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転生したアニメオタ破天荒少女と奴隷たちの冒険記  作者: LAST STAR
第6章 魔王軍の侵略

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第51話 踊る指揮官

「それで『副団長』、次はどう動く?」


しばらくの間、絶叫を繰り出していた私の肩に手を置いてアルギオンさんは含み笑みを向けてくる。さらに、壇上の下からも視線が一斉に集まり始める。


「もう、諦めろ。確定したことは覆せんぞ? 指示を出せ」


さすがにこの状況では「じゃあ、そういうことで」と逃げられる気はしなかった。

私は半ば、諦めながらクランの配置決めを話し始めた。


「はぁ……わかりました、わかりましたよぉ! では……んんっ、まず大前提としてですが、魔王軍はどこから攻めてくるのか分かりません。なので各クランを街の入り口、4か所に分けます。南はアレスさん率いるクラン『火鉄の柱』。東はナーズさん率いる『連剣隊』、西はルダークさんが率いる『流星軌』。そして残った一か所は私が指揮する『優しき女神』がみます」

「了解だ。じゃあな――」


アレスさんはそれだけ聞くと出て行こうとする。

他のクランと違い、火鉄の柱はアレスさんの言葉だけで一斉に全員が動き出す。さすがに30年というキャリアは伊達じゃない。結束力と実行力を併せ持つ気高きプライドを築き上げているように見えた。


でも、それは逆に『コントロールしやすい』ということを意味している。


「アレスさん、待ってください!」

「なんだ? 俺たちは用意を一時も遅らせたくはないんだ。お前が一秒、俺たちを引き止めるだけで街の一人を失うかも――」


餌にかかったと私は強かに笑みを零す。

転生前の仕事を思い出すように勢いをつける。


「それは分かっています。だからこそ引き止めたんです!」

「なに……?」

「アレスさんたちには今まで培ってきた経験がある。それを利用して通信用の機材を用意してほしいんです。なにせ、街の端から端まで行き来するまでには時間が掛かり過ぎますから」

「そんな通信機材の用意は基本だろ? そこら辺はお前ら防衛隊の長が調達や運用をやるべきで――」

「アレスさん! 今は戦時です。キャリアを持つアレスさんたちでなければ通信機材なんて容易に手に入りません。だから、私はあなたに頼んでいるんです。お願いします」


私は頭をピタッと下げる。その言葉と姿勢にアレスさんは驚いた様に目を見開く。

一度は指揮権争いで負けたはずの人間が懇願する言葉は、受け取る側からすれば『非常に気持ちが良い』はずだ。


「そこまで言うなら仕方ない。それは俺たちが引き受けてやろう。ただし、文句は受け付けないからな?」

「はい。よろしくお願いします!」


アレスさんは強ち満更でもない顔つきでメンバー達とテントを後にしていく。

そして、私は再びテントの中へと視線を向けた。ナーズさんとルダークさんたちへと声を掛ける。


「さて、『連剣隊』の皆さんには避難経路の策定、『流星軌』の皆さんには避難に向けた情報流布と物資の運搬をお願いします」

「我々は雑用か……」


連剣隊のリーダーであるナーズと流星軌のリーダー、ルダークは酷く落ち込んだ表情を見せる。それもそうだろう。あそこまで完膚なきまでアルギオンさんに打ちのめされたのだ。


――となれば、私がやることは背中を押すこと。それしかない。


「いいえ、雑用なんかじゃありません。あの、いけ好かないデクノ坊さんは『たかが、30年』と言いましたが、その知識は絶対に必要です。連剣隊が持つ地理力と流星軌の圧倒的な人海戦術があれば、みんなを安全に逃がしきれます。そうしたら! あの堅物にギャフンと言わせられるんですよ!?」

「お、おう……」

「副団長。さっきからデクノ坊だの、堅物だの、団長としての俺を貶す言葉ばかりじゃないか、《《どうせできんのだから》》無理なことは頼むんじゃない」


アルギオンさんはどうやらこちらの意図に気付いたらしく、背を向けて火に油を注ぐ。すると、分かりやすいことにすぐに燃え上がった。


「上等じゃねぇか! やってやろうぜ、ルダーク!」

「そうですね。このまま隣国のギルマス如きに言われっぱなしも尺ですのでね? 何をやればいいか、指示を」

「まずは――」


そこから私たちは連剣隊に地図を描かせ、ルダークに各地区の人間を寄せ集めた。

万が一、魔王軍が押し寄せて戦いになったら市街戦になることは避けたいのだが、入り口が四か所もあるため、撤退しつつも避難誘導をせざるを得ない可能性が極めて高い。となれば、より正確な地図情報が必要になる。


「いや、ここの道は確かにあるが、資材やらゴミやらで溢れて逃げるには向かない」

「そ、そうなのか? 俺の記憶上ではそこまで悪くなかったと思うが……」

「よし、そこに人を向かわせろ」


地図に自信がある人間でも場所によっては変わっている場所も多い。そうした所は人海戦術で徹底的に確認をしていく。


「やっぱり、ダメだ。狭すぎて無理だったぞ」

「……ちきしょう。うまく行かねぇもんだな」

「ナーズ、確認は任せろ。私たちがタッグを組めば問題ない」

「――おい、持ってきてやったぞ」


そこにドンッと現れたのは『火鉄の柱』のアレスだった。手には無数の無線機と信号弾が入った袋が握られていた。無線機が手に入れば効率がグッと上がる。


「ありがとうございます! アレスさん!」

「フンッ、お安い御用だ」

「ルダークさん、これをつかってください!」


私はルダークに駆け寄って無線機を設営していく。

そんな私を追ってアレスも間に入る。


「貴様らの為に信号弾も手に入れておいた。撤退や作戦開始の為に使うと良い」

「さすが、キャリアは伊達じゃないですね!」

「ああ、さすがとしか言えないですね。これがあれば楽になります。さすが『火鉄のアレス』です」

「こんなの常識だ。常識! もう、おれたちは自分たちのエリアで哨戒に出ている。何か動きがあれば教えよう」

「ありがとうございます」


今の現状で切れるカードは全て切った。順調に事が進みながら一日が暮れていく。

気付けば夜になっていた。数十時間ぶりに腰を椅子に落とした途端、我に返る。


「あ! そうだ! グーファ!?」

「ここです。お疲れ様でした。エリカ」

「ごめん! 完全に集中してて! ……って、なんでみんな――」


気付けばテントの入り口にリリアナとミミの姿もあり、セリーヌさんまで来ていた。正直、いつからいたのか全く見当もつかない。


「はぁ、エリカは馬鹿な訳? 私たちだって無関係じゃないんだから来るでしょう! 普通! それにどっかの誰かさんはいつも無理するでしょう?」

「うっ……」

「リリアナちゃんの言う通りなの! 私だって手伝いくらいできるもん」

「そうですよ? エリカ様。私も頼ってくださいね? まぁ、私は一メイドでしかありませんけど」

「ミミに、セリーヌさんまで……」


私はどこかいたたまれなくなって頭を下げた。


「でも、ごめん。これでまた戦いに巻き込まれることに――」

「馬鹿ね。私たちが魔物如きに後ろ脚を引くとでも? それに魔王軍がここまで来なければいい話じゃない」

「それはそうだけど……」

「ましてや、どっちに転がろうと私たちにとっては色々と理想へ近づくチャンスじゃない。逃す手は無いわ」


リリアナは私に寄り添うように話を進める。それでも、そこには気遣いがある気がしてならない。口を噤んで下に視線を向けているとリリアナが私の肩に手を置いて顔を覗き込む。


「今、また『みんなに怪我をさせたら』とか思ったでしょう?」

「……。」

「はぁ、図星? 馬鹿ね。私たちはグーファの話を聞いて納得しちゃったのよ。守られているだけじゃ何も変えられないってね。だって、おかしい話じゃない。『第二、第三の奴隷の被害者を作りたくない。だから、エリカに変えて』って言っておいて、私たちは安全な檻の中に居る。そんなんで、意識改革なんて無理だって思ったのよ」


リリアナは拳を私の胸下にそっと押し付ける。


「だから、エリカ。恐れないで。あなたの想いだけじゃない。私たち3人の覚悟と願いを背負ってる。つまり、一蓮托生なのよ。エリカがそんなんで、どうするのよ! シャキッとしなさい。シャッキッと!」

「リリアナ……うん、ごめん」

「わかればいいのよ。さぁ、今日はもう遅いし、屋敷に戻るわよ。帰らないって言うなら意地でも引っ張って帰るから」


私が居なかったり、士気が落ちているといつも先陣を切ってくれるリリアナには頭が上がらない。でも、どこか胸の内側に抱えていた不安感も少し安らいで私は帰路へと着いたのだった。


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