勝者こそ正義
DYNAMITE SAGA by Souji Yamato
西暦6月14日(土)ルヴォア伯爵城『大広間』AM10:00――
急ごしらえの玉座には、しぶとく生き残っていた『現伯爵ボドワン』が、図々しく座っていました。また、大広間の入口付近には、令嬢パスカルと戦士カルロが、二人っきりで訪れています。
やがて、パスカルは、ボドワンの近くまで、一人で、歩み寄ります。
ですが、今のところ、ボドワンには、パスカルへの害意も敵意もありません。
こうして、ボドワンと、パスカルによる交渉が始まりました。
まず、ボドワンが、パスカルに告げます。
「私は、魔王アブリールの復活を、引き起こしてしまった。
――しかし、貴方らは、その魔王の討伐を、見事、為し遂げてみせた。
知っての通り、このウディノ帝国では、勝者こそ正義‥‥
私は、自分が、敗者でしかないと、認めることとする」
「潔いですね。では、これより、わたしが、ルヴォア伯爵家の当主です!」
パスカルが、そう宣言しました。
ちなみに、この交渉‥‥すんなりと、進んでいるかのように思えますが、実は、口裏あわせ済みの演技です。
そもそも、貴族の話し合いが、裏工作なしで進むことなど不可能です。
ところが、新伯爵パスカルが、叔父ボドワンに告げます。
「それと、わたしは、貴方を許します」
「なっ、それは、打ち合わせには!」
「お静かに‥‥
――貴方は、統治中、類稀なる才覚を示しました。
だから、わたしの従配偶者になりなさい!
そのために、血の質を、変えてもらいます」
「なんと! それは、喜ばしいのだが、血の質を、変えるなど可能なのか?」
「可能です。それで、カルロさま!」
パスカルが、カルロに合図すると、彼は、大きなオーブンのようなカプセルを、魔法収納から出現させました。
ボドワンが、パスカルに問います。
「あれは?」
「遺伝子更新装置。わたしに、良き子供を、孕ませるための物です」
パスカルは、恥じらいながら、そう答えました。
その後、ボドワンは、素直に、カルロの指示に従い、遺伝子更新装置の中に入り、装置が作動されました。
装置の作動中、パスカルとカルロは、並び立っています。
パスカルが、カルロに問います。
「わたしが、恋や恨みよりも、政治や権力を選ぶ女で、幻滅しましたか?」
「していない。それどころか、強い女性は、大好きだ!」
本音で、カルロは、そう答えました。
しばらく、二人は、さわやかに、笑い合いました。
まもなく、遺伝子更新が終わり、ボドワンが、装置から出て来ました。
ボドワンが、宣言します。
「私は、血を刷新して、貴族の血統とは言えなくなった。
――それと、従配偶者の話は、白紙にして頂きたい。
それでも、私は、伯爵パスカルに、忠誠を誓う。
何故なら、自分の才覚を認められたとき、純粋に嬉しかったからだ!」
そう宣言して、ボドワンは、満面の笑みを浮かべました。
もはや、ボドワンは、伯爵パスカルの忠実なる僕です。
これにて、ルヴォア伯爵領の騒動は、見事、円満解決しました。
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