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6話 神獣

中井君は逃げまくりです。

大穴は、入り口こそ大きかったが、だんだん小さくなり、2人が並んで泳げる程度の大きさになっている。

また、緑の点までの距離は短いと考えていたが、一直線に点まで向かっておらず、左右上下、様々な方向に広がっている。

これは、俺の予想以上の距離。


このゲームでは、水の中に潜ると、一定時間でHPが減少する。

試しに潜った時は、1時間程度潜水して、HPが減り始めた。

HPが減る理由としては、現実では呼吸が出来ないことを具現化するため。


ちなみに、ゲームなので水中でも呼吸出来るし、呪文の発声も可能。


幸い、道は一本道のため、迷うことも無く、緑の点に行き当たる。

潜り始めて1時間。まだHPは減り始めていないが、時間の問題。

さすがに焦るが、戻っても同じ時間かかりHPが0になるのは目にみえている。

俺には、進むしか道は残されていなかった。


30分程進むと、HPは半分以下。やはり、戻っていたら死んでいた。


まさかの水中死を覚悟したが、水の深さが浅くなる。

浅瀬に立ち、先を見ると奥には建築物。

近寄ってみると、それは神殿だった。


何故こんな所に神殿が?

海の深く、一応、砂浜のようになっているが、人の手で作れるような場所ではない。


疑問は浮かぶが、緑の点は神殿の内部。

赤い点は散らばっている。

距離が余りにも遠かったため、緑の点に密集し、護っているように見えただけのようだ。


明らかに人の手で作られていない物。興味は沸く。

そして、俺は慎重に神殿へ入っていった。



「なにここ……。本気でヤバい。化け物しかいない。」

"疾走"を使い、全力でモンスターから逃げる俺。

追ってくるのは、骸骨、幽霊、死神。

化け物というのは、見た目だけではない。

"情報"によって見たステータスは、全てのモンスターがLv80を越えていた。


この神殿、攻略レベル高すぎだろ。


初めての宝箱を見つけて、部屋に入り、中に入っていたアイテムに手を触れた瞬間、モンスターが発生。それと同時に扉が閉まろうとする。

用心のため、近くに転がっていた石柱を扉の間に挟んでいたので、アイテムを手に持ち、"疾走"で部屋から抜け出すことには成功したが、敵も抜け出すことが出来る訳で……。


俺か、俺が悪いのか?

確かに、欲望に負けたよ。

負けたけど、これはヒドくない。

何なの、ホラー系は苦手なのに−−−−。


混乱した思考で、誰に投げかけているか分からない質問。

それにつぐ、反省。

頭の中がぐちゃぐちゃになって訳の分からないことを考える。


アイテムは、モンスターが部屋から出るのに多少の時間が掛かかったため、アイテムボックスの中に収納できたから、逃げるのに邪魔にはなっていないのが、せめてもの救い。


"疾走"によって保たれていた速度が落ちる。

スキルの効果時間がきれかけている。

まともに戦っても勝てる見込みはないので、小さな部屋に逃げ込む。

扉を閉めると、かなりの激突音が……。


そのまま、倒れろ。


その祈りも虚しく、扉を引っ掻く音が不気味に響く。


たった一つの出入り口はモンスターに塞がれ、部屋を抜け出すことは不可能。

死なずに出るには、隠し通路や隠し部屋を見つけるしかない。

意を決して、壁に手を触れた。

その刹那――――。



かがり火の焚かれた部屋に俺はいる。


転移した……?


興味を持っていた緑の点は目の前にある。

そして、俺の目の前には



全長1mを超える獣。

毛並みは白く滑らかだが、並大抵の武器では傷をつけられそうもない程の硬さを持っていそうな光沢。

さらに、獣の周りには水の玉が浮かんでいる。


「汝は我と契約しに来たのか?ならば、我に力を示せ。」


頭の中に獣の声が響く。


いや、こんなのと戦ったら即死だろ――――。


「待てよ。俺はあんたと契約しに来たんじゃない。話に来たんだ。」


これで止まるとは思わないが、獣にも会話するだけの知能はあるから試してみたが……。


「む、契約しに来たのではない?ならば、何しに来た?」


おっと、止まっちゃったよ。

なら、話せるだけ話そうかね。




ここに来た理由を獣に話すと、獣は笑う。


「海に愛されし、人の子だったか。人魚が騒がなかったわけだ。」

「人魚って?」

「おぬし、大穴を通ってきただろう?そこは人魚の住処でな、海に好かれた者は攻撃されんのだよ。おぬしは、知性のある海の生き物からは好かれると思うぞ。」


これは、海人の特殊能力のようだ。

俺自身、海に好かれているとは思えないからな。


「ワシの名前は津波。水を司る神獣じゃ。おぬしの名前は?」

「俺はNAKA。あんたと話ができて面白かったよ。それにしても、ここから出るにはどうすればいい?」

「ワシと"契約する"か"倒される"しか出る道は無いが、特別に穴の上へ転移させてやろう。おぬしを気に入ったからな。契約もしてやりたいが、まだまだ力不足……。ワシが、契約してもいいと思うほどの力を手に入れて来い。そうすれば、契約してやろう。」

「了解。早めに力をつけてくるよ。ただ、他の人が契約したらその約束は?」

「当然無効じゃ。そう簡単に倒されるとは思っておらんが……。」

「んじゃま、早く帰って力をつけないと。転移してもらってもいいか?そうしないと出れないんだろ。」

「もう少し話しておきたかったが、それも仕方あるまい。しばしの別れだな、NAKA。」

「またな、津波。」


足元に魔方陣が浮かび、大穴の上へと飛ばされる。

ちなみに"情報"で津波のレベルを確認したところ、


レベル 173


本当に戦わなくてよかった。

"津波"は水を司る神獣なので、中井君のことも気に入ったようです。


でも、どれだけの力をつければ認めてくれるのかは、神獣のさじ加減。


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