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転生したアニメオタ破天荒少女と奴隷たちの冒険記  作者: LAST STAR
第3章 新たな生活と禁断の愛

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第30話 見掛け倒し

「それじゃあ、行くとしようか」


私達はウェイドの私兵に囲まれる形で強制労働所の建物に足を踏み入れる。中は木造の作りになっていて、恐怖を煽る様に無均質な壁の色が続く。ただただ、恐怖感だけが強まっていく。


「……ここは何なの?」

「君が見て判断しろ。エリック、全員の縄を切れ」

「やれやれ……命を狙われたっていうのに能天気な人だ」

「命令に従いたくなかったら従わなくてもいいぞ? ただ――」

「ただ『従わなかったらクビだ』でしょ? はいはい……ほら、動くなよ」


あきれ顔でエリックさんは私たちの縄を切る。それと同時にウェイドの私兵の多くは武器を私たちに返してその場を引き返し始める。それを見るなり、ウェイドはこっちだ、付いてこいと首を振る。


「(一体、どういうつもりなの? 武器を私たちに戻すなんて――)」


私がそう疑問に思った直後、黄色い声が響いた。


「ウェイド先生だぁ!!」

「よう、ヘレナ。元気にしていたか?」

「ずるい、私もナデナデして!」

「ははっ、たく、元気だな、お前らは」


あまりにも緊張していた空気が暖かな声とにぎやかな雰囲気に包まれて消え去っていく。まるで、その関係性は家族の様で――


「エリック先生! 見てくれよ!」

「ん? おお、ついに馬車の模型が出来たのか?」

「そうなんだぜ! それにエリック先生が焚きつけたせいでニックのやつ、街の模型を作ったんだぜ!?」

「おい、わかったから引っ張るな! やれやれ……」


私達は一体、ここで何が起こっているのか理解が追いつかない。そこに女子たちとの話を終えたウェイドが私の横に並ぶ。


「ここが何かわかるか?」

「……。奴隷の収容所か、何か……?」

「ふっ、収容所か。まぁ、そう見えてしまうか。――答えは俺が建てた子どものための孤児院だ」

「孤児院?」

「そうだ、成人――つまり、18歳までの間はここで面倒を見ながら手に職を付けさせる。もちろん、才能ある者は俺の元で働かせるがな」

「じゃあ、さっきの子も――」

「ああ。奴隷を買い漁っているのはこの施設で生活させてやるためだ。……はぁ、こんなことになるなら初めからエリカに説明しておけばよかったよ。これが正真正銘、俺の裏の顔だ。まぁ、結局はこれも無駄になったが、説明をする上では良い機会だったかもな」


そう言うウェイドの手には緑色のガラス瓶が握られていた。それは間違いなく、オルニアスの花から生成した神経鎮静薬だろう。


「でも、どうしてそこまで奴隷に……。あなた達、公爵は薬物で実験したり奴隷を弄んだりする。それが当たり前なんじゃないの?」

「一部の公爵……いや、大半の公爵が権力を振りかざして奴隷をいい様に使っているのは紛れもない事実だ。そこは認めよう。だが、俺は違う」


そう言い切ったウェイドは私の目を見つめる。


「俺はこの社会から奴隷という制度を無くしたい。俺たち公爵という地位や王家の存在は民の献身的な働きがあって成り立ち、それによって国が繁栄していく。それを蔑ろにしているといつかこの国は――亡びる」

「そこまで考えて……」

「まぁ。一様、俺だってこの国を代表する公爵の一人だからな。だから前に君に言っただろう? 俺は俺なりに悩んでいると」


どうやらウェイドは常に先を見通している。フレストの帰路で出会ったのは偶然だったかもしれないが、私にこの景色を見せたのも彼なりの信頼の証だろう。全く知らないで暴走したのは私たちの方だったことを痛感せざる終えなかった。


「その……ごめんなさい。あなたのことを私、そこら辺にいる公爵だと思ってた。そんなに真正面から向き合っていたなんて知らなくて……」

「いいんだ。それが普通の反応だからな」

「その、今更だけど……何か手伝えることがあったら言って? ねぇ、みんな?」


グーファたちも私の意見に賛同するようにはっきりと頷き返す。


「分かった。正直、人手は猫の手も借りたいほど足りて居なくてな。おい、シスター! いるか?」

「はーい、こちらですよ?」


マッタリとした優しい声を響かせながら笑顔を零しながら子どもたちに囲まれて現れたのは修道服に身を包んだ黒髪の女性だった。


「こいつがこの孤児院の施設長。シスター・フェリスだ。フェリス、こいつらに孤児院の仕事をさせてやってほしい」

「初めまして。エリカと言います」

「あら~あなたがエリカさん? お噂はウェイド様から聞いていますよ~? お互い『こいつ』と呼ばれる身としてよろしくお願いしますね~?」

「あっ。いや……俺は――」

「何度もお話しておりますが、女性を呼ぶときは名前で呼ばなくてはなりませんよ~ウェイド様? でないと女神さまに嫌われてしまいますから」


優しい声であるはずなのにどこかトゲのある言葉遣いにウェイドが冷や汗を掻く。

目は確かに笑っているが、言葉が笑っていないとはこの事を言うのだと初めて実感した瞬間だった。


「それで、私たちは何をすれば……?」

「う~ん~そうですねぇ~……。ウェイド様の私兵が付近を哨戒してくれていますし、とりあえずは洗い物に~洋服を畳む作業やお掃除、子どもたちのお相手をしてくれると助かります」

「おい、フェリス! いきなり多すぎないか?」

「それはそのまんま、ウェイド様にお返ししますね~? 追加の人員はいつになったらくるのかしら~」

「ど、努力はしている。だがなぁ……」

「だが、なんでしょう?」

「……その……」


ウェイドがここまで言い負けているのを見るとどうもこのシスターには敵わないらしい。私はそんな様子を見ながらグーファたちに指示を出し、グーファとリリアナには子どもたちの相手を――私とミミ、フェリスさんは掃除などの内職作業に入った。


「それじゃ、やりましょうか~」

「エリカお姉ちゃん……食器洗いって……」

「ミミ、それ以上は言っちゃダメ。あは、あははは……」


そこに並ぶのは皿の山だった。一体、何人をこの孤児院で受け入れているのか分からないほど大量な食器を洗っていく。


「フェリスさん、この孤児院って何人の子どもたちが居るんですか? はい、ミミ」

「う~ん、そうですね~? 100人に届きそうなくらいでしょうか?」

「100人……凄い人数なの。お腹いっぱい食べれるの?」

「それはもう、ご飯はたくさん炊くから問題はないのよ~? ミミちゃん」

「でも、それだけ炊くとなるとご飯を作るのも大変そうですね?」

「ええ……大変も、大変で……。特に食べ盛りの子も多いですし、レパートリーも増やさなくちゃなりませんからね~」


ミミが水分をふき取り、綺麗に並べた皿を棚へとしまい込みながら調理台の掃除をするフェリスはそこまで話してハッとしたのか、慌てて言葉を修正する。


「あっ……ごめんなさいね? 私ったら、愚痴みたいなことを――今まで同僚なんて言える方なんて居なかったのでつい……」

「ま、まさか……掃除も食事もすべて一人でやってるんですか?」

「え? ええ、そうですよ~?」

「あ……」


ミミと私はお互いに目を合わせる。

いくら何でもこの環境を一人で回すなんて無理すぎる。


「あ、あの2つ提案があるんですけど……今日の夕飯は私たち作らせてくれませんか? それとこれからもちょこ、ちょこと手伝いに来てもいいですかね?」

「え、ええ!? ううぅぅっ……!」

「フェリスさん!?」

「っ……ごめんなさい。あまりに嬉しすぎて涙が――もちろん、嬉しい限りです。お願いできるのならば毎日でも構いません。ああ、これも女神さまの思し召しですね」


まるで、天使か神様でも見たかのようにフェリスは祈りをささげるようなポーズを取る。そこまで感謝されるとは思ってもみなかった私たちは思わず、苦笑いを浮かべるのだった。

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