帰り道
サキチとみさ希は調査室に戻ると、ピナが涙目でちょこんとイスに座っていた。
聞けば、
書類の記入項目の内容を覚えていなかった。
携帯電話にそれをメモしてあることを思い出す。
その携帯電話は鞄の中。
その鞄はロッカーの中。
そのロッカーはサキチのIDパスがないと開けることができない。
結果、書類は出来上がらず、荷物も出せなければ帰ることもできない。
と、ピナはサキチの胸ぐらをつかんで投げ飛ばす勢いで順序良く説明。
みさ希の「もう外は暗いし、サキチ君、駅までピナさんと一緒に帰ってあげて」という一言で、サキチとピナは一緒に調査室を出て、歩いて十五分ほど駅まで歩いた。改札を通り二人は同じホームに立ち、電車で四駅進み、同じで駅で降りる。改札を出て同じ方向へ歩き出す。
「で、どこまで着いてくるんだよ」
サキチは振り向いた。
「着いて行くつもりはないよ。うち、こっちなんだもん!」
「そう。昔からここら辺に住んでいたのか?」
「今年の3月に引っ越して来た。こっちの高校に入学するのに」
「前はどこにいたんだ?」
サキチが質問すると、少し間が空いた。
「……東京の方」
「へぇー。親御さんの仕事の都合とかで?」
「まぁ、そんなところ」
ピナの表情は、昼間見せていた偽りのない笑顔と言うにはほど遠い作られた笑顔だった。辺りは暗かったが、サキチにはその表情がはっきり見えていた。
サキチはマンションの前で止まった。
「じゃぁな、見習いダイバー」
「今日はありがとうございました。わからないことがあったら教えて下さいね、サキチ先輩。それでは、私はこっちなんで」
ピナは道路向かいの新しくできたマンションへ歩き出した。
まさか同じ町内かよ。しかも、そのマンション、いいお値段って聞いたけど……。




