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もう心地よさを知ってしまったから

 二人は夜のソファーでたくさん話した。

 由紀江(ゆきえ)優子(ゆうこ)のことを撫でて、優子はそれがどこか気持ちよくて。由紀江はこうやってスキンシップをとれるようになったことをうれしく思っていた。

 そろそろ寝る時間だ。楽しいというよりも、心地良いお泊り会。それも今回は今夜が最後。

 由紀江と優子は寝室に入り、寝る準備をした。優子は布団を敷いた。でも昨日の夜の記憶が思い出されていた。由紀江のベッドで、由紀江に抱かれて、優しく撫でられて、由紀江の体温と匂いを感じて寝たあの時間を。

 由紀江も優子に対して同じことを思い出していた。

 二人は知ってしまった。この心地良さを。

 心のどこかで待っていた。

 電気を消した。

「優子ちゃん…。」

「…。はい。」

「こっち…、来ない…?」

 由紀江は自分でも恥ずかしいくらい撫で声になっていた。自分がこんな声を出すなんて、本当に恥ずかしかった。

「…、いいんですか…?」

「いいよ…。」

「…、行きます…。」

 そういって、優子は由紀江の載っているベッドに腰かけた後、足を乗せて、由紀江と並んだ。

 何とも言えない雰囲気。

 別に優子に何か、やらしい気があるわけではない。ただ少し、恥ずかしいのであった。自分がこんなに甘えてしまって、ここまで甘えるなんて。でも由紀江になら甘えたいと。それは体が、優子の本能がそう思ったのかもしれない。

「いいよ、寝て。」

 由紀江はそういって、優子を寝かせ、優子と自分に布団をかけながら体勢を横にした。

 優子はまた自然に体が由紀江の方を向いていて、由紀江が横になったら、顔がものすごい近くて目があったので、びっくりして体勢を仰向けにかえた。

 優子は改めて思った。

(由紀江さん、美人。)

 と。

 そして由紀江も思った。

(優子ちゃん、顔良すぎ。)

と。

 それを意識したら、女同士なのに急に話せなくなり、しばらく沈黙が続いた。沈黙を破ったのは由紀江だった。

「優子ちゃん。こっち向いて。」

「え?」

「だめ?」

 それはきっと、体も顔もこっちに向けて、という意味なのだろうと、優子は思った。

「由紀江さん。なんか急に、声がいつも以上に…、可愛さ百倍ですね。どうしたんですか。」

 由紀江は自分でもまた甘えた声を出したと思って、恥ずかしかったのが、ついに優子に指摘されて、余計に恥ずかしくなった。

「少し、撫で声になったと…、思ってた…。言われると、恥ずかしい…。」

 そういって、由紀江は手で顔を覆った。

 優子はその様子を見て、体勢を横にして、由紀江の方へ体も顔も向けて、こう言った。

「手を、どけてください。由紀江さんの顔、見たいです。」

(!?!!!???!!)

 由紀江は優子のその言葉に、何も言えず、どうもできず、固まった。でもわかることがある。顔を覆ている自分の手に伝わる。自分の顔の熱。だんだん熱くなっている。

 手をどけて、顔を見られたら、赤くなっているだろうか。でも電気は消してある。顔が赤くなっていたとしても、ばれないだろう。そうも思った。でもなんでこんなに自分がこんなことになっているのか、わからなくもなっていた。

 そうこう考えていると、手首に、そっと肌が触れた。優子の細い指先が触れていた。

「由紀江さん。」

 優子が再び名前を呼ぶ。

 由紀江は覚悟を決めた。きっと顔が赤くなっていても暗い中で見えない。表情は薄暗くて見えるかもしれない。そう思って、表情だけ何とかリセットして、これで良しとなり、由紀江は顔から手をどけた。

「ごめんごめん。ちょっとね、恥ずかしくて。」

 言葉だけならいくらでもいえる。恥ずかしかったと、はっきり言える。でも自分では制御できない姿を見られるのは恥ずかしかった。だから次に起こることは、由紀江にとって、とても心臓に悪いことだった。

「由紀江さん、顔、熱いです。」

 優子は由紀江の手首に触れていた手を、そのまま、由紀江の頬に当てたのだった。

(っっっっっ!!!!!?????)

 由紀江はもうそこから優子のペースに飲まれた。

「あ、あ、ゆうこ…ちゃん…。」

 由紀江また手で顔を覆い隠そうとしたとき、優子はその由紀江の手を、パッと掴み、顔を覆い隠すまでもっていかせなかった。

「うっ…///」

 由紀江はもうどうすることもできないまま、照れに極まったその顔を優子にさらけ出した。

 薄暗い中でも、とても控えめな、着いてるか着いてないかわからないレベルの常夜灯が部屋を照らして、そのわずかな明かりで、優子は由紀江の表情を見ていた。

「かわいいですね。由紀江さん。」

 優子は思ったことを言っているだけである。夜だからなのか。優子も不思議とそう言ったことを言えてしまう。でも特に深い意味はない。照れさせようとも思っていない。純粋だった。

 そして、由紀江はもうだめだった。とにかくもうだめだった。感情が追い付かない。脳がバグっているとでもいうか。もう何も考えられない状態。

 優子は手をそっと置いて。手を掴んだまま力を抜いて、しばらく由紀江の顔を見つめながらいたが、いつの間にか眠ってしまった。とても心地よさそうに。

 由紀江はそれからしばらくして、やっと少し思考が落ち着いてきて、状況を飲み込めるようになった。ただ全然寝れずにしばらくそのままでいた。手は片方優子に握られている。自分の顔と優子の顔のすぐ近くに握られた手が置かれている。だから、優子の息がわずかにかかる。自分の息もかかる。脳が落ち着いてきたからその感覚もやっとわかるようになった。

 優子のか弱そうな、静かな寝息。とても心地よかった。

 今日は手を握られているから頭を撫でたくても撫でられない。ただ顔が近い。優子のあまりにも整った美しく可愛い顔。それを間近で見ながら寝られるのも幸せだと思って、昨日とは違う体勢で心地良さを感じながらウトウトとしだした。

 今晩はあまりにも脳がヒートアップしすぎて、疲れてしまった。

 由紀江はその後すぐに眠りに落ちた。


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