第116話 レアの悩み
第116話 レアの悩み
レア視点
今日は疲れたな。
我の我儘に家族を突き合わせることにはなってしまったが、皆満足はしてくれたようだ。
我は自室でベッドに寝転んで今日のことを思い返していた。
ただ、ここからが問題なのだ。
いかんせんピアノを買うためにかかる費用が高すぎるのだ。
主殿がこちらの世界に持ち込んだ財宝を換金した額から見れば些細なことだろう。
しかし、我の我儘でその資産を使うのは違うと思う。
にも関わらず、今日、弾きに行ったピアノが頭から離れないのだ。
フッと笑い、思う。
我はいつの間にここまで俗物に成り下がったのか、と。
魔王軍の将軍であった頃は自分を律し、自他ともに厳しくできていたと思う。
しかし、主殿に懸想してからはどんどん自分に甘くなっている気がしてならない。
もちろんエルシアに比べれば律している自覚はある。
だが、過去と比べると…はあ。
もやもやする。
しかたない。
ルナ殿に相談してみよう。
あの人は仲間でありながら、我らの母のような存在だ。
何かしら良案をくれるかもしれない。
そう思って話したのだが…。
「貴方様から聞きましたが、こちらの世界ではお馬さんで稼ぐことができると聞きました」
こう言われた時は頭が痛くなった。
確かにエルシアから聞いていた。
ルナ殿が生粋のギャンブラーであると。
ただ、博才はなく、下手の横好きとのこと。
一度パーティーの資金を溶かしかけて、主殿からこっぴどく叱られたとは聞いている。
なのにまだそんな夢物語を語るとは思わなかった。
「ルナ殿、流石に我の楽器の資金を賭博で稼いだとなると後ろめたくてたまらんのだが」
「そうですか?何事も結果論と思うのですが」
あ~もう!!
こういう時にエルフの合理主義が顔を出すのが厄介極まりない。
言っていることはわかる。
しかし資産を溶かしてまでやることではないと言っているのだ!
「そうですか」
まだ不満そうだな。
主殿が言っていたがギャンブル依存症なるものにかかっておるのではないだろうか?
優秀なエルフの姫君で、我らの世界で図抜けている大賢者なのにギャンブラーとは…。
これに関しては主殿が謝っていた。
とある町のカジノで、スロットで大当たりしてしまい、その時の換金の音で脳がやられたとのこと。
いや、わからんでもないぞ?
不死軍団を率いていたエルダーリッチもその毛があったからな?
魔都のカジノでよく見かけられたらしいから。
いや、それはいい。
主よ、なにゆえルナ殿をカジノへ連れて行ったのだ?
そう聞いてみた。
結果は、
「王家の中での立場のストレスと、親とのあいだにあった確執でストレスがたまりまくっていたんだよね」
主殿?
それであれば他にも発散方法はあったであろう?
今更言うことではないが、たまに抜けておるからな。
恐らく、パーッと散財して楽しめればスッキリするのでは?
そう思ったのであろう。
で、出来上がったのがこのルナ殿と。
はあ。
まあ、事実これから約2000万もの費用を集めるのは現実的ではないし、我の我儘だけで資産を食うのも違うからな。
仕方あるまい。
その馬とやらで稼ぐ方法に乗ろうではないか。
蒼魔視点
「えーっと、なんで俺は正座させられてるんですかね?」
俺が図書館から戻ってくるとレアから正座を申し付けられた。
俺、なにかしちゃった?
ぷりぷり怒っていたレアを問いただすと、過去の俺の所業が原因だった。
ルナを聖都のカジノに連れて行って、音でジャンキーにしてしまったことによる怒りだった。
えええぇぇぇ…。
もうそんなの時効でしょうよ。
聖都のカジノに行ったのは数年前の話だよ?
たしかにその時にレアはいなかったけど今更じゃん。
で、聞き取りましたよ。
そしたらルナのアホが馬で稼ぐとか言ったらしい…。
どこで競馬の知識を得ているんだよ…と思ったら犯人は親父でした。
親父もなにげに競馬が好きで、時々行っているのは知ってた。
でもまさか、ルナまで巻き込むと思わないじゃん?
まあ、その後母さんに怒られていたけど。
そうだよね。
息子の奥さん候補を競馬沼に落としたんだから仕方ないよ。
で、その結果、ルナが封印していたギャンブル依存症が発症したと。
頭痛い…。
もしかしてルナ、今の生活にストレス感じているのかな?
こういう依存症はストレスから来ると聞いたことがあるから今度聞いてみよう。
多分大丈夫とは思うけど…。
こればかりはルナに聞かないと分からないよね。
エルシア視点
珍しくダーリンが正座していると思ったら、まさかのレアが正座させていた。
忠誠心が高いレアがダーリンに正座をさせるのは異常事態。
そう思って理由を聞いたら全身から力が抜けたわ。
だって、隠していたルナママのギャンブル依存症がバレただけの話。
あの当時は本当にきつかった。
勝手にあーしたちの資金を持っていって溶かしてくるんだもの。
何度野宿になったことか。
翌日も行こうとしたから私がついて行ったら案の定、ルナママがカモにされていたってわけ。
目の前でイカサマされても気づかない。
目の前ですり替えをされても気づかない。
これはだめだと思ったわ。
結果的にあーしがディーラー側のイカサマを全部潰して、仕返しであーしの幻惑術を混ぜたイカサマで全部取り返してやったわよ。
相手側もなんで負けたか分からないし、こっちの世界みたいに監視カメラがあるわけじゃない。
人間が魔族にイカサマで勝てるわけないのにね。
というわけで、あの時はあーしがルナママが負けた金額の3倍をむしり取ってやったわけ。
もちろん黒服に囲まれたわ。
だけど人間の黒服もチョロいのよね。
眼の前であーしがイカサマしてもあーしの胸を凝視しているんだもん。
それじゃ見抜けないわよ。
後日、聖都のブラックマフィアたちに当日のディーラーたちは消されたようだけど、あーしらの知ったこっちゃない。
なんかルナママは心配していたんだけど、自分がカモられた相手を心配する必要はないのにね。
優しいルナママらしいけど、博才がないのはいただけない。
今回も聞いた感じだとパパが絡んでいるようだけど、どうしましょうね。
本音を言えばママに話して絞ってもらうのが筋なんだろうけど。
まあいいわ。
自分のお小遣いで楽しむなら何も言わないってところが線引かしらね。
前みたいにあーしたちのお金に手を出したら、それ相応の罰は覚悟してもらわなきゃね。
過去に痛い目にあっているルナママがそこまで堕ちるとは思わないけど、注視は必要ね。
とりあえずダーリンに目を光らせてもらっておきましょう。
少なくともこのへんはダーリンがシビアだから、紐もきつくなるでしょう。
問題はルナが色仕掛けしてきたときよね。
あのふわとろに包まれて、ダーリンは耐えきれるかしら?
そこだけが心配よ。
どんな楽器にしても値段結構しますからねぇ。
大学時代の30万のFENDER USAのベースを買いましたけど、本当によく買ったと思いますわ。
当時確か時給600円くらいだったから正直よく返せたと思います(笑)
結局今は引かなくなってオブジェになってますがね。
次から新しいアーク、エルシアの沖縄ロケになります。
お楽しみに。




