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勇者狩り ~僕は女神に反逆し、異世界転移した勇者達を狩る~  作者: 羽生ルイ
Case3:ゾル=カタン-撃っていいのは撃たれる覚悟のある勇者だけだ
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#3

 そして翌日、昼休み。


「なぁ、ユート。お前……おかしくないか?」

「いきなりなんだよ、太郎」


 限られた時間で腹を満たそうとする学生達――もちろんその中には僕も含まれる――で混雑した学食の片隅に何とか座席を確保した僕の前に座っているのはおなじみの友人、太郎だ。

 けど太郎は僕の事をまるで不審人物でも見るかのような目で見ている。まぁ彼の言いたいことはわかる。なにせ僕の両隣には……。


「太郎は失礼。悠斗はおかしくない」

「むしろタローさんの方がおかしいと思います」

「……えっと、志織ちゃんだっけ?どうしてオレ、いきなり初対面の君におかしな奴扱いされてるの?」


 うん、僕の右側には麗奈。左側には志織が陣取っているんだ。しかも志織はセーラー服の上から白衣を羽織ったよく判らない格好だし。

 そもそもモブ顔の僕が両サイドに美少女2人を侍らせていることは辺りの学生も気にしているようで、チラチラとこちらを見ている人も多い。おそらく太郎が口にした「おかしい」というのは彼等の意見を代弁しているものなんだろう。


「それで、なにがおかしいって?」

「いやだってお前、ブラック企業へインターンに行ったんだよな?なんで可愛いJK引っかけてきてるんだよ!」

「タローさん、見る目ありますね!このパセリ食べます?」

「いや、いらないし。……いや、やっぱり貰おうかな?」

「太郎も志織も、やめなさい」


 可愛いと言われて調子に乗る志織と、志織の差しがした付け合わせのパセリを食べようとする太郎を止めながら、僕が太郎に以前説明したブラック企業のインターンという設定では確かに現状の説明が付かないことに頭を悩ませる。


「太郎は細かいことを気にしすぎる。そんな事だとハゲる」

「弓月さん、辛辣すぎるだろ……」

「まぁ、そういうことだから太郎も気にしないでくれると嬉しいんだけど?」

「何がそういうことか判らんし、オレにもそのインターン紹介して欲しいし!」

「ブラックだから止めとけって言ったのは太郎だろ?」

「美少女やJKと知り合えるなら、ブラックでも悔いは無い!」


 そうは言うけど太郎に言った「ブラック企業のインターン」は総合学部の勇者狩りを指す言葉だ。命のやり取りを行う案件の過酷さはブラック企業の比ではないし、太郎を巻き込むわけにもいかない。

 僕は適当なことを言って太郎を誤魔化したあと、麗奈と志織を伴って混雑する学食を後にした。


 午後からも少し時間が空いているので僕は麗奈と志織に同行して総合学部の本部へと向かった。アケトアテンでの一件が片付いた後、特に呼び出しも無いままこの2週間は結局一度も総合学部に顔を出していなかったからだ。

 僕が本部へ行くと言うと、麗奈は少し微妙な顔をした。まぁ、言いたいことはわかる。なにせ僕は前回の案件で麗奈から使用を強く止められていた「燃血の邪法(ブラッドマジック)」を使い寿命を削ることになった。その影響は帰還後にも僕の体を蝕み、3日ほど寝込んでしまう結果になったからだ。

 もちろん数日寝た程度で削れた寿命は戻らない……いや、どうやっても削った命は戻ってこないけど、僕の寿命の一部で志織の命が救えたならそれは本望というものだ。


 けど麗奈的にはそうではないらしく、前回の一件以来それとなく僕を案件から遠ざけようとしてくれていることは、鈍感な僕にも察することが出来ていた。


「大丈夫だよ、麗奈。もう平気だから」

「邪法の影響は不可逆。大丈夫でも、大丈夫じゃない」

「……ごめんなさい、ユートさん。私のせいで……」

「ほら麗奈、そんな事言うと志織が落ち込むだろ?」

「ごめん、シオリ。でも事実だから」

「なんでそこで追い打ち掛けるかな……」


 そんな事を言っている間に僕達は志織がこの数日、作業をしているという工作室へとたどり着いた。なんでもここで錬金術のスキルを活かしてポーションや錬金アイテムの作成を行っているらしい。


「これ、ユートさんのために作った回復ポーションです!素材があんまり手に入らないから、とりあえず3本しか作れませんでしたけど……」

「それでも回復薬の手持ちが増えるのは助かるよ。僕のストレージにあるグレイランス製のものは補充が効かないからね。ありがとう、志織」


 もちろん総合学部にいる狩人は僕だけじゃない。だから本来なら志織のポーションは全員でシェアすべき所ではあるけど、残念ながら他の狩人は世界を越えて「消費アイテム」を持ち運ぶことが出来ない。それ故に志織が作るポーションも、アイテムも、実質的に僕専用ということになる訳だ。


「あと、これ……まだ試作品で改良の余地は大きいんですけど」

「水晶柱……まさかフラグ?」


 フラグというのは志織が魔神トートに製法を教わった異世界風の「破片手榴弾(フラググレネード)」の事だ。アケトアテンではフラグを使って魔物や野盗を撃退したけど……。そんな危険物、現実世界で作って良いんだろうか?


「違いますよ。もちろんフラグも作れるよう、材料集めをしてもらってますけど。これは別のモノです」

「別の……爆発物?」

「私、別に爆弾魔じゃないですからね?これは異世界へのリソース流出を検知するセンサー的なものです」

「どういうこと?」

「異世界へ転移した人を探すのって大変なんですよね?だから少しでも手助けにになるものを、と思って。トートにこの世界のリソースが異世界にどう拡散するかを分析して貰って、その波長を検出すると光るようにしたんです」

「それ、かなり画期的な発明なんじゃ?」

「でもこれを異世界に持って行けるの、ユートさんだけですから」


 リソースが使われている位置をある程度測定することができれば、居場所不明の転移者を探す際の苦労が随分と軽減されることになる。

 僕がこれまでに狩った斎藤君も、志織も、どちらも転移した場所の近くにいたから比較的簡単に見つけることができたけど、冒険の旅にでも出られていたら……。そう考えると漠然としたものであっても目安があることは非常にありがたい。


「でも悠斗。これがあるということは、面倒な案件を振られるということ」

「まぁ、それもそうか。でも適材適所じゃないか」

「悠斗は責任感が強すぎる。私はそれが心配」


 そう言うと麗奈は僕に抱きついてきた。僕だって心の底では勇者狩りなんて危険なことはせずに麗奈と……そして志織と穏やかな日々を過ごせればいいのにと思ってはいる。

 けど、それでも僕は世界への贖罪のために勇者狩りを止める訳にはいかない。それは僕の好悪で決めるべきことではないから。


 志織のくれた「探知の水晶(ディテクトクリスタル)」とでも呼ぶべきものを手に、僕が勇者狩りへの決意を新たにしていると……工作室の扉が開き、榊会長が入ってきた。


「高坂さん……あら、如月君?もう体調はいいの?」

「ええ、おかげさまで」

「夢那センパイ、悠斗はもう元気。二回戦もいける」

「ちょ、麗奈!?」


 真顔で僕達の私生活を曝露する麗奈に焦りながらも、榊会長の様子をうかがうと……端正な顔に何とも言えない微妙な表情を浮かべている。まぁ、そこで余計な事を直接口に出さないところがこの人の出来たところだとは思うけど。


「……なら、もう案件の話をしてもいいかしら」

「案件、ですか?」

「ええ。実は如月君に任せたい案件があったのだけど、弓月さんから止められていたのよ」

「今日はまだ駄目。でも明日の昼以降ならいい」

「……その妙に細かい時間指定はなんだよ……」

「まるで宅配の時間指定ですね!」


 僕のツッコミに応じてくれたのは志織だけで、榊会長と麗奈は案件の話に入ってしまった。どうやら明日、僕は4度目の異世界転移へ赴くことになるようだ。


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