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第70話(閑話8)アポロン、素戔嗚に付き合う

第70話(閑話8)アポロン、素戔嗚(すさのお)に付き合う


アポロン視点

ったく、うちのオヤジは何やってんだよ…。

俺はオヤジのとばっちりの尻拭いで妹のアテナと一緒に高天原団地に来ているんだ。

天照(あまてらす)の姉御は今度オヤジを張り倒しに行くからそれで勘弁してやると言っていたから、おそらくこれでオヤジのやらかしは手打ちになるだろう。

この団地とうちの工業団地が揉めるのは得策じゃないからなぁ。

あとは、月読尊(つくよみ)の姉御が出てこなければいいんだが、あの方は神出鬼没だからな。

素戔嗚が言っていた壁に耳あり障子に目ありを地で行くらしいから俺も気をつけないと。

元高天原愚連隊の総長の相手をするとか死んでもごめんだ。

俺もやんちゃしていたから月読尊の姉御のヤバさは重々認識している。

アテナが持っている鉄壁をほこるイージスが月読尊の姉御の蹴り一撃で簡単に蹴り砕かれたからなぁ。

あれは本当にヤバかった。

まぁそんな姉御が今じゃ酒場の女将だからな。

あのときはこんな風になるなんて想像もしていなかったよ

で、俺は今、何をしているかと言うと、ジャーキーを買いに行っているアテナを待っているのと、素戔嗚の仕事が終わるのを待っているって感じだ。

素戔嗚から、明日休みだから付き合えと言われたから仕方ない。

多分オヤジがやらかした件でストレスが溜まっているんだと思う。

あいつも今じゃ役場の長だからな。

俺は待っている間、目に入った喫茶店のテラス席でお気に入りの煙草を燻らせてコーヒーを片手に時間を潰すことにした。


アテナ視点

うちのパパには本当に呆れる。

酔っ払ってエンジェルファイブの不動のセンターであるミカエルを地上に落とすという愚行をやらかすとは。

密かに私も推していたのだぞ!?

表向きはラファエル推しだが、真の推しはミカエルなのだ。

今度、天照姉がうちに来るみたいだからその時、月読尊の姐さんに来てもらってパパを蹴り飛ばしてもらおうかな。

私のイージスを蹴り砕いたあの蹴りで。

いっそパパのあれを蹴り潰してもらおうかな。

月読尊の姐さんならできそうなんだけさ。

さて、イライラしていてもしょうがない。

私は鏡の前で少し化粧を直し、髪を触ったり、身だしなみを整える。

なぜかって?

これから月読尊の姉さんにあるのにだらしない格好で会うわけにはいかないだろ。

それに素戔嗚様にも会えるんだから、さ。

なんか今日はかなり凹んでいるらしいから慰めて女を見せなくては。

私はフンスと気合を入れて待たせているアポロン兄のところに向かう。

さて、兄様はどこにいるのやら。


アポロン視点

アテナと合流した俺は行きつけの酒処 神の雫に向かっていた。

気合いを入れているアテナを横目に見つつ、な。

素戔嗚が来るから気合を入れているのは分かるが、やる気だけ空回りしていないか?

本人が楽しんでいるので問題はないと思うが。

閑話休題(それはさておき)

神の雫は月読尊の姉御が仕切る居酒屋で、そこそこ人気がある飲み屋だ。

また、ここでは珍しく地上の演歌がよくかかっており、その雰囲気に合わせて酒を楽しむ事ができる。

人間嫌いで有名なベレトやベリアルが演歌に聞き入って、静かにおでんをつついていたのを見た時はさすがの俺も笑ってしまった。

この出来事以降、俺もたまにここには来るようになったのだが、何回か会って杯を交わすたびに仲良くなって、よくおでんや煮込み料理を共に食べる間柄だ。

アテナは悪魔と関わるなんて…とか言っていたが、月読尊の姉御の前で下手なことできねぇよ。

バアルでさえ蹴り飛ばす姉御だぞ?

生命がいくらあっても持たねえよ。

カラカラと小気味のいい音を鳴らして店内にはいる俺とアテナ。

「いらっしゃい」

お、今日はツクヨミの姉御が前に出ているのか。

…なるほど。

ガネーシャ達が来ているのか。

てか、増長天のやつ、何やらかしたんだ?

頭にたんこぶできているじゃないか。

あいつそんなに酒癖悪かったっけか?

「アポロン様とアテナ様、いらっしゃいませ」

うお!?

ゴルゴン三姉妹のメデューサ!?

なんでこんなところにいる!?

え?

出稼ぎ?

なんでこの店に?

あー、能力がここだと無効化されると。

天照の姉さんと月読尊の姉御の結界のせいか。

え?

住んでいるところが工業団地よりこっちが近い?

なるほど。

それならば納得できる。

で、俺たちの席はどこだ?

お、奥の個室か。

わかった。

てかアテナ?

何固まってんだ?

いい加減戻ってこい。


素戔嗚視点

ゼウスのボケナスのせいで余計な仕事が増えちまった。

よりにもよって最上位の熾天使であるミカエルを日本に落としただと?

この話を聞いたときは自分の耳を疑ったよ。

ハデスの叔父貴とか絶対荒れまくっただろうな。

叔父貴最推しのアイドルだしなあ。

はあ。

仕事、つれぇなぁ。

これで家に帰って可愛い嫁さんが待っていてくれれば…。

というか、うちの姉二人を乗りこなせる嫁とかいないだろうな。

それこそ創造神クラスの女神とかじゃないと。

俺には縁遠い話だな。

アポロンたちと待ち合わせている神の雫が見えてきた。

仕方ない。

今日はアポロンと酒を飲んで嫌なことを忘れるとしよう。

俺は店に入り、店員のステンノーに待ち合わせているアポロンの席に案内してもらう。

案内してくれた彼女は三姉妹のうちの末妹とのことだが腕っぷしが強く、よく毘沙門天(びしゃもんてん)武御雷(たけみかづち)とぶつかり稽古をしているらしい。

プライベートなことなのであまり深掘りする気はないがな。

「遅かったな、素戔嗚」

「…お前の親父のせいだろうが」

「うん。わかっていて聞いた」

アポロンのやつ、楽しんでやがるな。

お、今日は妹のアテナも一緒か。

俺はアポロンとアテナの前に腰を下ろす。

スッと店員のエウリュアレが俺等の席にきて、

「注文をお伺いします」

と言ってきた。

「俺とアポロンはエールで、アテナはシャンディガフでいいか?」

「素戔嗚に任せる」

「それで構いません」

チョイスは間違わなかったようだな。

ドガァ!!

…また誰かがこの店で変なことをしてツク姉に蹴り飛ばされたな。

ただの女神と勘違いしたのかね。

ツク姉はあれでもかなり喧嘩慣れしているぞ?

まあ、ご愁傷様、蹴られた人。

頼んだ飲み物が届いたからアポロン達も乾杯を交わす。

人間たちのこの乾杯の文化はいいな。

他の神たちは知らんが、俺は好きだ。

俺とアポロンはエールを一気に飲み干す。

「くあぁ!!効くねえ!!」

「仕事上がりのエールは最高だな!」

俺とアポロンは笑い合う。

気の合う神友と飲む酒はやはり最高だ。

アテナはいつも静かに飲むな。

多分雰囲気を楽しみながら飲むタイプなんだろうな。

酒の楽しみ方は神それぞれだからな。

アテナはベレトたち悪魔を嫌ってはいるが楽しみ方は同じなんだよな。

よく話せば理解し合えると思うのだがな。

アテナ自身が悪を頭から否定する性格だから仕方ないのかもしれないが。

今度俺が間に入って一緒におでんでもつつかせてみるかな?

もしかしたらいい感じに理解し合えるかもな。



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