表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/27

第12話 生食文化と職人本気の出汁

とりあえず注文を終えた俺たちは頼んだ寿司が来るまで待つことにした。

「皆さん、この畳文化はどうですか?これも日本文化の一つですよ?」

お袋が恋人たちに畳を紹介する。

い草の匂いがするから変えたばかりかもな。

やっぱりこの香りは落ち着くな。

我が家に帰ってきたと改めて実感する。

異世界は土やら石やらでできた床ばかりだったからな。

この柔らかさが懐かしかったんだよな。

「ふむ。慣れれば姿勢がいい座り方ができそうだ。」

レアはそうくるか。

生臭い匂いにも慣れたのか眉間のシワはなくなっているな。

「あーしはこの座布団、好きよ。お尻をそっと守ってくれている感じがするわ」

エルシアは体型に拘る感想か。

「ボクはこの匂い好きかなぁ。日向でこの匂いをかぎながらお昼寝したいかも」

サンは通常運転、と。

「ここにもマナが……この国はマナと共にある国なのですね。素晴らしいですわ」

ルナらしいな。

他の三人よりマナの感受性が高いが故の感想だな。

みんな気に入って何より。

「お待たせしやした」

大洋の大将が注文した寿司を持ってきた。

「蒼一郎のダンナ、お久しぶりで」

「相変わらずすごい人気だね」

「いやー、お客様のおかげですわ」

豪快な笑い声を上げる対象と苦笑いのオヤジ。

真反対なのに馬が合うみたいなんだよな。

オヤジ、あまり笑わないけどこんな笑い声だったな。

まあ大将の笑い声はやかましいだけだけど。

大将は持ってきた寿司を机に並べながら

「こちらからウニ、大トロ、サーモン、真鯛、甘エビ、アワビ、ホタテでございやす。一人一貫ずつお召し上がりくだせぇ。」

「大将、ありがとう。」

「で、こちらが蒼魔坊っちゃんの大好きなクロマグロの中落ちの漬になりやす」

俺の目の前に出される中落ち。

きたきた、早く食べてぇ!!

「では、ごゆっくりどうぞ。」

大将が座敷から下がる。

親父が、さあ食べるぞ!という掛け声を聞くやいなや中落ちの漬に食いつく。

くぅぅぅぅ、美味え!!

7年ぶりというのもあるがこの味は本当にたまらん!!

あっちではどうやっても刺し身とか食えなかったからな。

これを食べたら本当に日本に帰ってこれたんだと実感するね。

日本ってほんと美食の国だわ。

ルナの料理もうまいが心に染みるのはやっぱり和食だわ。

うん、まだ満足できねぇ。

あとでもう一杯お変わりしよう。

うん。そうしよう。

しかしこんなに美味いものを食っているのに酒が飲めないのは本当に辛い。

エルシア、ルナ、レアはいいなぁ

飲めるようになるまであと四年かあ。

先は長いな…。

さて、俺の愛しい恋人たちはこの寿司をどう感じるかな?

感動してくれると嬉しいな。

レアはどんな反応をするかな?

エルシアは間違いなく驚くぞ?

サンは、まあ通常運転でしょう。

うん。

ルナ視点

お父様、お母様、あなた様は食べ始めたのですが、わたくし達は戸惑ったままです。

だって生、ですよ?

普通に考えて危ないと思うのが普通ですわ?

怖いもの知らずのサンも困っていますわ。

「かぁぁぁぁ!やっぱ美味え!!」

あなた様が見たこともないほど緩みきった顔で叫ぶものですからわたくしたちもびっくりしてしまいました。

でもその笑顔でわたくしの心は満たされてしまいます。

わたくしはなんと幸せなのでしょうか。

この思いを存分にかみしめましょう。

「ん?食べないのか?」

「え?ダーリン正気?これ、生でしょ?」

「このまま食べたらお腹壊しちゃうよー」

あなた様が心配してくれたようですが、エルシアもサンも『生』で食べるという事実が心配で怖いのですね。

「くっこれも試練よ!!」

レアは武人らしくいくようですね。

あ、食べましたわ。

あら、目を見開いて驚いていますね。

「む、これは…なるほど。」

レアは何か納得できたようですね。

今度は小さな赤い宝玉のようなものが乗ったものに行くのですね。

「これは、口の中が楽しいな、主よ。」「父殿、母殿、これは美味いぞ。」

レアにしては珍しく笑顔ですね。

私、サン、エルシアは顔を見合わせ覚悟を決め、わたくしはオレンジ色の何かが乗っているものを口へ運びました。

「おーいしーーー!!」

「なにこれ?うま!!」

サンは快哉を挙げ、エルシアは想像以上の味に絶句していますね。

かくいうわたくしも言葉が見つかりません。

ただ素材を切っただけ。

素材そのものが持つポテンシャル。

魚独自の脂の甘味。

そしてあとから付いてくる旨味。

もう脱帽です。

次に私はアワビと言われたものを食べました。

コリコリとした食感とつよい歯ごたえ。

キラーシェルにも劣らない弾力と歯ごたえ、ですが旨味はキラーシェルの上をいきます。

ああ、語彙が溶けて何も言えません。

「ダーリンの国の食事、正直舐めていたわ。なんなのよこのレベル…」

さすがのエルシアも脱帽といったところでしょうか。

あら、お父様がお酒を頼んでくれたのですね。

え?お寿司と一緒に?

わかりましたわ。

ウニと言われたものを食べ、一口お酒を含むと、爆発。

そう。

今のわたくしでは味覚の爆発としか言い表せません。

レアもエルシアも絶句していますね。

この二人はそれなりにいいものを飲んでいるはずですのにその顔、ということは私と同じ考えのようです。

ええ。

私たちの世界のお酒より美味いということです。

あ、あなた様?

一緒に飲みませんの?

え?

法で禁じられている?

あなた様、23歳ですよね?

あー⋯肉体的年齢ですか。

それは、諦めるしかなさそうですね。

あとであなた様をよしよしして慰めてあげましょう。

そういえば、お母様がアラ汁というのを頼んでくれていましたわね。

汁というのですからおみそ汁のようなものでしょうか。

蓋を取った私は絶句しました。

昨日頑張って取ったお出汁以上に『あれ』が入っていますの!

それも溢れんばかり!

私は怖くなりつつもアラ汁を口に運びます。

一口。

ああ、またわたくしの世界が塗り替えられていく。

これがお出汁の最上位と思って良さそうです。

何も知らなければ私は気絶していたでしょう。

わたくしもいつか、この頂まで登りつめてやりますわ!

こればかりはお母様に感謝ですわね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ