10.遂にララ登場。しかし、誤解が……
ライトサンの捜しものが、あのマリアとはなぁ。
どう考えても、吾には信じられない。
あ、いや、差別じゃないよ。
差別じゃね。
最近は独り言も難しいよ、まったく……。
とりあえず、ライトサンを探してみたが、見つからなかった。
吾はもう一度、初めから確認してみた。
『青い星の伝説』の守護神はライトサンがマリアを探していると言っていた。
それは間違いない。
それは『オカマバー』のマリアなのか?
あ、確かに、店名はボール星だ。
この店名はマリアが命名したと、ママのお京から聞いた。
しかも、ライトサンを創ったのは、ボール星のララという少女らしいが、そういえば、マリアもその名を何度も叫んでいた。
『ボール星からララが迎えにくる』と。
ん~……。
ここまでくると、違うと言う方が無理な気がするが、どうしても何かが引っかかっている。
その何かがわからないが……。
仕方がない。
今はソラのことに集中しよう。
☆ ☆ ☆ ☆
両親を亡くしたソラが祖父であるマリアと出会って、2年が過ぎた。
立派かどうかはわからないが、高校2年生になった。
『マリア』と『ルイ』は敬称なしに、そのままの名前だけで呼び、ボスこと『オカマバー・ボール星』のママは、お京さんと呼ぶようになっていた。
身長は30㎝近く伸び、体重も25㎏以上増え、随分大人っぽくなった。
2年前、ルイから、
「自分の方から知ろうとしなきゃ、何もわからないんじゃない。それもしないで、誤解して恨むなんて、イジメと同じよ」
と説教されたソラは目が覚めた思いだった。
なにも知ろうとしないくせに、何でもわかっているつもりの自分が、恥ずかしいと思った。
『これから、少しずつ変わっていこう。まずは、祖父のマリアのことを理解することからだ』
2年前のソラは決心したはずだったが、精神的な成長は体ほど容易くないようだ。
ま、確かに精神的にも成長はしているが、体に比べるとかなり緩やかというか、前進と後退を繰り返しながら、結局少しずつ成長しているようだ。
体の成長は後退することがないから、比べるのは可哀相か。
今日は、『オカマバー・ボール星』は休みで、ソラは昼からマリアと大喧嘩をした。
というより、ソラが一方的に怒ったのだ。
休日のマリアはいつも昼まで寝ているから、朝起きたソラは、一人で朝食をとった。
勿論、チンで。
昼になり、マリアが起きてきた。
見るからに絶好調だ。
いつもは死にそうなオネェ、ならぬオバァならぬ、オジィなのに、今日は笑顔たっぷり。
ソラは嫌な予感が走った。
「今日は絶対ボール星のララが近くにいるわ。ララ、わたしはここよぉぉぉ!」
とマリアは大騒ぎ。
ソラは自分でもよくわからないまま、今までの不安が大爆発を起こしたようだった。
ソラもまだ17歳。
マリアがボケたら自分はどうなるのだろうか?
どうやって生きていけばいいのか?
確かに、義務教育は終わり、昔なら働いていたかもしれないが、今の自分が働いて生きていけるなんて考えられない。
マリアが死んだら、自分はこの世でたった一人になってしまう。
そんな不安が常につきまとい、安心できないでいた。
しかし、口に出したら現実になってしまいそうだから、今まではじっと我慢してきたのだ。
しかし、その不安が一気に爆発したのだろう。
「いつまでそんなことを言ってるんだよ。オカマバーの皆だって心配しているだろう。その気持ちがわからないのかよ。それでも自分一人でボール星に行きたいなら、勝手に異世界だろうが、ボール星だろうが、行ってしまえ」
本当は自分でもわかっているはずだった。
マリアは痴呆症、つまり、病気だから仕方ないんだと。
全部自分の身勝手な言い分だと。
不安で、自分にはどうすることもできないから、マリアに頼っていただけだと。
つまり、本当は自分の問題なんだ。
わかっていた。
わかっていたけど、抑えることができなかった。
ソラは思わずアパートの部屋を飛び出した。
怒ったからというより、いたたまれなかったからだ。
自分勝手すぎるとわかっていたから。
どこにも行く当てなどないとわかっていたのに……。
結局、ソラは近くの公園のブランコに座るしかなかった。
ベンチは動けなくて惨めだから、ブランコを漕ぎながら、少しでも体を動かしていたかった。
どうせなら、力が尽きるまで走ればいいのに、そんな根性もない。
ホント情けない、とため息をついた時だった。
目の前に光る玉が見えたような気がした。
何故か直感で、両親が死んだ夜、実家の望遠鏡で見た、あの小さな光る玉を思い出した。
あれからもう、2年が過ぎている。
「まさか……」
と思いながら、どうしても頭から離れなかった。
そのせいなのか、突然帰る気になったソラは、アパートに戻った。
既に、怒りも不安も情けなさも消えていた。
今まで、あんなに苦しんでいたことが嘘のようだ。
アパートの部屋に入ると明かりがついたまま、マリアの姿はなかった。
自分を探しに出たのかもしれないと思うと、ソラは後悔の念が押し寄せてきた。
その時だった。
窓の外に明かりが見えた。
車のライトにしては一定性がなく、ユラユラと揺れているようだ。
(外で、誰かが懐中電灯でも動かしているのかもしれない。誰だろう?)
と窓を開けた途端、何かが飛びこんできた。
虫か……?
それとも小鳥か……?
と思った直ぐあと、光っていたことを思い出した、というより、初めて認識できた感じだ。
一瞬の時間差だった。
「間違いない」
眩しいから、ソラにも簡単に確認できた。
つまり、窓から飛び込んできたのは火の玉だった。
尻餅をついたソラは、驚きのあまり声も出なかった。
ただ、口元がアウアウと動いているだけだ。
(今が夏と言えなくもないが……)
なんて思っている時じゃない。
火の玉といえば、ソラの頭には不吉な予感しか浮かばない。
(もしかして、自分は死ぬのか?)
とソラが思っていると、光がどんどん小さくなっていく。
やがて、ライトブルーのクリスタルの玉とわかるほど、光りは薄くなった。
何が始まるのか、とソラが警戒したときだった。
そのクリスタルの玉から発せられた一筋の光が壁に当たって、段々広がっていく。
「アッ」とソラが驚いた。
その光の輪の中に、クリスタルの人形のような姿が現れたからだ。
しかも、その表情は活き活きしていた。
日本人に似たクリスタルの少女の視線がソラの方に動き、満面の笑顔になった。
遂に、口元までが動く。
「マリアさんね。そうでしょ。やっと会えたのね。嬉しいわぁぁぁ」
ソラの頭は宇宙遊泳している気分だった。




