?

 だいたい、元神って何だ?  神が神でなくなれば、消滅するだけではないのか?

 考えれば考えるほど、信じられなくなってきた。


『夢か現か幻か?』


「もし、夢か幻なら、ライトサンはどうなるのだろう? ララの願いが叶う確率は3分の1ということか。それは多い方なのか?」

「バカじゃないのか。半分より下だから、少ないに決まっているだろう」

「そんなことはわかっている。夢が叶う確率として多いのか、少ないのかってことだ。そんなこともわからないのか!」

「嘘つけ。本当はわかっていないくせに……」

 

 ワタシはそんなバカな自問自答を繰り返していた。


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