第117話 エルシアの水着と蒼魔の操縦法
第117話 エルシアの水着と蒼魔の操縦法
鬼藤視点
初の雑誌刊行、タウン誌だったのに30万部を叩き出したシアさん。
売れるとは思っていたけど、まさかここまで爆発力があるとは。
私の目もまだまだってことね。
あのあと、シアさんと話したけど、いろんなメイク方法を勉強しているから何でも来いという頼もしい宣言までいただいた。
試しに少しクラシックメイクをお願いしたところ、ヤバいってものじゃなかった。
ハリウッドで主役を張っていてもおかしくないレベルで仕上げてくるんだもの。
こんな逸材、今後出てこないんじゃないかしら。
ギャルもいける、ナチュラルもいける、ゴスロリも地雷もいける。
とある界隈で言われているモデルジョーカーの異名も分からなくはない。
私はそこまで考えて受話器を取る。
シアさんのスマホの番号を押していき、彼女が出るまで待つ。
「ほいほーい、鬼藤ちゃんどしたのー?」
相変わらずのフランクさに笑ってしまう。
「シアさん、お仕事が入りました。ただ、契約に抵触しそうだったから事前に相談をと思いまして」
丁寧に申し入れる。
下手にシアさんの機嫌を損ねる必要もないからね。
「んー?どんなの?」
「沖縄の海で水着の撮影なんです」
「うーん。水着かぁ。あーしの下腹部のペイントが引っかかるんじゃないの?」
…さすが。
そこにまで気を回していただけるとは。
「あり得ない話ではないですね」
「でしょ?事務所的にいいの?あーしはダーリンがいいって言えば問題ないんだけど」
さて、どうしたものか。
「ちなみに、撮影の時だけコンシーラーで隠す、というのは?」
「んー、これを含めてあーしだからなぁ」
ですよねー。
シアさんは基本蒼魔くん優先主義。
彼氏さえ納得させればいいとも思っていたけど、シアさんのあのペイントは見る人が見れば〝あの〟紋とわかる。
過激な審査員が食いつかなきゃいいんだけど…。
「鬼藤ちゃん、社長はなんて言っているの?」
「社長はシアさんの好きにさせろと。規制されてもそれはそれで伝説になるって言っています」
「あはははは。社長らしいね。どうしようかなぁ」
後ろから蒼魔くんの声が聞こえる。
何か話している。
「ダーリンが少しヤキモチ妬いてる」
いや、シアさん、それ大事なところ。
「シアさん、発想を変えさせてください。シアさんの彼氏はこんなにかっこいいんだって見せつけたいって」
「鬼藤ちゃん、それいただき」
うわ。
シアさんの甘え声ヤバ!!
私、多分受話器持ったまま顔が赤くなっている自覚あるわ。
あ、そうだ。
ここで畳み掛けよう。
「シアさん、ご自慢の彼氏と一緒に水着撮影、どうでしょう」
「マジ!?」
「元々社長は蒼魔くんを誘おうとしています。顔バレNGで一緒に沖縄で…どうです?」
「鬼藤ちゃん、やばいよ。あーしのバイブスぶち上げよ?」
「ここからはシアさんの仕事です。いい結果お待ちしています」
「まっかせてー。ダーリーン」
ツー、ツー、ツー。
ほんと勢いがすごいわ。
だけどシアさんのやり方次第で蒼魔くんをこっちの世界に引き込める。
一回でも引き込んでしまえば嫌でも噂は立つわ。
ただ悩ましいのは、蒼魔くんは関係が不要と判断したら冷徹に切り捨ててくること。
そこだけは注意しないとね。
特にこの業界の古狸ほど権力を持っていると過信する。
うちの事務所は社長が目を光らせているからないけど、枕だって当たり前にある。
シアさんのスタイルなら間違いなく勘違いした古狸が寄ってくるわ。
…こればかりは蒼魔くんにお願いするしかないわね。
古狸たちも事が表に出るのを嫌うはず。
そこが落としどころね。
蒼魔くんが引いている赤線を飛び越えたバカなんて知ったことではないわ。
まあ、そうなったら確実に地獄を見ることになるでしょうけど、ね。
蒼魔視点
沖縄、ねえ。
確かに今は夏休みだし行けなくはない。
しかも、費用も向こう持ちと来た。
これは勝手に決めたら揉める元になるな。
レア達に話したほうがまとまるかもしれない。
そう思った俺は夕食の時間にみんなに聞いてみることにした。
「ふむ。いいではないか」
あっさり認めるレア。
普通ついていくぞ、とか言いそうなんだけど。
「いや、配信の下準備や、資金の調達があってな。その関係で我、ミカエル殿、ルナ殿は不参加になる」
「そっか。まあ、無理はしないように」
「心配無用。主殿の世界をひっくり返そうなどとは思っておらん。ただ、ちょっとばかりいたずらはさせてもらうがな」
まあ、やりすぎないでよ?
サンはどうする?
「ボクは野球部のお手伝いかな。監督さんからご飯を報酬にお願いされたんだ」
監督(笑)。
サンを餌で釣らないでください(笑)。
まあ、財布が死ぬ目に遭うからご愁傷さま、なんだけど。
親父とお袋はどうする?
「エルシアちゃんとのデート、楽しんでください。ただし、ちゃんとあれはつけるのよ?」
思わずお茶を吹き出す俺。
みんなの前でいうか!?
いや、避妊魔法使っているから問題ないんだけど…。
「あら、そうなの?なら絶対できないのね?」
それはない。
向こうの世界で貴族の常識だったし。
「ふーん。便利ねぇ」
お母様…?
そこで女の顔になって親父を見ないでもらえます?
エルシア笑っているじゃん。
そもそも誰に頼む気よ!?
まあ、いいや。
とりあえず、俺とエルシアの二人だけ、か。
なら楽しませてもらおうかな。
氷美香視点
ふーん。
蒼魔ったらやることやってんのねぇ。
しかも避妊100%とかずるくない?
異世界に行った人の特典なのかな。
でも、こっちの世界では広まらないでほしいわ。
托卵で修羅場になるところ見れなくなるわ。
あの修羅場が見たくて離婚専門の弁護士になったわけだし。
もちろん債務整理とか特許関係も受けるわよ?
だけど一番楽しいのはあのドロッドロの修羅場なのよね。
だってあたし、蚊帳の外だし。
でも見ていて勉強にもなる。
何がきっかけで加害者が浮気に走るのか、不倫に走るのか傾向がわかるから。
だからあたしたちの間ではそういう問題が出ないようにしている。
家庭の不和になる原因なんて掃いて捨てるようにあるからね。
注意することに越したことはないわ。
まあ、なかなか行けるところではないから蒼魔とエルシアちゃんで沖縄を満喫してきなさい。
紫外線も強いから日焼け対策をしっかりね。
あとエルシアちゃん。
蒼魔ちゃんが燃えるからってわざと水着の跡、残したら駄目だからね?
わかってる?
てなわけで、エルシアと蒼魔の二人で沖縄に行くことになりました。
夏場の沖縄って相当暑いイメージあるんですけど実際のところどうなんでしょうかね?
関東と沖縄では熱さの種類が違うのかもしれませんね。
ジリジリとした熱さなのかムワッとしたような暑さなのか…。
とりあえず沖縄編続きます。




