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第96話 ルナの何気ない日々

第96話 ルナの何気ない日々


ルナ視点

「なるほど。(ジャン)はそのように使うのですね」

「一概に正解はないけどいろいろ試すしかないのが事実なのよね」

中国人のシャオさんに豆板醤や甜麺醤などの使い方を習っています。

もちろん広東語で。

あれからわたくしは世界各国と人に和食を教えたりその国の料理を教えてもらったりしています。

おかげさまで40カ国語をマスターし、世界各国の家庭料理から、国を代表する名物料理まで学んできました。

「というか、ルナの発音ものすごく綺麗なんだけど。あなた、本当にこっちの人なんじゃないの?」

シャオさんが笑いながら言ってきます。

「いえいえ。シャオさんの発音がきれいだからですよ」

「そう?ならいいんだけど。あ、そうだ。和食の作り方教えてくれてありがとね。うちの旦那、旨味の沼に完全にハマったみたいで、最近では自分で出汁を引くようになったわよ?ぶっちゃけこだわりが強すぎて呆れているんだけどね」

「でも、旦那様が引くお出汁が美味しいのでしょう?」

「そうなのよ!だから余計に腹が立つのよ」

シャオさんの旦那さんであるフェイさんは中華料理のシェフなんだそうで、元々は和食を見下していたそうです。

ですが、シャオさんが自前で作った和食を食べ始めたらどんどん痩せて肌艶もかなり良くなったから、フェイさんに何をやったんだと聞いてきて、和食に興味を持ってくださいました。

そこでシャオさんが渾身のだし巻き卵をフェイさんに食べさせたらもう大変。

これまで持っていた和食への偏見が全部崩れ去り、お出汁教の信者になってしまいました。

結果、自分のお店でもお出汁と中華を掛け合わせた料理を出し始めて一気に繁盛店の仲間入り。

今では予約が取れないお店として有名になったそうです。

フェイさんも忙しいようですが、本人曰く、今が一番楽しいとのこと。

先日のシャオさんとのやり取りの時にめちゃくちゃお礼を言われてしまいました。

シャオさんもフェイさんの感謝感激雨あられな対応には苦笑いを浮かべていましたね。

「あ、そろそろ娘が帰ってくるからこのへんで失礼するわね」

「こちらこそ今日は醤の使い方を教えていただきありがとうございました」

わたくしはシャオさんに頭を下げてお礼を伝えました。

これでまたわたくしの実力が上がりましたね。

ふふふ。

あら?

フランスのピエールさんからコールが。

時差は大丈夫でしょうか?

とりあえず出てみましょう。

「ボンソワール、マドモワゼル」

「ピエールさん、どうされました?」

この方はフランスの三ツ星レストランのシェフをされている方です。

わたくしはこの方からフランス語とフランス料理の極意を、わたくしからは和食の基礎と出汁の奥深さ、引き算の美学を教えています。

もちろんフランス語で、です。

たまにイギリスのメアリーが割り込んできてわたくしかピエールを雇おうとしてきます。

悪い方ではないのですが、メアリーさんは諦めが悪いです。

なんか貴族らしく、今度こちらに直々に来てくださるとか。

無駄足にしかならないんですがいいのでしょうか?

「すまない。実はコース料理を考えていて日本料理とフランス料理を融合させようとしているんだが…」

なるほど。

ピエールさんは西洋料理の足し算の美学と和食の引き算の美学でぶつかってしまっているわけですわね。

ならば、

「ピエールさんが今考えているレシピと料理方法を教えてくださいますか?」

「本来であればレシピとかは非公開なのだが、今回は私からの問い合わせだからな。もちろんルナさんにだけ公開しますぞ。」

ふむふむ。

なるほど。

「ピエールさんが悩んでいる所は分かりました。わたくしがやるとしたら、の前提で説明させてください。では…」

わたくしが考えついた方法をピエールさんに説明します。

ピエールさんは聞いているうちにどんどん目を見開いて驚いていますね。

わたくしの案で解決できてよかったですわ。

「さすがルナさんだ!!私でも考えつかなかったアプローチだよ!早速試してみるよ。メルシー、マドモワゼル」

…嵐のように去っていきましたね。

まあ、彼もいい意味での料理バカですからね。

わたくしも先ほどピエールさんに教えてもらったレシピを咀嚼、知識に落とし込んでいきます。

ピエールさんやガルボさんのおかげでわたくし、フランス料理のフルコースまで作れるようになりましたの。

…ただ我が家にある調味料の種類がえげつないことになっています。

はい。

あら?

今度はロシアのアナスタシアさんですね。

「ルナー!!」

「はいはい、アナさん、どうしました?」

「教えてもらったカレーパンをピロシキでやったら大成功だったわ!!サクッという音がするから食べ応えがあるって!」

アナさん、テンション上がっていますねえ。

ロシアのサンクトペテルブルクでパン屋をやっているらしいのですが、閉店間際だったそうです。

それで、たまたまわたくしと通話したときに案が欲しいと言われまして、日本のパンを紹介しました。

こっちのパンは惣菜パンや菓子パンなどかなり種類が多いのでわたくしも作っていて飽きないのです。

それこそ自前でジャムや天然酵母を作ってしまうくらいに。

「ルナが教えてくれた焼きそばパンやじゃがバター、ベーコンエピとかのおかげでやっと黒字になったの。本当に助かったわ!」

「いえいえ、お役に立てて何よりですわ」

「本当は直接会ってお礼を言いたいけどお店もほっとけないしね。だからさ、ルナの時間があるときでいいから遊びに来てよ。」

「ええ、もちろん。タイミングが合えばお伺いしますわ」

「待っているわね。所で、最近そっちに面白そうなパンはない?」

フフフ。

やっぱりアナさんはアナさんですね。

じゃあ抹茶を使ったパンを教えて差し上げますわ。

そのかわりロシアの家庭料理を教えてくださいな。

しかし、世界中の人と話せて、かつそこの国の料理が学べるなんて何の素晴らしい世界なのでしょう。

あなた様が言うには戦争はあちこちで起こっているとのことですが、これはやむなきことなのでしょう。

わたくし達の世界でもエルフドワーフ戦争があまりにも有名ですし、近縁種でもあるダークエルフとの確執でいざこざもありました。

後者はあなた様が仲介してくださいまして、誤解を解いていただいて、最終的には和解することができました。

ほんの些細な思い違いから数百年もの間、争っていたんですからね。

あなた様がわたくし達から経緯を聞いてやぎさんゆうびんの童謡かよとボソッと呟いておりましたね。

あのときはその意味がわかりませんでしたが、こちらに来てその曲を聴いて、わたくしは思わず笑ってしまいましたわ。

だってヤギさんたちがやっていたことがわたくしたちエルフとダークエルフがやっていたことと同じなんですもの。

あなた様も呆れますわよね。

ですが、話し合いで解決できるのが一番ですが、なかなかうまくいかないものです。

種族的に知的と言われている我々エルフでもそうだったのですから。


ヤギさん郵便の同様ですが、幼稚園の子供達が歌うヤギ同士の手紙のあれです。

著作権の関係もあるのでここに歌詞は書けませんが、多分どなたでもわかるかと…(笑)

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