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第97話 アナスタシアからの提案

第97話 アナスタシアからの提案


ルナ視点

ひとしきりアナスタシアさんから感謝のお礼を言われた後、彼女が少し真剣な表情で声をかけてきました。

「ルナさんってさ、料理全般、得意なんだよね?」

「ええ。この家でご飯の当番を仰せ付かっていますわ」

「ならさ、いろんな料理の作り方を配信で流せばいいんじゃない?」

アナスタシアさんからの提案に私はキョトンとしてしまいました。

配信はいま、レアさんとミカエルさんがやろうとしていることですよね?

わたくし、歌ったりするのは少し恥ずかしいのですが。

そうアナスタシアさんに伝えると、

「そっちの系統じゃなくて、お料理チャンネルをやるのよ。ルナとしても和食がもっと広がってほしいと思わない?」

え?

思いませんが?

わたくしとしては美味しいものを知って欲しいと言うだけなのですが。

「あら、そっちなの?少しズレていたわね」

困らせてしまったようで申し訳ありませんわ。

あら?

ピエールさんからまたコールが…。

「あの、すいません。フランスの方からコールが入ったのですが…」

「そうなの?私はここで話してくれてもいいけど?」

わたくしは少し考え、ピエールさんのコールを一旦切ってメッセージでロシアの友だちの部屋に招待していいかを確認しましたの。

もちろんピエールさんは快諾。

「快諾をもらえましたので、ご招待しますね。話す言葉は英語とフランス語、どちらがいいです?」

「私としてはどっちでもいけるわ!」

でしたらピエールさんに合わせましょう。

ピエールさんにわたくしたちの部屋への招待通知を送ります。

しばらくしたら満面の笑みを浮かべたピエールさんが入室されました。

「ルナさん!アドバイスありがとう!予想以上のものができたよ!後、そちらの方、はじめまして。わたくし、パリでシェフをしておりますピエールといいます。よろしく」

ピエールさんの甘いマスクにアナスタシアさん、顔が真っ赤ですね。

「は、はじめまひて。私、サンクトペテルブルクでパン屋をやっていますアナスタシアと申します」

アナスタシアさん噛んでいるじゃないですか。

ピエールさんも苦笑いですね。

「それで?シアさんとルナさんは何の話を?」

「えっと、私のパン屋が黒字になったお礼とルナさんにお料理配信チャンネルをやらない?という提案をしていました」

まあ、そうですね。

間違ってはいません。

「おお、ルナさんの和食チャンネルですか!?」

「わたくし、和食にこだわりはありませんわ。おいしいものを家族に食べていただきたくて研鑽しているだけですよ」

「真理、ですな。家族においしいものを食べてもらいたいというのは、私としては料理人として最上の真理と考えています」

「でもピエールさん、ルナさんの和食チャンネルですか興味ありません?」

「ぶっちゃけると、めちゃくちゃ興味あります。料理の知見も深いですし、聞いた話だと色んな国の料理を作れるとも。もしやっていただけるのでしたら私も是非見させていただきますよ?」

なんですか?

ピエールさんもアナスタシアさんも拙いわたくしの料理を見たいのですか?

褒められて嬉しいのですが、参考になりますかね?

「「めちゃくちゃなりますし、興味があります!」」

2人揃って言わなくてもいいじゃないですか。

「それに、ルナさんはかなり言語に精通されているようなので、言語学習のチャンネルも面白いかも」

ピエールさん!?

言語学習はわたくしのただの趣味ですよ?

「あー、ルナ。いま何カ国語話せるの?」

「流暢に、となると40でしょうか?」

「…は?」

「嘘はだめだよ?マドモワゼル」

まあ、信じていただけませんわよね。

でしたら、お見せしますわ。


ピエール視点

「うそ…だろ?」

俺は言葉が出なかった。

英語に始まり、フランス語、ラテン語、キリル語とどんどん話していき本当に40カ国語を話しやがった。

普通話せても数カ国語だろ?

それを40も…。

通訳士としても通用するぞ?

しかもこれを趣味の一環と言い張るルナさん。

ヤバすぎるだろ。

俺は正直料理バカだ。

専門学校に行って今のレストランに就職して愚直に努力した結果スーシェフの地位まで上り詰めたくらいだ。

三ツ星が取れたときは大いに喜んだが、そこからが地獄の日々になった。

新しいメニューの開発はどんどんくるし、既存のメニューのブラッシュアップもせよとオーナーから求められるレベルが跳ね上がったんだ。

正直、料理バカの俺でも心が折れかけたんだけど、そんな時に話したのがルナさんだった。

当時はまだたどたどしかったフランス語での会話だったが、彼女の料理に向ける視点が面白く、何度も驚かされた。

彼女には言っていないが、正直、俺にとっておばあちゃんの知恵袋と思わせてもらっている。

そのくらい知識が豊富なんだ。

今回のフルコースのメニューも彼女のアドバイスで、話す前まで行き詰まっていたのが嘘かのようにスムーズに完成したしな。

そんな彼女が料理チャンネルをやるんだったら俺は自分の権限で部下のシェフに見させるね。

そのくらい知識の宝庫なんだ。

いい機会だ。

アナスタシアさんと俺で2人がかりでルナさんを説得しようじゃないか。


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