第14話 納豆狂騒曲
昨日の大洋の寿司は美味かったな。
7年ぶりの中落ちの漬とかもう最高かよ。
俺は朝の歯磨きをしながら昨日の味を思い出していた。
レア達もあのあと自分で頼んでいたし、ルナのやつはまた新しい扉を開いたみたいだし。
今夜の夕食から楽しみだな。
とはいえ日本の食材で作ったエルフ料理にも興味あるんだよなぁ
どんな魔改造をされるのか気になって仕方ない。
まぁ、この辺はルナに相談か。
歯磨きを終えて食堂に向かうと俺以外は起きており、待っていたようだ。
「みんな、おはよう」
「「「「「「おはよう(ございますわ)」」」」」」
椅子に座る俺。
そして目に留まるあの白い容器。
お袋?コイツラ納豆知らないよ?
大丈夫?
かなりきついよ?
とはいえ俺も納豆は大好物なのでどんな反応をするか楽しみだ。
「さあ、レアちゃん、ルナちゃん、サンちゃん、エルシアちゃん、今日はいろんな意味で和食最強のスーパーフードを出すわね。じゃーん」
おふくろは満面の笑顔で納豆を開封する。
あ、やっぱりみんな固まったわ。
てか親父?
なんでそんなに無関心なんだよ?
黙々と朝飯食っているよ。
保存用フィルムを外すと食堂は案の定地獄絵図になる。
普通に考えれば糸を引く=腐敗が進んだもの、だからな。
さすがのサンも青ざめているか。
とりあえず俺は黙って混ぜ混ぜ。
この混ぜるときが楽しいんだよなぁ。
てかエルシア?
泣きそうな顔でこっち見んな。
レアに至ってはくっころ騎士になってんぞ?
そろそろ助け舟、出してやるか。
「なあ、レア」
「な、何だ?主よ?我はこの謎物体を食べねばならんのかと葛藤しているのだが?」
「レアはいろんなチーズ、食べていたよな?」
「む?確かにチーズは好きだが。それがこの謎物体とどう繋がるのだ?」
「それはな、使っているものは違えど、製法は似たようなもんだぞ?」
「何を言っている、主よ。同じなわけあるまい。チーズは糸なんざひいておらぬぞ。」
「あら、レアちゃん。乳酸菌と納豆菌、牛乳と大豆の違いはあっても同じ発酵食品よ?」
おふくろの言葉でレア、固まっちゃった。
むしろルナが興味津々になっているのがわかる。
「サンちゃん」
おもむろに口を開く親父。
一体何を言う気だ?
「納豆ってのはな?混ぜれば混ぜるほどおいしくなるんだ」
親父!あかん!
それ絶対サンに言っちゃいけないやつ!!
ほら!サンが考えなしに混ぜ出しちゃったじゃん!!
親父、ドヤ顔すんな!
川○シェフかよ!
てか、サンの納豆すっげぇ泡!!
食べるのは豆の方だからな!?
親父、わしが育てたみたいなやったった感出すんじゃない!!
「匂い変だけど、なんか面白い食べ物だね、お兄ちゃん」
サンは手を止めてカラシを入れようとしているけど注意しろよ?
あ、やりやがった!
全部入れちまったぞ?
…さてどうなる?
ルナは、とりあえず食べて納豆の旨味を噛み締めているか。
旨味成分すごいからな。
で、エルシアは頭を抱えているか。
「うう、辛いよう。でもおいしいから止まんない」
サンはやっぱり泣いたか。
辛いの苦手だもんな。
ほれ、大丈夫か?
なでなで、なでなで。
ぐしぐし泣きながらも完食したな。
で、その満面の笑み、やめなさい!!
まあサンらしいと言えばサンらしいが。
ルナは黙々と食べて落とし込んでいるな。
流石だ。
「納豆も発酵、麹も発酵、チーズも…。奥が深いですわね。」
うん、とりあえずルナは放っておこう。
こういう時のルナは何も聞こえないからな。
しゃーない、しゃーない。
レアは
「これは新たな精神攻撃に対する鍛錬か?」
「主殿、この食べ物は味方なのか?敵なのか?しかし母上殿が敵になるような食材は出さぬはず」
「なぜ糸が切れぬ!!え?箸で巻く?そんな技知らんぞ!!」
「これは修行、これは修行……」
「いじめか?主殿と戦ったとき以上に精神的に参るぞ?」
レアさん?
何一人で盛り上がっているんです?
しかも思いっきり戦士の顔になった後でその気が抜けた顔はないやろ?
昨日のなめこ汁リターンかよ。
がっつきすぎて笑えるわ。
で、エルシアなんだが…
「こればっかりはダーリンが言っても食べないから」
「こんなの食べるくらいなら溶解スライム風呂に入って恥をかいたほうがまだましだわ。」
「これはダーリンの罠よね?絶対そうよね?」
なんかブツブツ言っているよ。
いや、恨みがましくこっちを見んな。
「エルシアちゃん?苦手?こういう食べ物」
「ママ上〜。腐ったものはさすがに食べられないよ〜」
「あらあら」
なんでお袋、こっち見るんすかね?
納豆の効果について説明しろって?
はあ、愛するエルシアのためだ。
より綺麗に美しくなってくれるように説明するか。
「なあエルシア」
「何?ダーリン」
「食事の前に、お袋がスーパーフード、って言ってたの覚えているな?」
「確かに言っていたけど」
「これな、ビタミンB2とDっていう栄養があるんだけど、皮膚の抗酸化を抑えて、更に皮膚の再生を助けてくれるのよ。」
エルシアがピクリと反応する。
エルシアって美容に関すること、好きだからなぁ。
悪いけど利用させてもらうよ。
「更に大豆イソフラボンが女性ホルモンを調整し、納豆菌が腸内を整えて美肌のバフをかけてくれるんだ」
「しかもナットウキナーゼが血流を良くするってことは、エルシア、どうなる?」
「化粧ののりが間違いなく良くなるわね」
「まだあるぞ。たんぱく質とビタミンB群の影響で髪にもいいときた。」
「…………」
「ま、エルシアが食べないって言うなら、俺が食べるけど…?」
「…上等じゃない」
「ん?」
「要はあーしにとっていいことしかない食材なんでしょ?だったら薬と思って食べればいいだけの話よ!」
エルシアは手早く納豆を混ぜ白米に乗せ食べ始めた。
「あら、意外とイケるわね」
モグモグするエルシア。
あっという間に食べきって自分の舌で唇をぺろり。
うわエッロ。
「うん。これなら最高の食材になるわね。毎日でもいけそうだわ」
エルシアも満足げだな。
とりあえず納豆克服できてよかった。
てかルナ?
糸を調べて何している?
出汁に入っていた『あれ』がある?
旨味か?
納豆を作ってみたい?
いやあれ結構手間かかるぞ?
魔法でなんとかする?
まあ、ルナらしいっちゃルナらしいが。
パト○ッシュ、俺もう疲れたよ。
俺、頑張ったよね?
朝飯食っただけだぞ?
もっかい寝てもいいかな?
ほんとこのあとの今日一日どうなるんだこれ?




