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転生したアニメオタ破天荒少女と奴隷たちの冒険記  作者: LAST STAR
第6章 魔王軍の侵略

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第53話 乱入者

「よし、正午っと! 第一試験、終了!」


時間を知らせる鐘がフレストに鳴り響く。

結局、私が課した試験をクリアしたのはわずかに5人。それでも想像していたよりも多い気がする。それに、3人はズルをしたのだろう。疲労困憊している様子の人間は2人だけだ。


「さて、次が最後の試験よ。全員、得物は持っているわね?」


こくりと頷いたのを確認して私は5人をフレスト郊外の開けた平地へと案内した。

そして、森の中からグーファが出てきて私の前に立つ。


「なんだ? この小僧は」

「私の大切な仲間の一人。そして、アンタたちを叩きのめす相手でもある」

「は? どういこうとだ?」


鈍い連中に対して私は毅然とした態度で向かい合う。


「最後の試験は、私のグーファに勝つこと。それが合格の条件よ。――まさか、奴隷に負けるなんて無いわよね?」


少し私たちが凄むと全員が後ろ脚を引く。そこからはあまりに簡単な事務作業の如く、グーファがバッタバッタと5人を斬り倒していった。その時間はわずか10分にも満たず、全員が地面にひれ伏していった。


「人の悪口を言うくせに、大した腕も持たないなんて……反吐が出る」

「はーい! グーファ、お疲れ様! ナイスな働きだったよ」


私はグーファをギュッと抱きしめる。みるみる顔が赤くなっていくのが面白いが、あまりやり過ぎるとグーファが拗ねてしまうし、これくらいにしてあげよう。


そんな事を思っていると森の中から清々しい声でリリアナが出てくる。


「あーあー、危ないかもと思って陰で見てたら? なんか損しちゃったわ。誰かさんたちの惚気シーンまで見せられるなんて」

「リリアナ!? いや、別に惚気ていた訳じゃ」

「はいはい、いいから早く屋敷に帰りましょう? 早く起こされ過ぎてまだ、眠いったらありゃしないんだから! ん――?」


リリアナの動きが急にピタリと止まる。そして、周囲を見渡し始める。


「どうした、リリアナ?」

「いや……気のせい? なんか、すごく誰から視線を貰っていたような――まるで、殺気みたいな……」


その刹那、フレストへ繋がる街道から一人の銀髪少女が近づいてくるのが見えた。

その背中には大剣を背負い、鋭い視線でこちらを見据えながら長い髪をひとまとめにしたポニーテルが風で靡く。その雰囲気は一流の女剣士そのもので、青を基調とした騎士の鎧が尋常ではないオーラを放っていた。


「なんかこれ……まずい、よね? グーファ、リリアナ。屋敷まで逃げよう!」

「いいえ、無理です! 来ます!!」


グーファがそう叫んだ瞬間、女剣士は光のような速さで間合いを一気に詰める。

かろうじて、その速度に反応したグーファは私の前で剣を引き抜くが、あまりの斬撃の強さに私もろ共、吹き飛ばされる。


「くっ……グーファ! しっかりして!」


たったの一合でグーファは意識を刈り取られ、ピクリとも動かない。視線を外せばリリアナが窮地に立っていた。それも当然だ。魔術師にとって遠距離からの攻撃は決定的なアドバンテージになるが、それがゼロ距離となれば詠唱に必要な時間を稼ぐことができない。


「<えんそ――」


女剣士は僅か一節の詠唱すら許さず、リリアナを吹き飛ばして意識を刈り取った。

となれば、最後に私を倒しに来る。恐怖に見舞われながらも私はオロオロと立ち上がり、剣を抜く。


必死に鍛錬を続けてきたグーファですら、敵わない相手だ。到底、勝てるとは思えない。それでも、この子たちを見捨てて逃げる訳にはいかない。


「ほぅ? 退かないのか? では、お手合わせ願おうか――!!」

「速いっ!」


あの速さと威力をまともに食らえば、絶対に殺されると思った私は身を翻した。

だが、当の女剣士は私が避けることは想定の範囲内だったのだろう。ギリギリ避け切った剣先と地面がぶつかった瞬間、爆風が吹き荒れ、私は地面に体をぶつけながら吹き飛ばされた。


そして、体を起こそうと見上げてみれば、女騎士が私の鼻先に剣を突きつけており、最後の情けをかけるようにこう問いかける。


「女、言い残すことはあるか?」

「殺す……つもりなんだ?」

「ああ、心配するな。痛みも一瞬だ」

「……。なら、倒れているグーファとリリアナの命だけは助けてあげて。私の大切な仲間だから――」

「仲間……か」


女剣士がそうポソリと言った瞬間だった。意識を失っていたはずのグーファが静かに短剣を握り、背後から斬りかかる。だが、それすらも腰に付けたハンドナイフで女剣士はいとも容易く受け止める。


「あの斬撃を受けて立ち上がるとはいい根性をしているな。騎士道精神に反するが、いい攻撃だ。だが、そこまでする意味が分からんな」

「黙れ! エリカは僕にとって大切な人だ! エリカ!! 逃げろ!!」

「ははっ、大切な人か! それまた、おかしなことを言う!」


起死回生の一撃、いや、逃げる機転を作ってくれた。きっとウェイドやエリックさんならこの化け物染みた女騎士を倒せるはずだ。屋敷まで逃げるしかない。


でも、ここでグーファたちを置いて行ったら死んでしまうかもしれない。

それなら後悔する道だけは、選びたくはなかった。


「ぬわぁあああ!!」

「エリカ!? なんで!」


女剣士は私が突っ込んだことで身を翻して後方へ大きく跳躍した。

畳みかけるなら今しかない。


「いいから! グーファ、行くよ!!」

「はいっ!」


それに勝機がないわけじゃない。さっきの一合で分かったことがある。

この女剣士の一撃は威力が大きいが、所詮は女の子だ。斬撃を叩きこんで攻撃に転じさせなければ負けない。人数優位はこっちにあるのだから――。しかし、それでも女剣士は余裕綽々な様子で少し笑みを見せながら、斬撃を受け続ける。


「馬鹿め、2人で掛かってきたところで結果は変わらないぞ?」


そして、一瞬のスキを突いて私たちを斬撃の間合いから外し、またしても爆風で距離を離される。攻撃がきっと来ると身構えたが、女剣士は大剣の剣先を私たちの方へ向けてくるだけだった。


まるで、もうこれ以上、討ちあう意志はないと言わんばかりのように――。


「……?」

「まさに「どういうつもりだ?」という顔だな?」


女剣士は剣を鞘へと格納し、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。

すかさず、私の前にグーファが出るが、女騎士は鼻で笑う。


「ふっ、目の前に到底、かなわない相手が居ると言うのに引かない度胸には恐れ入る。だが、今は貴様に要はない」

「うるせぇ! お前はエリカを殺すつもりだろ!」

「ははっ! まさか敵と認識している相手を前に剣を一度、仕舞った私が、剣を抜くと思うか? それこそ騎士道精神に反する。――まして、私が『忠誠を注ぐに値する人間』にそんな無礼をすると思うか?」

「冗談を抜かすな! そう言ってだまし討ちをする奴なんて五万とみてきたんだ!」


女剣士の言葉を聞いて未だ、疑心暗鬼ながらも私はグーファの肩に手を置いた。


「グーファ、待って。……この人。もう、本当に戦う意志は無いと思う。あの――私たちに殺す勢いで襲い掛かってきたのは、試したかったからじゃありませんか?」

「……さすがだ。ご名答。私は騎士として仕えるに値する人間を探していたのだ。そして、あなたにお会いできた。今までの非礼はお詫びしよう」


そう言うと女騎士は左ひざを立て、大剣を鞘ごと取り出して私に向けて掲げた。


「クラン『優しき女神』のエリカ、貴殿に絶対なる忠誠を。もし、受け入れてくださるのならばこの剣は御身の為に」


その姿には高貴な騎士道を感じさせる。言葉には一つの濁りすらない。

だけど、疑問は拭いきれない。


「待った。でも、どうして私を?」

「それは奴隷を誰よりも大切に扱っているから。それより他に理由はありません」

「――っ!」


そう言い放ち、こちらを見る目は一直線でその瞳は輝いていた。その表情は追い求めていた場所にたどり着いたような充実した顔だった。


その表情と意志を見せられれば、『信頼に足るものだ』と私の直感が反応する。

でも、これは私だけの問題じゃない。


「グーファはどう思う?」

「……。どうと言われれば信用はできません。僕らに剣を向けたんですから。でも、この人の剣には覚悟がありました。すべてを賭けるくらいの――個人的には納得は出来ませんが、悪くはない話だと思います」


グーファは負けたことにショックを受けているのだろう。それでも剣を直に受け、女騎士が持つ『確かな意志』を感じ取ったらしい。


それならば、私の腹は決まった。

ふぅと私は息を吐いて女騎士を三度、見つめる。


「わかった。あなたを『優しき女神』の一員として受け入れます。ただし、クランへの所属が不適切だと思ったら、すぐに出て行ってもらう。それでいい?」

「はい。承知しました、では、一度剣を手に取って、私にお返しください」

「ん? こう? って、重っ――!」

「ありがとうございます。エリカ様。私のことはリオーナとお呼びください」

「うん……よろしくね? リオーナさん」


鞘を再び背に背負った彼女は私の手が差し出した手を握りしめ、静かに立ち上がった。しかし、この時はまだこの人が抱える事情を私は知る由もなかった。

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