第7話 旨味という名の衝撃
ルナ視点
わたくしはルナ・シルフィード・ルミナリア。
ルミナリア精霊王国の元第一王女です。
わたくしはすでに王位継承権を放棄し、あなた様の世界に参っているので、今となっては第一王女の肩書も単なる肩書でしかありませんが。
今わたくしはあなた様を共に愛する恋人たちと布団という名の寝具に包まれ床についています。
サン、エルシア、レア。
他の皆さまはすでに寝ておられるようですが、わたくしは旨味という衝撃を受けた手前どうしても目が冴えてなかなか眠れません。
快眠魔法を使うことも考えましたが、わたくしとしてはあの衝撃の余韻を味わいたくて、目が冴えてしまいますの。
⋯⋯我ながら本当に可笑しなものですわね。
「旨味⋯わたくしが知らなかった全く新しい味⋯」
これまでわたくしは皆さまの料理を作っており、おいしく召し上がっていただいていると言う相応の自負がございますの。
もちろん甘味、塩味、酸味、苦味も知っていました。
ですが、旨味という新たな味はこれまでのわたくしの味の価値観全てを完全に壊してしまいました。
あたかも新たな色を見つけてしまった宮廷画家の気分ですわ。
興味が尽きないのですから世界が広がるのも当然ですわ。
それに味の組み合わせが一つ増える、つまりバリエーションがかなり広がるということでもあります。
未知の味に対するわたくしの興味が溢れてどうしようもありません。
しかもお母様の話によると、出汁を取る食材、組み合わせによって味が変わるそうで、わたくし、この時点でまるで未開拓のダンジョンや遺跡を前にしたときのような探求心に包まれております。
胸の高まりはどうしても抑えられませんの。
なので、わたくしの目が冴えて眠れないわけです。
こればかりはわたくしの性分なのでどうにもなりませんわ。
「ふふふ⋯⋯」
ああ、あなた様の家庭の味を教えていただけるという幸せ、新たなる味の探求。
もうこれだけでわたくしは興奮してしまいます。
それにあなた様の横で腕に抱かれて眠れるだけでも、わたくしの胸は温かくなってしまいます。
ただ、このまま衝撃の余韻に浸るのも悪くはないのですが、寝不足のままで母上様に伝授いただくのも申し訳ありませんね。
「安らかなる安眠を⋯スリープ」
わたくしは自分に快眠魔法をかけ、明日の修行に備えることにします。
皆さま、いい夢を。
おやすみなさいませ。




