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第9話 息子の恋人に家庭の味を

相馬の母視点

今の時間は午前5時。

うん。いつも通りね。

私は冷泉氷美香ひみか

普段はニューヨークで国際弁護士をやっている昼ドラ好きの女よ。

元々勉強はできる方だったからチャレンジのつもりでハーバードを受けたら合格しちゃってそのまま弁護士コース。

私としては原告側の主張を論破して悔しそうな顔をしているのを見るのが大好きでね。

ついついドヤ顔で煽っちゃうもんだから弁護士版の川○シェフとか言われているのよね。

不本意だけど、気持ちいいんだから仕方ないじゃない。

っと、少し脱線してしまったわ。

これからルナちゃんと朝ごはん作らなきゃいけないんだったわ。

個人的には楽をして美味しければいいじゃない、をモットーに料理しているから正直に言うとルナちゃんには申し訳ないのよね。

だからきちんと丁寧に教えるつもり。

特にお出汁に興味があるようだからだし巻き卵と、おみそ汁で実践しましょうか。

私がキッチンで材料の準備をしていると、

「おはようございます」

目を輝かせたルナちゃんが起きてきた。

「お母様。よろしくお願いします」

王女様よね?

なんかフンスと鼻息荒いんだけど。

まぁいいわ。

「じゃあ、お出汁の取り方、説明していくわね。」

私は準備していた昆布にハサミで切れ目を入れて鍋に入れ、どうすれば取れるのかをルナちゃんに説明していった。

ルナ視点

衝撃だった。

わたくしたちの世界では厄介者と言われていた植物がお出汁の素材になるなんて思いもしませんでしたわ。

お母様は普通に作業していますし、この邪魔者を使うのも当たり前なのですのね。

お母様の作業を見ていたら、ふとわたくしの魔眼が何かを写しました。

「お母様?もしかしてこの緑の板から何か染み出していますの?」

「そうよー。旨味が出ているのよー」

水に漬け込んでいるだけですわよね?

普通は煮たりして取るのではないのですの?

混乱しているわたくしにお母様は

「昆布だしは本当は半日くらい水に漬け込んでおくのがいいのよ?」

と。

「もちろん、この後ちゃんと煮るから安心して?」

お母様は時計を確認し、ガスコンロ?という器具で温め始めましたの。

「ルナちゃん、お出汁を引くときは焦っちゃだめ。気長に、でも漬けすぎないようにしないといけないの。」

昆布を取り出したお母様はそのままお鍋を煮立たせ、アクを取り始めましたわ。

わたくしの目には鍋の液体の中で何かが踊っているのがわかりますの。

「さあ、仕上げよ。」

お母様はそう言うと、何か木を削ったようなものを取り出し、豪快に鍋のなかに入れましたわ。

木の削りカスを入れるんですの⋯?とわたくしは驚きましたが、お母様にあとで確認したところ本枯節という魚を乾燥させたものを削った食材とのことでしたわ。

「よし、3分経ったわね。」

お母様はそのままざると紙を使って鍋の液体を濾していくとどうでしょう。

無色透明だったお水が琥珀色になっているではありませんか!!

「はい、味見。どうぞ。」

お母様から差し出された小皿に乗ったお出汁をわたくしはゆっくりと口に含みます。

舌の上で転がして味わうと何とも言えない、優しい、だけど懐かしい気持ちになりましたの。

「ルナちゃん、どうだった?」

「お母様、素晴らしいです。これはわたくしに新しい世界を見せてくれそうです」

ああ、もうだめですわ。

あの料理に加えてみたい、あの料理のベースにしたい、このお出汁で煮込んでみたい。

わたくしの中の欲望が止まりませんの。

「その味が旨味、ね。詳しいことは省くけど、イノシン酸やグルタミン酸と言われるものがこの旨味にあたるそうよ」

⋯⋯またわたくしの知らない言葉が出てきましたわ。

でもいいんですの。

わからなければとことん調べる。

それがわたくしのモットーなのですから。

とりあえず、おみそ汁とだし巻き卵は問題なく作れて、あなた様たちからお褒めいただけたことはここに記させていただきますわ。

それにしても、お出汁、発酵、熟成。

ワクワクが止まりませんわ!!

あ、お母様の話だと時間をかけてお出汁を取るとのことでしたので、時間の短縮は時空魔法で解決できそうですわね。

うんうん♪

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