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転生したアニメオタ破天荒少女と奴隷たちの冒険記  作者: LAST STAR
第3章 新たな生活と禁断の愛

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第27話 正統派メイド長のおふざけと提案

「エリカ様? セリーヌです! 朝食の用意ができましたので食堂までお越しください。エリカ様? 聞こえておられますか? 寝ていらっしゃるのかしら――」


そんな声が聞こえた気がした。いや、絶対に聞こえていた。

でも、『私たち』が完全に目覚めたのはそこから一分ほど先のことだった。


「エリカ様、起きてください? 夜遊びがお盛んなことは結構ですけど、もう朝ですよ?」

「ほ、ほぇ? えっ……ええええええ!?」


少しはだけた寝間着に身を纏った私とグーファが一緒のベッドで寝ていた。

もちろん、断じてそんな卑猥なことをしたなんていう記憶はない。最後はソファーで眠くなってお互い寝たはずだ。


「う……ん……エリカ……」

「あらあら! 呼び捨てなんて! 昨日は随分とお楽しみだったんですね?」


セリーヌはまるで水を得た魚の様に手を口に当ててほくそ笑む。


「いや、違いますっ! これは何かの事故で! ちょっとグーファ起きて!!」

「ふふっ、大丈夫です。私は誰にも言ったりしませんから」

「ん……おはようござ――あっ、あ、あ……」


それから私は固まってしまったグーファと共に事情を説明して誤解を解いたのだが、セリーヌは何故か驚くことも無く嬉しそうだった。


「ふふっ! 今日はいい天気になりそうですよ!」

「エリカ様……なんかセリーヌさん、無性に喜んでませんか?」

「うーん、確かに……セリーヌさん? どうしてそんなに喜んでるんです? 普通、私たちみたいな関係の交際を聞いたら『うわっ、マジか』みたいな反応をするんじゃないんですか?」


部屋のカーテンを開けて結ぶセリーヌさんにそう問うと彼女は一瞬、戸惑う。


「それは……まぁ、普通はそうかもしれませんけど……。わたくしにとってはエリカ様は屋敷の主。その交際相手が決まった――それも私の助言で! それは仕えている身としては嬉しいことですから!」

「なるほど? そういうもの、なのかな? ……ううっ、なんか恥ずかしくなってきた」

「さ、お召し物も着替えてしまいましょう!」

「え!? あ、それは自分で!」

「そんな遠慮なさらずに――!」

「きゃああ!? グーファ! あっち向いて!!」

「ひゃ、ひゃい!!」


やっぱり、セリーヌさんは私たちの関係を知って楽しんでいるらしい。

他のメイドたちとはあまり会話をした事はないが、このメイド長――セリーヌさんは差別などは一切しない正統派のメイドだ。私が知る限り、彼女は常に笑顔を忘れず、給仕に徹してくれている。


「これでよし! さぁ、食堂へ向かいましょうか? みなさんお待ちですから」

「むぅ……」

「あはは……エリカ様、災難でしたね」 

「んん……グーファの馬鹿」

「あらら……さすがにやり過ぎてしまいましたでしょうか? エリカ様、申し訳ありませんでした。どうか機嫌を直してくださいませんか?」


セリーヌさんは苦笑いを浮かべたのちに頭を下げた。確かに揶揄われたり、身ぐるみを引っぺがされたりと散々な目に遭って機嫌がすこぶる悪くなったのは事実だけど、私たちの関係を知っても引かない彼女の姿勢に免じて許すことにした。


「別に……。次からはもう少し手加減を覚えて」

「はい。本当に申し訳ありませんでした」

「ん……。というかグーファ? あれだけ練習したのになんでまた『様呼び』になっているのよ?」

「あっ、いや……その……恥ずかしいので。二人っきりの時に使わせてくれませんか……? 二人にバレたらっていうのもあるし……」

「はぁ……分かった、その真っ赤な顔に免じて許してあげる。もう……。でも、ちゃんと二人っきりの時は呼び捨てで呼ぶこと! いい?」

「は、はい……」

「(ったく、本当に可愛いんだから)」


顔を赤くし続けているグーファを見て思わず笑ってしまう。不機嫌な気持ちもどこか吹っ飛んだ気がした。そんな風に思ってしまうのも彼が『私の交際相手』になったからかもしれない。廊下に出た私はカギを掛けてセリーヌの後に続く。


「グーファ、今、ほんの少し考えたんだけど……案外、あの二人ならすんなり私たちの関係を受け入れてくれるかもよ? だって、リリアナはずっと、応援してくれてたんでしょ?」

「それは……そうですけど……。言うんですか? 僕たちのこと……」

「まぁ、言わざる終えないかな。みんな心配しているしね。昨日の夜だって私、お風呂で両サイドから二人に詰め寄られたんだから」

「そんなことがあったんですか?」

「うん。だから話してみよう? グーファは言いずらいだろうし私が――」

「あっ、い、いえ! 僕が……言います! その、エリカの彼氏……ですから」

「ふふっ、さすが男の子。頑張ってね、グーファ!」

「はっ、は、はいっ!」


セリーヌさんにもその声は聞こえているはずだが、何も言わずに私たちを先導する。さすがに今回はわきまえたらしい。その辺から察するにこの道の『プロ』と言った感じがする。


「(まぁ、内心は絶対にほくそ笑んでそうだけど……)」


食堂には着いた頃にはリリアナとミミが席に座っていた。私たちは朝の挨拶を交わして食事を済ませていく。


だけど、そんな私たちをリリアナが見逃すわけがなかった。『なんで朝一緒に来たのか』という些細な糸口からグーファの口を割り、しどろもどろになりながらもグーファは『私との関係』について暴露した。


「やったじゃない! やればできると思ってたのよ! おめでとう、グーファ!」

「あ、ありがとう、リリアナ……でも、まだ正直、夢を見てる気分だよ」

「そりゃあ、当然でしょ? 奴隷とマスターの関係で交際なんて世の中であり得る訳がないんだから。まぁ、ここからが本番よ? 気を抜いたら誰かにエリカをかっさらわれちゃうんだから!」

「エリカお姉ちゃん、エリカお姉ちゃんもおめでとう! やっとお姉ちゃんとグーファは『なんとか』を作れたんだね!」

「え……? ミミ、何とかってなんのこと?」

「あっ……ミミ、ダメ――!」

「ううんと……ね? えっと……きせいじじつ……だっけ?」

「「え……え?」」


ミミはリリアナの方を向いて平然とした顔つきで尋ねる。

そうか、リリアナがミミに悪い情報を教えていた『悪の権化』だったらしい。


「リ、リ、ア、ナ? 何をミミに教えたのか、この後じっーくり聞かせてもらおうかしら?」

「えっ!? あっ、いや、あの……私は……エリカとグーファのためを思って教えただけで……!」

「だからって、そんなことまでミミに教える必要はないだろ? なぁ、リリアナ?」

「グーファまで!? 嫌ああああ~!?」


私とグーファによってコッテリ絞られたリリアナは涙を流す羽目になった。

そして、時間は少し過ぎ去り、お腹もひと段落したところで私は3人を部屋に呼んでこれからの動きについて提案を出した。ただ、私が出した提案と言うのはあまりにも漠然とした理想像に過ぎない。


「奴隷への意識を変える……?」

「しかもよりによって『平等に、幸せ』って……言っていることは素晴らしいと思うわ。でも……エリカ、それはどんな事より難しいことよ。はっきり言ってそんなの夢物語にしかすぎないわ」

「分かってる。でも、そうでもしないと第二、第三のミミが生まれちゃうと思うの。もちろん、中には悪いことをして奴隷になった人もいるのかもしれないけど、だからって……人の命を弄ぶようなことを私は許したくない」


私がそう言い切ると全員が一斉に視線を下げる。沈黙が広がる中、最初に静寂を破ったのはミミだった。


「エリカお姉ちゃん、どうすれば……いいの? どうすれば私みたいな人を助けられるの?」

「それは……。まだわからない。だからみんなと一緒に考えたいの。どうすればいいのかを――」


その時、タイミングを見計らったかのように扉がノックされ、セリーヌさんが紅茶を片手に入ってきた。


「失礼いたします。午前のお茶をお持ちしました」


ティーカップを並べてお茶が注がれる中、私たちの話は何一つ進まず、膠着状態に陥っていく。誰しもがそんな理想を実現することなんて不可能だと思い始めていた。そんな中、セリーヌさんが口を開いた。


「お悩みのご様子なのでおひとつだけお節介――もとい、ご助言をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「え……? もしかしてさっきの聞いていたの?」

「立ち聞きはいけないとも思いましたが、メイド長たる者、屋敷の主が抱える問題も把握しておかなくてはなりませんから」

「……いいよ、参考までに聞かせて」

「はい。では恐れながら進言させていただきます」


そう言ってセリーヌさんはほんの少し頭を下げてからしっかりとした口調で、冷めきった世の中を見るように喋り始めた。


「エリカ様が――エリカ様たちが力を誇示するようになればいいかと」

「力を誇示するって……どういうこと?」

「今の世界情勢において奴隷は流通、建築、娯楽といった多分野での仕事が多く、力を持った者が「仕事をしろ」と命令を下しています。つまり、エリカ様がそれらの命令をしている人間よりも上の立場になればいいのではないでしょうか?」

「つまり、立場の差を利用して思想をねじ伏せるって事? でも、簡単に言うけど……そんなことできると思う?」


私の問いにセリーヌさんは考えを回すように顎に手をあてがう。

そして、ひらためいたように口を開いた。


「時間は掛かるでしょうが、クランを設立して名を上げれば可能かと――」

「クランって……えっーと、人が……その、たくさん集まるって依頼をこなす奴?」


私は思わず、聞きなれた言葉を聞いて「ゲームのチームね」と言いそうになったが、ギリギリのところで口を濁した。


「ええ、ギルド内の制度です。魔物の討伐や街への奉仕活動など様々な目標を掲げて活動する『コミュニティ』と言えばいいでしょうか? それを作って実績を上げれば王家に近づくチャンスもありますし、人数が集まれば政策に圧も掛けられるはずです」

「なるほど、確かにそれなら望みはありそうだけど……エリカ様、どう思いますか?」

「悪くないと思う。きっとチャンスは広がるはずだし」

「ちょ、ちょっと待ちなさい! それ、やり方を間違えると国家反逆罪で捕まって処罰されてもおかしくないわよ!?」


リリアナはセリーヌの意見に真っ向から反発する。でも、この理想を叶えるためには動かなくては何も変わらない。それに表面的には奴隷を連れてゲームの様に『クラン運営』をすればいいだけのことだ。


「セリーヌさん、それってギルドに行けば申請することはできるの?」

「はい、最低でも冒険者カードをもつ冒険者1名の名前があれば可能です」

「ちょっとエリカ!? まさか、本気でやるつもり?」

「うん。だって、他に方法が無いし……」

「だからってそんな無謀な手に出なくても――」

「無謀かどうかはやってみないと分からない。そうじゃない? 今の私たちみたいに」

「あ、うっ……もう! 知らないんだから……!」


そう、私達だって最初は無理に等しい仲をなんやかんやで深めてここまで来ている。

それをリリアナもよく分かっているからそれ以上の反論はしなかった。私たちの次なる目標は『クランの設立』に定まったのだった。

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