第93話 野球部のお手伝い
第93話 野球部のお手伝い
蒼魔視点
今日は以前、サンとのデート中にBOUNDY 1で会った田辺と渡辺と交わした約束を果たすべく、野球部のもとに来ている。
もちろんサンも一緒だ。
「お兄ちゃん、今日は野球部との練習だよね?」
「だな。たぶんバッティングピッチャーとかになると思うけど」
「思いっきり投げていいの?」
「お前が思いっきり投げたら180kmとか出るんじゃないの?」
「うーん。わかんない!!」
サンらしい回答を満面の笑顔で返してくる。
まぁ、本人が楽しめればいいか。
「あ、サンちゃん」
田辺が気づいたようだ。
「蒼魔くんも暑い中申し訳ないね」
「サンが行きたいって言ったからね。俺は保護者枠?」
「またまた。あのアンダースロー、頼むよ」
「えー」
とまあ軽く挨拶を交わす。
ほかの野球部員は誰だ?みたいになっているけどいいの?
監督やコーチ陣はなんかひそひそ話しているし。
「あー、あれはホントかな?みたいな話をしているみたい。たぶん田辺くんたちの話を聞いたんじゃないかな?」
さすが獣人のサン。
よく聞こえているようで。
「なら、度肝を抜いてやらんとな」
「だね!」
サンと俺は軽くストレッチを行い、体をほぐしていく。
野球道具は渡辺くんが部の備品を貸してくれた。
「サン、軽くキャッチボールでもやろうか」
「はーい」
10メートルほど離れてサンと軽くキャッチボール。
使っている玉の感覚をつかんでいく。
「渡辺くん、キャッチャーミット借りることはできるかな?」
俺の側で俺たちを見ていた渡辺くんに声をかける。
「ちょっと待っていて」
渡辺くんが備品倉庫に向かいキャッチャーミットを持ってくる。
俺は左手にはめて感覚を確かめる。
うん。
なじんだ。
俺はキャッチャーの捕球体勢にはいる。
「サンー、軽く投げてみろ」
「わかったー」
左腕を軽く回しながら返してくる。
さあ、サン。
みんなの度肝を抜いてやろうや。
俺はど真ん中にミットを構える。
サンはゆっくりワインドアップの体勢に入り、片足を上げて体の軸をねじっていく。
俺からはサンの背中とお尻しか見えなくなる。
ぐっと全身のバネを使って踏み込みながら軸を戻す遠心力としならせた左腕をたたき下ろすようにサンが投げ込んでくる。
スパーーーーン!
おー、いい玉が来るやん。
「ナイスピー」
俺は軽くサンにボールを投げ返す。
音が気持ちよかったのかな?
サンのやつニッコニコじゃん。
「もう一球行くよ~」
「はいよ」
俺はサンに返事を返し、ミットをまた真ん中に構える。
サンがまた投げ込んでくる。
うん。
コントロールもバッチリだな。
渡辺視点
サンちゃんが凄いのはわかっていたけど、蒼魔くん、よくあの玉を取れるな…。
あの球威なら後ろに逸らすか弾くかしそうなんだけど。
レギュラーの斎藤さん、取れるかな?と思うくらい玉の切れがいい。
監督やコーチも目を思いっきり開けてサンちゃんを見ていたし。
まあサウスポーのワインドアップトルネードならそうもなるか。
スピードガンは157kmを示している。
サンちゃんは…本気で投げてないね。
まだ顔に余裕があるもん。
ストレートを何球か投げた後、次はフロントドアを投げ始めた。
相変わらずエグい角度で曲がるなぁ。
俺、打てる自信ないんだけど。
うちのスラッガーの高橋くんなんか苦笑いを浮かべているし。
「高橋くん、あれ打てそう?」
「どうだろう?ボックスに立ってないからはっきり言えないけどサンタコ食らう自信がある」
いや、高橋くん、うちの4番じゃん。
まあわからないでもないけど。
「なあ、彼女は球種、どのくらい投げられるんだ?」
「先日のBOUNDY1で聞いた話だけど、握り方が分かれば大体何でも投げられそうって言っていたよ」
「…あの子が女の子で甲子園に出られなくてよかったと心底思うよ」
「正直性別で参加資格をくくるのもどうかと思うよね。あんなの見せられたら」
「敵からしたら悪夢じゃん。どの球種もいけて、あのトルネードから投げ込まれたらイマキュレートイニングもとれるんじゃない?それこそ駒大付属相手でもさ」
「簡単にイメージできるんだけど…」
「だろ?だからよかったんだよ。星華としては何でだ!?って感じだけど」
まあねえ。
とはいえ、蒼魔くんもぶっちゃけヤバいんだよね。
俺たちが話している間に蒼魔くんとサンちゃんは休憩に入ったみたい。
日陰で休んでいるよ。
あ、監督が二人に向かっていった。
バッピでも頼むのかな?




