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侵入調査

 重い空気に包まれたミーティングルームのモニターには、畳の上に鎮座する開けられたアトラクタの箱が映しだされていた。その脇に鍵が落ちていることも確認できる。モニターに視線が集まる中、モニター横にいた堀が、

「先日のミッションでピナちゃんがフィールドに到達した直後の映像です。すでに箱は開いてしまってます。この時点では、他のダイバーがいた形跡はありません」

 と、口を閉ざした面々の表情を見ながら言った。

「はい、僕から報告いいですか?」

 時田が手を上げた。

「はい、お願いします」

「ピナちゃんのミッション終了後、3Dシステムのデータを解析しましたが、他のダイバーが潜入した形跡は残念ながらありませんでした。現状のシステムでは、クライアント一人に対して一人のダイバーしか潜入できないので基本的にはピナちゃん以外に潜入できません」

「ピナちゃんがダイブする前に誰かがダイブって可能ですか?」

 堀が問うた。

「不可能とは言えませんが、この調査室で行われた犯行であれば当然可能です。しかし、もし内部で行われていたとしたら、システムに足あとが残っているはずです。かと言って、外部からダイブされたと考えるには無理が……」

 ここにいる誰もが時田の発言に納得していた。

「第一、3Dシステムがなければ出来ないことですし」

 そう言って、時田は黙った。進行役の堀も根本的なことを言われ、これ以上どう話を続けてよいのか分からなかった。

「私からも一つ」

 固まった空気の中、みさ希が口を開けた。

「この件と関連性があるかどうかはわかりませんが、運営室からいくつか報告を受けていて、月末の定例でまとめて話は上がってきます。今、私が聞いているところでは、クライアントが思い出した記憶とともに、思い出したくなかった記憶も思い出したと苦情が、先週から数件寄せられています」

「やっぱり誰かの仕業ですかね」

 堀が不安な表情でみさ希を見つめた。

「誰かの仕業というのはとりあえず置いておいて、記憶を思い出した時に別の記憶も蘇ってしまうことはないわけじゃない。記憶の断片であるピースをパスルのように当てはめると前後左右とつながるわけだし、関連性ある記憶は鎖のように繋がって思い出してしまうことは考えられる」

 時田が饒舌に説明した。

「その辺は、運営室もクライアントにミッションを進めていく中で説明はしているんですが、なにかピースに作為的に操作があるようにも思う」

「定期的に苦情があるならともかく、先週から苦情が寄せられるようになったとなると、システムの精度やダイバーからの影響を受けている可能性も否定出来ない。システムのチューニングは開発室で調査してみる」

 時田を始め、数人の開発室メンバーは頷いた。

「はい、よろしくお願いいたします。この問題が大きくなれば、サービスの停止も考える必要も出てきます。が、依頼者は待ちが出ているほどなので、サービス停止は調査室の終わりを意味すると言っても過言ではありません。どこかに小さな綻びができつつある前兆であるかもしれないので、今後はよりミッションには注意を払って行きましょう」

「はい」

 一同がみさ希に賛同した。

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