11.ライトサンのファインプレー
ライトサンがこのボール星から青い星に旅立って、もう2年以上が経つ。
ボール星にも特有の時間の概念は存在するが、この地球村では青い星の時間帯が使われている。
早いもので、ワタシたちも2年ぶりの再会になるわけだ。
お久しぶり。
ワタシを覚えておられるだろうか?
ワタシはボール星の『青い星の伝説』の守護神である。
思い出して頂けただろうか?
初めての方は、ま、途中からでも聞いて頂きたい。
ライトサンが青い星に着いた日、ワタシの意識も一緒にいた。
そして、嘗て青い星でも存在した『光星人の伝説』の元神と出会った。
意識が朦朧としてきたワタシは、ライトサンの居場所を教えて欲しいと頼んだ。
しかし、一向に連絡は来ず、やはりあれは夢だったのかと諦めかけたときだった。
やっと連絡が来た。
『ライトサンを見つけた』と。
但し、ライトサンが会ったのは、マリアではなく、孫の少年の方だったと言う。
しかも、ララもその少年と、テレパシー越しに話したらしい。
ということで、ライトサンが青い星に着いたところから、ララの記憶を辿ってみよう。
前にも話したように、『青い星の伝説』の守護神であるワタシは、その主人公のララのことならなんでも知ることができるのである。
☆ ☆ ☆ ☆
ララは確かに、ライトサンに、
「青い星に着いたら、マリアさんという人から魔法のメッセージが届くはずだから、その指示に従って」
と伝えた。
それはマリアとの約束だったからだ。
しかし、ライトサンがいくら待っても、マリアからなんのメッセージも届かなかった。
勿論、ララにも連絡がない。
きっと、ライトサンは困ったことだろう。
ライトサンの気持ちがララに伝わってきても、その逆はできないのだ。
ララにはただ、「頑張って」と祈るしかなかった。
ライトサンは自力で、マリアを探し出そうと頑張ってくれた。
そんな時だった。
一瞬だけだが、ライトサンは何かを感じた。
微弱なテレパシーのようなものを。
しかし、その感覚もすぐに消えた。
それから2年後、ライトサンはまたなにかを感じた。
2年前に感じた微弱なテレパシーと同じだった。
またしても微弱だが、今度はすぐに消えることもなく、ライトサンを導いていく。
場所は、青い星でいうところの建物。
つまり、アパートの一室らしい。
ライトサンは迷わず窓から部屋の中に入った。
その中には青い星の少年が立っていた。
が、ライトサンを見て腰をぬかしたようだ。
掌に乗るくらいの小さな自分なのに?
なにが怖いのだろう、とライトサンは笑ってしまったらしい。
だが、すぐに気づいた。
(きっと、この人がマリアだ!)
ライトサンは慌てて、壁にララの映像を映した。
その映像のお陰で、ララはその少年と話すことができる、と喜んだ。
「マリアさんね。そうでしょ。やっと会えたのね。嬉しいわぁぁぁ」
しかし、少年はキョトンとしていた。
なにがなんだかわからない、という感じだ。
よく考えたら、ララはマリアの顔を見たことがなかったのだ。
テレパシーで声を聞いただけだから。
「マリアさんじゃないの……?」
「違うよ。オレは星野ソラ」
(確かに声が違う。じゃ、マリアさんはどこにいるの? どうしてライトサンはここに来たの?)
ララはパニックを起こしていた。
それほど期待が大きすぎたのだろう。
それにしてもおかしい、とワタシは思った。
間違いだとわかったのに、ライトサンはその部屋を出ようとしない。
ララの姿を壁に写したままだ。
ララにはわからない何かを感じているのだろうか?
ララも気づいたようだ。
(ライトサンはどうしちゃったの?)
と、不思議そうだ。
少年がやっと立ち上がった。
そして、ついに口を開いた。
「マリアはオレの祖父だよ」
「あなたのおじいさん?」
「祖父というか、オネェというか、オバァというか……」
ララは魔法の言語翻訳機能が壊れたのかと思ったようだ。
わけがわからない、と表情が語ってた。
「とにかく、あなたはマリアさんではないのね!? 」
「そう。マリアの孫なんだ」
取りあえず、ララはホッとした。
彼がマリアさんでないのは残念だったけど、収穫はあった。
マリアさんは実在しているとわかったから。
だから、ララは落ち着いて、これまでのことを話すことができた。
『青い星の愛の伝説 Part 1・パート2』『ボール星の地球村のこと』。
そして、マリアさんとの魔法のテレパシーによる会話。
続いて、ソラがマリアのことについて話してくれた。
マリアは自分が宇宙人の子孫だと信じていること。
(本当は異世界の宇宙だけどね。)
とララは思ったが、今は話さない方がいいと判断した。
ソラの説明は続く。
マリアはララが自分を迎えにくると信じていること。
もう歳で、ボケていること。
(だから、マリアさんからの魔法のテレパシーが届かなくなったのね。)
とララは納得。
ソラは2年前もライトサンを見たらしい。
そのときになって、ララは確信した。
(2年前、ライトサンが青い星に着いたとき、一度だけテレパシーのようなものを感じたのは、彼のことだったんだ。)
と。
しかし、ソラはその後すぐに引っ越したらしい。
だから、ライトサンはソラに会えなくなったのだろう。
ララはこの少年・星野ソラを信じようと思った。
「わたしね、あなたが住んでいる星に行ってみたいの」
え、とソラは驚いた。
ララは、
(マリアさんの孫だから喜んでくれると思っていたのに、やっぱりダメなのかなぁ。)
と不安になった。
ところが、
「そんなことができるの?」
とソラが瞳を輝かせている。
「マリアさんと約束したのよ。ただ、そのためには、そっちまで導いてくれる強力なパワーが必要なの。それがマリアさんだったんだけど……」
ソラは考え込んでいる。
「オレにはできる自信がない」
と顔に書いている。
ところが一転、あ、とソラがなにか閃いたようだ。
「この光る玉はライトサンって言うんだよね?」
「そうよ」
「このライトサンがいたら、こうやって君と話せるんだよね!?」
「そうだけど……」
「じゃ、君を迎えるためにどうしたらいいか教えてよ。オレ、頑張るからさ」
「ありがとう。わたしも頑張るわ」
その時だった。
「なにやってるんだよ!」
誰かが質問してきた。
詰問する太い声だ。
ララは青い星の住人と会話できたのが嬉しくて油断していた。
今のところ、親や親類しか知らないララの計画だった。
もし、反対派に知られたら、通報され、政府に拘束されるかもしれない。
このまま逮捕されたら、もう2度とチャンスはないだろう。
そして、その声が誰なのか、ララにわからないはずがない。
数えられないほど聞いた声
ララにとって、誰よりも知られたくない人物だった。
「ロロ……」
ララは心の中で呟き、恐怖した。
ロロはララの幼馴染みで、学校では生徒会長だった。
この地球村のトップである彼の父親は、
『ご先祖様たちは青い星の人間に拉致された』
という説まででっち上げ、犯罪者の子孫という自分たちの汚名を晴らす運動の会長も兼任している。
つまり、ララが青い星に行くことを力ずくで阻止する可能性が最も高い人物だった。
ロロ自身も堅物で、どんな理由があろうと法律を破ることを認めないだろう。
だから、ララはいくら幼馴染みでも、ロロには今まで隠してきたのだ。
どう言い訳をしたらいいか、そのときのララには思いつかなかった。




