農機具の開発
私は二人から勉強を教わり始めた。
言ったことを即理解してすぐに覚える私にレオン様もリオネル様もご満悦だ。
幼い身体と前世の記憶の賜物である。
ただ、侯爵とその補佐官の二人は忙しい。
なのに時間を捻出してもらっているのが申し訳ない。
「あの、本当にお二人のお時間をもらっていいんでしょうか?」
「貴女なら勉学に励めばそれだけまた新たなアイデアを生んでくれるでしょう?お釣りが来ます」
(お釣りかぁ…ならちょっと前世の知識でチートしちゃおうかな!)
二人の執務室の書類の山。
それらをオフィスワーク術で解体していく。
バラバラな報告書の書式を統一して新しく紙に起こす。
これから先の書式はこれを使うようにとテンプレートも作って、レオン様とリオネル様に渡して代官たちに使わせるようお願いするのも忘れない。
さらに報告書を年月と内容ごとにファイリングする。
これで無駄な手間が省けるだろう。
「おい、リオネル。最初こそ無駄に時間がかかっていたが、今じゃ以前の三分の一の時間で執務が終わるぞ」
「恐ろしいほどの効率化です…このテンプレートや過去の書類のわかりやすいファイリングのおかげですね…」
「これでお釣りになりましたか?」
「ええ、これで自由時間も増えましたし…何より貴女のための時間が増やせます」
「よし、じゃあ早速勉強するか!」
勉強会の最中。
私はふと気になって聞いてみた。
「そういえば、下賜された農村地帯どうなりました?」
「お前の思惑通り、農業が楽になったと喜んでプラム侯爵家に感謝すらしてるぜ」
「土地がどんどんあの作物しか育たなくなっているのにね」
なるほど、上手くいっているらしい。
それなら新しい提案もある。
「じゃあついでに、その楽になった余暇時間で農機具の開発を任せましょう。あ、もちろんアイデアだけ出させて構造の設計は元々のプラム領の職人にさせますが。そうしたら、農村地帯の人々はさらに農業が楽になります。そしてプラム領にその農機具を持ち込めば、元々の領民たちにも還元できます。農機具のアイデアは、やっぱり農民たちに出してもらうのが確実ですから」
そんな私の提案に、二人はぽかんとする。
「農機具の開発…?」
「はい!農業が楽になって時間が余ったなら、みんな暇でしょうし有効活用させてあげないと!出来上がった農機具は農家の意見を取り入れてるわけですから素晴らしいものになるはずです。特許をとって独占販売すれば、他領や他国からはお金が入るし…プラム領の農家にだけ安く提供すれば、生産性もあがるでしょう?」
「お前…」
レオン様とリオネル様が熱い瞳で私を見つめる。
「やっぱり、俺たちが家庭教師役をやってよかった」
「ええ、兄さん。この知識の流出を防げます」
ぎゅっとリオネル様に手を握られる。
「義姉さん。ずっとずっと、健やかにこのプラム領にいてくださいね」
「お前がいれば、俺たちは無敵だからな」
そう笑う二人に、私もニッコリと笑って頷いた。




