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勇者狩り ~僕は女神に反逆し、異世界転移した勇者達を狩る~  作者: 羽生ルイ
Case5:ランドール-ざぁこざぁ~こ♡ざこ勇者♡
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#11

 見たところリコは全く危機感を抱いていない様子で、四天王襲来を告げるロロの言葉を耳にしても席を立つ素振りすら見せない。

 ここまで本人にやる気というか、当事者意識がなければ強制して戦闘に向かわせることは難しいだろう。


「ところでリコはお菓子は好きかい?」

「好きだよ~♡でもこの国ってスイーツとか無いから、ちょ~残念」

「そうか。実は僕がいくつかスイーツを持ってるんだけど……マカロンは好きかい?」

「うん、好き♡」

「なら食後のデザートにマカロンをプレゼントするから、城門の様子を見に行かないか?」

「う~ん……まぁ、見に行くだけならいいよ。で、どこのマカロン?一流店のお取り寄せ?」

「いや、コンビニで売ってるやつだけど……」


 僕がストレージから取り出したマカロンのパッケージを見て、リコは一瞬だけ残念そうな顔をしたけど、厳つい籠手をはめた手でマカロンを受け取った。そしてしばらくパッケージを見つめていた後、僕に向かってそれを突き返してくる。


「お兄さんはリコの下僕だよね?開けて食べさせて♡」

「はいはい、勇者様の仰せのとおりに。一つでいいのかい?」

「うん。あーん♡」


 僕はリコの求めに応じ、パッケージに収められたカラフルなお菓子の中から適当な一つ取り出すと、立ち上がって口を開いたリコに向かってピンクのマカロンを差し出した。

 小さな口で、小さなマカロンをパクリとたべたリコは、しばらく幸せそうな笑顔を浮かべた後で言った。


「あ~あ、よわよわお兄さんにお願いされたら、行かないといけないかな~」

「そうしてくれると助かるよ」

「は~い♡」


 そう言うとリコは背後に立てかけていた、鎧と似たデザインの黒い大剣を手に取ると城門へ向かって歩き出した。その姿を見ながら、僕も彼女がチート能力を使うか確認するために後を追おうと席を立つ。

 と、背後からロロが声を掛けてきた。


「見事なものだな。あの『まかろん』なるものは南方諸国の菓子か?何故勇者が南方諸国の菓子を知っている?」

「僕に聞かれても困るけど、勇者様の国にも似た菓子があるんじゃないかな」

「……ふん。まぁ、お前の手並みは見せて貰った。今後も協力を頼むぞ」

「ああ。僕の利益に反しない範囲で、ね」


 僕がそう言い終えた時には既に背後にロロの気配は無かった。さすが猫人族(フェリニアン)隠密(クノイチ)だと感心しながら……僕はリコの背中を追った。



 けど、リコに続いて城門近くまでたどり着いた僕は拍子抜けすることになった。なぜなら既になんとかという四天王は城門前を立ち去っていたからだ。

 城門近くには不安げな……いや、絶望の表情を浮かべた冒険者や王国軍の戦士達の姿が見える。僕は状況を確認するために、手近なところにいた冒険者らしき一団に声を掛けてみた。


「すみません、何があったんですか?四天王が現れたと聞いたのですが」

「……兄さんも民兵か、冒険者かい?もう逃げた方がいいかもしれんぞ」

「えっと……城門は壊されているようですけど……」

「いや、そうじゃない。誰かは知らんが余計なことを言ったヤツがいるんだ。『勇者は来ない』『俺達は終わりだ』ってな」


 暗い表情で冒険者らしき男はそう言う。実際、リコが到着したのは僕とほぼ同時で、それは四天王が城門前から去った後だったから、リコは来ていなかったというのは事実だろう。そしてそんな状況で絶望した誰かが、叫びたくなる気持ちもわからなくはないけど……。


「それ、士気がガタ落ちになりませんか?」

「なりませんか、とは随分余裕だな。もうガタガタもいいところだ。騎士団が叫んだ奴を探してるけど、口から出た言葉は戻らないからな」

「なるほど……それで逃げた方が良い、と。けど、勇者様ならあそこに」


 僕は視線でリコを指したけど、冒険者達は悲痛な表情で頭を振る。


「兄さん、本気でそう言ってるのか?あの勇者じゃ駄目だ……。連日の挑発にも対応しないし、四天王が去ってからのこのこ現れる。おまけにあんなちっこい女の子じゃ……」

「でも彼女は既に魔物を倒したと聞いていますが」

「王都近郊に出る魔物なんて獣に毛の生えたようなザコばかりだ。そんなもの、駆け出しの冒険者でも対処出来るぞ」

「ああ、なるほど……」


 どうやらリコがこれまでまともに勇者として動かなかったことで、彼女がこの場に現れてもランドーリア防衛戦力の士気向上には繋がらない、ということか。

 まぁ、リコのような小柄な女の子が現れただけで士気が上がるとしたら、それこそ精神操作系チートの使用を疑わないといけない状況だけど。


 僕が冒険者に話を聞かせてもらっている間に王城とおぼしき方向から騎士の一団が現れた。彼等も押っ取り刀で駆け付けたのかと思ったけど、意外に焦った様子は見られない。

 どういう状況かと思っていると、先頭に立っていた壮年の騎士が、拡声魔法らしきものを使い大声で周囲に呼びかけた。


『勇敢なるランドール王国の民よ!そして魔王軍の暴虐からこの地を救うために集まってくれた勇士達よ!四天王が現れたということは、間もなく魔王軍が総攻撃を加えてくる可能性が高い!我ら騎士団と王国軍はこれより城門前にて陣を形成し、魔王軍の攻勢に備える!諸君らも武器を取り、王都防衛に協力して貰いたい!』


 そうか、四天王による威力偵察で「勇者の不在」が確認された以上、魔王軍は心置きなく全軍で攻撃してくるはず。そして王国側はやる気を見せないリコに頼るのではなく、自分達で防衛体制を固めるつもりなのだろう……。


『なお、申し訳無いが裏門は閉鎖させてもらった!以降、裏門を通ろうとするものは魔王軍の間諜と見なし処刑されることになる!諸君らの敵は前面のみにあり!奮戦を期待する!』


 将軍はそう言うと拡声魔法を解除した。うん、士気が低下した王国側としては総崩れを防ぐ為に退路を断つ以外の方法は無いだろう。そして先ほど聞いたアジテーションの事を思えば、そしてロロが言っていた大要塞(グレートフォートレス)陥落のことを思えば、この城塞都市内に内通者がいる可能性は極めて高いだろう。

 二重三重の意味で背水の陣を敷くのは妥当な決断だと、僕は思った。


「ねぇお兄さん、マカロンじゃないお菓子、持ってない?リコ、アイスクリームが食べたいな♡」

「一応持ってるのは持ってるけど、今の状況判ってる?」

「うん♡王国の人達がよわよわのざぁこって事でしょ?」


 悲壮感に包まれたまま城門の外を目指して行軍する騎士団と王国軍をみやりながら、リコは平然とそう宣った。

 この子がどれだけの戦闘力を秘めているのかは判らないけど、少なくともランドール王国側はこの時点でリコを旗印に掲げる気はないようだ。


 それもそうだろう。連日の魔物の咆哮を無視し、四天王の襲来にも対応しなかった子供勇者が今さら現れても、士気は上がるどころか下がるに違いないから。


「で、リコは戦いに参加しないのかい?」

「ん~、どうしようかな。勝てる戦いなら面倒だからパス♡」

「見たところ魔王軍は1万ぐらいだよね。遠目だから戦力構成ははっきりしないけど、小型の魔物が主体で、100体ぐらいは大型も混じってそうだけど。王国軍の側は騎士に国軍、民兵に冒険者を合わせて7,000人ぐらいだってロロが言ってたっけ」

「へ~、そうなんだ。ロロ、そんな事も知ってるなんていが~い♡」


 どうやらリコはロロの正体が自身に付いた監視役兼護衛であることに気付いていないようだ。

 それにしても、この王都防衛戦はかなり厳しい状況だと言わざるを得ない。昨夜ロロはランドール側の戦力内訳では騎士が300、王国軍の歩兵が1,600、民兵が4,500に冒険者が600程度だと言っていた。

 彼女が僕に正確な数字を伝えたと仮定すれば、この戦力比は正直言って絶望的だ。


 数だけを考えれば王国側にもある程度戦力があるように見えるけど、その大半はろくに訓練も受けていない雑兵、民兵に過ぎない。現状のように士気が壊滅的に低い状態ではほぼ戦力として役に立たないだろう。

 冒険者については玉石混交過ぎて正直評価が難しい。高ランクに分類される英雄候補のパーティが複数混じっていれば、あるいは魔王軍の戦力を削ることが出来るかもしえないけど、数の差と味方の層が薄すぎることが致命的だ。


 つまり、普通に考えればランドーリアの街は半日も持たずに陥落することになる。


 曲がりなりにも士気を保っている騎士団や専業軍人達に続き、絶望の表情を浮かべた民兵達がノロノロと城壁の外へ出陣してゆく。

 あの様子では、四天王が再び姿を現した時点で王国軍は瓦解するだろう。冷淡にそんな事を考えながらも、非戦闘員を名乗っている僕は行軍には参加せず、見晴らしの良い城壁の物見台へと移動する。


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