第103話 配信の準備
第103話 配信の準備
蒼魔視点
今俺は配信専用の部屋でパソコンのセットアップをしている。
えーっと、こっちのコネクタがここで…このケーブルがこっちだな。
で、これが…こっちで…。
「ふむ…。主殿はよく分かるな…」
「まあ、俺の部屋のPCも自分で組み立てたし、この機種はケーブルをつなぐだけだからさ」
「そういうものなのか?」
「ケーブルの色が違うのがわかると思うけど、配線自体もそこまで複雑じゃないからね」
俺はカメラとメロテクのコンデンサーマイクも固定しながらレアに答える。
メロテクというのはメロディックテクニケーションインターナショナルっていう会社で、もともとはYAMAHAの協力会社だった会社なんだ。
それが、そこの会社の社長がアキバで脳を焼かれて方針がガラリと変わってしまった面白い会社なのよ。
で、配信関係の機材を扱い出したんだけど、外見やコンセプトはネタっぽいのに音だけはガチという、とんでも会社になったんだ。
まあ、音響関係はこの会社のもので揃えればハズレはないことでも有名だからいいんだけどさ。
社長さん、何に脳を焼かれたんだろう。
そもそもあそこの株主総会、めちゃくちゃ面白いからな。
締めの挨拶が「スパナ!×3回」だからなぁ。
わけがわからんけど、一度聞いてみてほしいとは思うね。
っと、話がそれてしまった。
二人の話では配信は基本対面に座って配信するスタイルとのことなので、レイアウトをしていく。
ゲーミングチェアの高さを合わせ、実際に座ってカメラへの映り込みを確認する。
「レア、ちょっとそっちに座って」
「うむ。これでいいか?」
「OK」
カメラのテストモードで撮影の画角を合わせていく。
照明の位置も問題無し。
「テステス・・・」
コンデンサーマイクの集音も問題なし。
このマイクはノイズキャンセルが付いているから生活音もだいぶん取り除けるね。
まあこの部屋は地下にあるから生活音はほとんど入らないけどね。
「うん。きちんとマイクは音を拾っているね」
「じゃあ準備できたの?」
ミカエルさんが覗き込んでくる。
「うん、あとは試験的に配信環境を起動してちゃんと配信できるか、だね」
…これで問題ないかな。
「よし、じゃあレアとミカエルさん、座ってみて」
「うむ」
「わかった」
レアとミカエルさんがゲーミングチェアに座る。
配信するときは基本アバターを使ったりするんだけど、普段は認識誤認魔法をかけて生活しているから、それを外せば自前のアバターになる。
つまり今の二人は竜人と熾天使になっているわけだ。
どうせなら羽根も見せちゃえということで二人は立派な羽根を顕現させている。
「椅子に座ってみて、羽根とか邪魔になってない?」
「我は、うむ。問題ないな」
「私は羽根の枚数が16枚もあるからどうしてもねぇ…」
「じゃあ今のままで背もたれに寄り掛かるのは難しい?」
「うーん。安定はしないかも」
「そうかぁ…じゃあ椅子を少し弄る必要があるけど、これ、下手にさわれないよなぁ」
「そうなの?まあ長時間にわたる配信をしなければ大丈夫だと思うけど…」
「主殿、ルナ殿の空間魔法を使ってこのハーネスホールを拡張してもらうことはできないか?」
「あぁ…その方法はありだな。ちょっとルナを呼んでくる」
じゃあルナを探してこよう。
ルナ視点
お義母様といっしょに洗い物を終わらせてお茶を飲んでいるところにあなた様がわたくしを探しにいらっしゃいました。
何の御用でしょう?
ふむ。
ミカエルさんの椅子の改造、ですか。
空間魔法で穴を広げてそのまま固定する、と。
そうですね。
椅子を壊さずに改造するのであればその方法が一番いいでしょうね。
ただ空間魔法を維持したまま固定するとなると難易度が高いですわね。
ちょっと試してからになりますがよろしいですか?
テーブルに有るお盆を手に持ち縦に空間の切れ目を入れてみる。
お義母様は驚いているけどここは集中。
んー、空間の固定というか固着というか、なんとなくイメージができましたね。
私はイメージできた空間の切れ目をお盆のそこに固着する。
そのまま放置して時間を置いてみましょう。
あなた様、少々お待ちくださいね。
1分経過…安定してますね。
5分経過…少し揺らいできましたか?
10分経過…まだ、大丈夫でしょうか?
15分経過…あ、閉じてしまいました。
でもこれで感覚は掴めました。
広げた空間を対象に縫い付けるイメージをすれば行けそうですわ。
あなた様、お待たせしました。
地下の配信部屋へ参りましょう。
わたくしは貴方様の後ろについて配信部屋へと向かいます。
その間も空間をどのような縫い付け方にするか思案しますが、一番ピンとくるのはブランケットステッチでしょうか。
対象がほつれないように広げた空間をかかり縫いのようにすれば固着も安定しそうです。
配信部屋にノックして入ると、そこには普段は見せない本性をあらわにしたレアさんとミカエルさんがいました。
お二方ともクールですわね。
わたくしの場合は耳が尖って、虹彩が金色になるだけなので、ここまで劇的に変わるお二方が羨ましいです。
レアさんに椅子のどの部分に空間を広げるかを伺い、スリットを広げるイメージを椅子に施します。
広げたスリットは完全にぴったり密着するのではなく、ボタンホールの緩めになるようなイメージで広げ、椅子に固着していきます。
…うん、いい感じじゃないでしょうか?
椅子に2箇所のスリットを作り、ミカエルさんに座ってもらいます。
どうでしょう?
「うん、これならゆったり羽根が通るから背もたれに寄り書かれるよ。それに横にも広がるから窮屈さもなくてバッチリ!!」
良かったです。
レアさんの方は大丈夫ですか?
「我の龍翼は1対だからな。肩甲骨辺りから生えているのでそこまで気にはならん」
で、あれば問題なさそうですね。
というかここが配信部屋ですか。
共用の部屋になるんですか?
え?
歌ったり踊ったりするための部屋なんですか?
ああ、そういえば、レアさんたちは歌ったり、楽器を弾いたりするんでしたね。
でしたら納得です。
私もオンラインで通話はしていますが、話すレベルであれば個人持ちのPCとカメラで十分ですものね。
レア視点
一時はどうなるかと思ったが無事にミカエル殿の椅子の改造も終わったな。
これで我がチャンネル「天魔の回廊」で配信ができるようになったわけだ。
お互いの姿を見ながら、天魔の回廊とはよく思い浮かんだものだと苦笑する。
正直ミカエル殿にはこのチャンネル名は拒絶されると思ったのだがな。
意外とノリノリでOKを出してきたときは驚いたものだ。
まあ主殿にはチベスナ顔をされてしまったが。
さて、これで配信できる環境になったわけだが、正直我もミカエル殿も比較的メカ音痴なのだ。
どうやればいいかをこれから勉強していかねばならんな。
まあまずはチャンネル開設の挨拶とコンセプト、視聴者の呼び方などを決める必要があると聞く。
で、あれば、最初の雑談枠にはクラシックでも流しながらゆるりとミカエルと話すほうがいいだろう。
あとは視聴者が投稿したコメントに対する回答を返す感じでいいだろう。
というかミカエル殿?
魔眼は晒すのか?
それとも外出時のように目隠れで行くのか?
「うーん、正直悩んでいるんだよね。家族だけに素顔を見せるっていうのもミステリアスじゃない?」
…天使がミステリアスとか何を言っているんだ。
そもそも主殿から聞いているであろうが、こちらの世界にはヒューマンしかおらんのだぞ?
そこ、理解しておるのか?
ミカエル殿?
いや、キョトンとして小首をかしげんでくれ…。
続きます。
自分がニコ生やっていた頃と環境が変わってるので調べるのが大変です(笑)




