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勇者狩り ~僕は女神に反逆し、異世界転移した勇者達を狩る~  作者: 羽生ルイ
Case3:ゾル=カタン-撃っていいのは撃たれる覚悟のある勇者だけだ
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#11

 道中、フリーダが語ったところによると徒歩旅が不可能な理由は距離以外にもあるらしい。それは……そう、今まさに獣車を引いている魔獣の存在だ。


「街道沿いではそうそう見かけないけどね、森の中をちんたら歩いてたらあっという間に魔獣の餌食さ」

「確かにこの速度で移動する魔獣相手だと逃げ切るのは難しい、か。でも魔法銃(マナガン)があれば倒せそうに思うけど」

「ああ、倒せるさ。けどまともに魔法銃(マナガン)を使える連中は皆軍人だ。余程の事でもないかぎり、街道の掃除なんてしてくれやしないよ」

「冒険者やハンターはいないのかい?護衛に雇えば……」

「冒険者……?なんだい、それ」

「魔獣退治や素材収集なんかを生業にする人達の事だけど」

「……傭兵かい?まぁ、そういう手合いもいなくは無いけどさ、人里離れた場所じゃ傭兵と魔獣、どっちも同じぐらい危険な相手さね」


 フリーダが言う傭兵というのは僕が知っている冒険者よりももう1ランク社会的地位が低い……要するに犯罪者すれすれの連中ということなのだろう。討伐依頼ならまだしも、護衛に雇うと雇い主を殺して金品を奪いかねない存在だとフリーダは言っているのだから。



 そんな雑談を挟みながらも僕はちまちまとハインリヒ……つまり須藤の事についてフリーダから情報を集めようと試みた。けど、ドラゴンレイジやハインリヒの事をストレートに聞きすぎると、僕がドラゴンレイジの元へ向かおうとしていることを感づかれてしまう。

 本来であればフリーダの知るハインリヒとドラゴンレイジの情報を全て聞きだ出し、僕独りで須藤を追うつもりだった。けど獣車という思わぬファクターのせいでフリーダが同行する以上、道中でヘソを曲げられて帝都までの案内を拒否されると言う状況は避けたかった。


 結果としてその日はハインリヒについての話は子供の頃から喧嘩っ早かったとか、小さい頃はハインリヒよりも2つ年下のフリーダの後を彼が付いて回っていたとか、そういう――まぁ言い方は悪いけど――どうでもいい話ばかりだった。

 ただ昔の事を語るフリーダの表情は遠い昔を懐かしみつつも、何故か哀愁が漂っているように思えて仕方なかった。



 日が随分と傾いた頃になって獣車は宿場町へと到着した。フリーダによると帝都までの道中には各所にこういった宿場町や小さな村があるのだそうだ。到着した時間は丁度他の旅人やキャラバンも一夜の宿を求めて立ち寄る時間だったらしく、僕達が部屋を取った宿もそれなりに混雑していた。


「いつもこんな感じなのかい?」

「まぁ、概ねそうさね。ただ昔はもっと賑やかだったと聞いてるけどね」

「混雑しすぎてないのは良いことじゃないか。おかげで部屋も2つ確保できたし」

「アタシは別に同室でも良かったんだけどね?」


 そう言っておどけてみせるフリーダと別れ、それぞれの部屋へと落ち着く。宿に併設された酒場では丁度ドラゴンレイジの話題で持ちきりだった。なんでも僕達に1日先行する形で「荷物(奴隷)」を詰んだ、獣車……それもかなり珍しいタイプの2頭立てのものが3台連なって帝都近くのアジトを目指しているらしい。

 もちろん誰も直接的に「ドラゴンレイジ」という名は出さなかったけど、輸送している「荷物」に関する言及や、言葉の端々に潜む恐怖と嫌悪から、その特殊な獣車がドラゴンレイジのものであることは明白だった。


 しかし酒場で聞いた連中の噂には気になる点もあった。どうやらドラゴンレイジはこの宿場町で帝国軍の銃士からコンテナを受け取っていたらしい。

 相手が相手だけに中身は奴隷として連れ去られた人々ではなく、横流しされているという魔力銃(マナガン)である可能性は高い。違法取り引き用の商品だとは思うけど、その荷物がアジトに運び込まれてしまったら連中の戦力が一時的に高まる懸念がある。


 ただ不思議な事にその話をしてくれた宿の給仕は魔法銃(マナガン)がどういうものなのかを正確に理解していなかった。周囲にいた旅人やトレーダーも同様で、詳しい話を知っていたのは軍と取り引きをしているという大店の人間ぐらいだったんだ。この情報格差が意味するのはどういう事だろうか……?

 そのことも気がかりだったけど、どちらにせよ行程的に見れば明明後日のどこかでフリーダと別れ、ドラゴンレイジのアジトへ向かう必要がある。

 獣車はフリーダに譲るつもりではいるけど、状況は流動的だ。万が一のために明日は少し自分でも魔獣を御せるよう試してみておいた方が良いかもしれない。

 ……そんな事を考えているうちに、僕は知らぬ間に眠りに落ちていた。



 翌日。早朝に宿場町を発った僕たちはとりとめのない会話をしながら、帝都を目指した。途中休憩の際に僕はフリーダに御者席を替わってもらい、獣車が扱えるか試してみることにした。


「馬車の扱いが出来るって言うだけあって、様になってるじゃないか」

「それはどうも。けど真っ直ぐ走らせるのはともかく、速度が速いから方向転換や停止は難しそうだね。特に対向車が来たら路肩へ一旦停めた方が良さそうだ」

「……そういえば気のせいかもしれないけど、今日は対向車が少ないね?」

「そうかい?僕にはよく分からないけど」


 フリーダはそういうけど、僕は対向車が来る度に神経を集中しないといけないから、むしろ数が少ないのは歓迎だ。

 なにせオオカミに似た魔獣はまるで散歩中の犬がすれ違いざまに威嚇し合うようなノリで、対向車を牽引している獣に喧嘩を売りに行こうとしたからだ。獣車とすれ違うたびに互いに距離を確保するのは初心者の僕にはそれなりに難しく、毎回一時停止して道を譲るのは結構大変だったんだ。


 ともあれ、少しの区間とは言え御者席に座り、感覚はある程度つかめた。フリーダのように自由自在に操れるとは言わないけど、非常時に僕がピンチヒッターで御者を務めることは問題無くできそうだ。

 けど前回のアケトアテンでは馬車、今回は獣車と意外に異世界で移動する機会は多そうだ。次に狩りへ向かう際にはストレージにオフロードバイクでも入れておいた方が良いかも知れないなぁ。


 再び御者席をフリーダに明け渡し、僕はもう一つの目的であるハインリヒの情報を聞き出すことに専念する。昨日聞いたどうでも良い子供時代の話を撒き餌に、ハインリヒが……須藤がどのようなチート能力を持っているのかを探る作戦だ。


「……喧嘩した相手とすぐ仲良くなる?」

「仲良くっていうか……アイツが言うには舎弟?とやらになってたね」

「舎弟ってことは子分か……。それは、喧嘩した相手全員?」

「言われてみたらそうだね。長年いがみ合ってた隣町のガストンも、ハインリヒが喧嘩で負かしてからは人が変わったみたいにハインリヒの言う事を聞くようになってたよ」


 フリーダが語ったその言葉に僕は強い違和感を感じた。対立する他の群れのリーダーが一度の喧嘩で軍門に下るなんて事は普通に考えればありえない事だ。復讐やら意趣返しやら、互いにやり返すことで報復合戦が全面的な抗争に発展するというのが、半グレ組織の典型的な行動パターンなのだから。

 となると、ハインリヒの持つ力は、ビーストマスターと呼ばれる職業が持つ能力である「手懐け(テイム)」を人間にも適用出来る能力なのだろうか?ビーストマスターがテイム可能なのは基本的に戦闘で弱らせた相手に限定されるという話を聞いたことがあるし。


「それって、他人を手懐ける能力っていうこと?そう言えば連中は2頭立ての獣車を使ってるって聞いたけど……」

「……これまでそんな事考えた事も無かったけど、言われてみりゃ喧嘩っ早いダイアウルフが大人しく2頭並んで走ってるのは不自然かもしれないね……」


 ということはドラゴンレイジが使っている特別な2頭立て獣車というのはハインリヒの能力による副産物である可能性もかんがえられるのか。しかし「手懐け(テイム)」そのものはある種の才能があれば誰にでも習得できるスキルだと聞く。

 仮にそれが人間に適用できるとしても、女神がチート能力として与えるものとしては貧弱であるようにも思えるけど……。


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