第54話 わだかまり
突然の襲撃から一転、忠誠を私へと捧げた女騎士リオーナは、意識を失ったリリアナを軽々と負んぶして私たちと屋敷へ戻った。セリーヌさんはその光景に絶句し、慌てながらもロイドさんを呼んだ。
「意識失うって……何があったんですか」
ロイドさんはそうボヤキながらも処置を施した。その甲斐もあってか、数時間後にはリリアナは目を覚ましたのだが、敵であったはずのリオーナさんが居たことでリリアナは私に鋭い視線を向けてくる。
「何が、どうなっている訳? なんでそいつがここに居るのよ!」
「えっと……」
正直、その反応は全くもって当然だ。私がチラッとリオーナを見ると彼女は申し訳なさそうに頭を下げながら微動だにしない。こうなると私が口を開くしかなくなる。
「それはこの人、リオーナさんが私たちの仲間になったから……かな?」
「仲間に……なった? エリカ、あなた正気? 私たちは一歩間違っていたら死んでいたかもしれないのよ――痛っ!」
「あぁ! 大きな声を出すと傷に響きます。横になっていてください、リリアナ様」
「あなたにそんなこと言われなくたってわかっているわよ……」
セリーヌさんに強く当たりながらもリリアナは私を睨みつける。
だけど、このわだかまりを解くにはリオーナさん自身がリリアナを――強いては仲間になろうとしている全員を納得させるだけの理由が必要だ。
「リオーナさん、あの……さっき、私とグーファに『私たちを試した』って言いましたよね? 襲い掛かってきたのもすべてそのためだって」
「っ……はい」
「なら単刀直入に聞きます。その理由を教えてくれませんか?」
「え……理由、ですか?」
「はい。それが分からなかったら何も進まないと思うんです。グーファもリリアナも『殺されかけた』という印象しかないし、もう一人の子も今、ここにいるメイド長のセリーヌさんすらも、リオーナさんに悪い印象を持ったままだと思うんです」
そう私が言うと先程までの強さが消え失せたようにリオーナさんが眉間にしわを寄せる。それでも、私は諭すように言葉を投げかけた。
「別に追い詰めたくて、過去を無理やり聞き出したくて言っているわけじゃありません。わたしは少しでもあなたを理解したい。ですが、私は全員の主です。その答え様によっては――」
「わかりました。そこまで仰るのならお話ししましょう。今から数か月前の話です」
そうして、懐かしむようにリオーナは今までの経緯を語り始めたのだった。




