13.ルイにも異変が……
「お久」
『お久しぶり』の略である。
神がそんな言葉を使っていいのかって?
今の吾は、神は神でも貧乏神だから、怖いものはない。
開き直っているのかって?
全くそのとおりだ。
降格されるにしても、残っているのは、疫病神だけだ。
今となっては、貧乏神より疫病神の方がまだましに思える。
貧乏神は惨めだからなぁ。
早く『光星人の伝説』の守護神に戻りたいものである。
そのためには、“0.5の男”、星野ソラに頑張ってもらわなければならないのだが……。
(“0.5の男”の意味は、『05.プロローグその②』をご覧頂きたい)
ということで、星野ソラの話をしよう。
☆ ☆ ☆ ☆
とっくに、光るクリスタル少女の映像は消えたというのに、ソラはどれくらいの間、壁をじっと見続けていただろう。
確かに、ソラは幼い頃から宇宙人の存在を信じてきた。
しかし、異世界の宇宙人など想像したこともなかった。
ま、自分が宇宙人の血を引き継いでいてほしいと、チラッと考えたことはあるようだが……。
それも幼い頃だけだった。
そんなソラにとって、ララとの会話はあまりの情報の濃さと量にめまいがした。
そのときだった。
あ、とソラは驚いた。
火の玉ライトサンの明かりが消えていることに気づいたからだ。
「もしかしたら死んだのか……?」
ソラが心配して手で触れると、まだ暖かかった。
それに、体の真ん中がゆっくり動いている。
まるで、呼吸しているように。
「眠っているだけなのか」
と、ソラは安心した。
全て夢の中の出来事のようなのに、ソラはまったく信じて疑わなかった。
一番印象に残っているのは、なんと言ってもララの容姿だ。
姿形は地球人にそっくりだが、オレンジ色のクリスタルドールのようで、とても綺麗だった。
体には何も身につけていない。
とは言っても、人間の裸とは違う。
クリスタルの体自体に、胸とお尻の周りに水着のようなものがついている。
つまり、ララの裸自体が人間の女性の水着姿のようなものだ。
「あの水着の部分は取れるのだろうか……」
と思わず考えてしまって、顔が燃えるように熱くなった。
その上、
(確か、従兄弟から結婚できるんだったっけ)
と考えて、バカと叫んだ。
ソラは頭を切り替えることにした。
マリアとララが魔法のテレパシーで話したなど、想像したこともなかった。
(何故、その後マリアはララと交信しなかったのだろう? あれぼどララが迎えに来てくれるのを待っていたのに……)
あ、とソラはやっと気づいた。
もしかしたら、マリアがボケたからか……?
ララのことは覚えていても、その他の記憶が曖昧なのかも知れない。
ということは、マリアはもうララと魔法のテレパシーを使えないことになる。
だとしたら、マリアは当てにはできない。
希望どおり、ララがこの地球に来るためには、マリアの代わりにオレのパワーが必要になると言っていたな。
でも、オレに何ができるだろう……?
第一、オレが全てを知ったのは、ついさっきだ。
何ができるかわかるはずもない。
そこへ突然、ドアをノックする音と、誰かの声が聞こえてきた。
「ソラ、いる……?」
(ルイの声……?)
ソラがドアを開けると、やはりルイが立っていた。
「あのさ……」
いつもの歯切れの良さがない。
「ルイ、どうしたんだ……?」
「自分で言うのもなんだけど、あたし、ちょっと変なのよ」
「変ってなにが……?」
明らかに、ルイは話すことを躊躇っている。
こんな彼女を見るのは初めてだった。
「くよくよ考えても仕方がない。はっきり聞くけど、あんた、ボール星のララと話してた?」
思わず、ソラの息が止まった。
ララとソラとの会話は、2人だけしか知らないはずだ。
なのにどうして……?
「どうなの? はっきりしてよ。あたしだって自分でも信じられないんだから……」
「どうしてわかったんだ?」
「ということは本当なのね」
「うん」
「2人の会話が聞こえたっていうか、感じたのよ。マリアさんのこととか、ララが地球に来たいからあんたの力が必要だとか」
「どうして……?」
ソラは思わず聞き返してしまった。
「こっちが聞きたいわよ!」
まっ、当然だよな、と納得。
「オレにもなにがなんだかわからないんだ。突然だったから」
「それもそうね。ただ、マリアさんが言ってたことは本当だったってことになるよね 」
「そうだな」
「これを見て」
ルイがテレビをつけた。
街灯でインタビュアーが少年少女たちにマイクを向けている。
「あなた方はみんな同じ不思議な体験をしたらしいですね」
「ボール星のララが地球のソラっていう人とテレパシーみたいなもので話していたんだ。ララが地球に行きたいから協力して欲しいって」
「皆さんも同じ夢を見たんですか?」
とインタビュアーが聞く。
「そうそう」
と周りの皆が大合唱。
「でも、友達の中にも同じ体験をした奴としなかった奴がいたんだ。 どうなってるんだろう……?」
「それに、皆さん自身もなにか変化があったそうですね」
「そうなんだ。僕の体が少しだけ浮くようになったんだ 」
「体が浮くってどういうことですか?」
「やってみせるから見ててよ 」
少年がそう言うと、体がそのままの体制で、30cm ほど浮いた。
まったく膝を曲げていないから、ジャンプしたのではない。
しかも、10秒ほど浮き続けた。
オー、と歓声が湧く。
横にいた少年が割って入る。
「僕は少しだけど、軽い物なら手を使わずに持ち上げられるよ」
と言うと、右の掌の上に乗っている中学の学生証を持ち上げた。
勿論、手を使わずに?
「わたしは風を起こせる」
「自分は少しの量なら水を操れる」
「……」
と、言って実践してみせた。
インタビュアーが大げさに言う。
「これは超能力と言っていいのではないでしょうか。実に不思議ですねぇ」
ルイがテレビを消した。
「どうして消すんだよ。何かヒントがあるかもしれないのに ……」
ソラが質問すると、ルイがじっと見返してきた。
「実はあたしも……」
とルイは言って、掌を差し出した。
ルイの掌の上で揺れている、小さな炎。
ソラは驚いたどころではない。
「どういうことだ……?」
ソラが訊くと、ルイは戸惑っていた。
テレビに出ていた少年少女たちとは違い、恐怖の方が強い感じだった。




